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嗅覚研究の最前線

堀江貴文さんのYoutubeとXポスト(ツイッター)を見て、アロマの科学について書いてみた。
Xユーザーの堀江貴文(Takafumi Horie)さん: 「Youtubeでの視聴はこちら https://t.co/PDo1JCOlQS アプリでの視聴はこちら https://t.co/nKsxLqETBn」 / X (twitter.com)

行政書士法人ひとみ綜合法務事務所の特定行政書士三木ひとみは趣味で、アロマテラピー1級を保持している。ストレスによる不眠で、なかなか眠ることができないと悩みを明かしてくれた生活保護受給者の方に、安眠効果など万能オイルといわれるラベンダーのエッセンシャルオイルをプレゼントしたことも何度かあるそう。洗濯や消臭には、ティーツリーオイルが大変効果的とか。

動物には嗅覚があり、さまざまな香りを認識している。ヒトでは、ストレスを抑制する方法の一つとして、昔からアロマがよく用いられてきた。したがって、香りは脳機能の変化を引き起こすと考えられるが、アロマの影響に関する神経科学的解析は日本では、ほとんど行われていない。

しかし、近年、1つの論文の発表により嗅覚研究に光明がさした。米国コロンビア大学のRichard Axel博士とフレッド・ハッチソン癌研究センターのLinda Buck博士は、2004年に「嗅覚受容体遺伝子の発見と嗅覚感覚の分子メカニズムの解明」でノーベル医学生理学賞を受賞。

その業績の一つ目は、「嗅覚受容体を作る遺伝子」を特定したことだ。一つの遺伝子が一つの嗅覚受容体を作るが、受容体の数(遺伝子の数)はマウスで約1,000種類ある。ヒトでも約350種類あり、全遺伝子の1%を占める。約1,000種類もの嗅覚受容体をコードしている(=特定のタンパク質を作るための情報を持つこと)遺伝子は、哺乳類で最も大きな遺伝子ファミリーを形成していることになる。

業績の二つ目は、約1万種類もの異なる香りをどのようにして感じることができるのかという疑問に対する答えを得たこと。一つの嗅神経細胞は一種類の受容体を発現するが、各嗅神経は1~2個の糸球体に投射していて、同じ受容体を発現する神経はある特定の糸球体に収束していることが分かったのだ。
したがって、受容体の組み合わせにより香りの多様性を区別する仕組みが明らかになった。つまり、一つの匂い分子がいくつもの受容体に反応するため、ヒトには約350種類の受容体しか存在しないにも関わらず、1万種類もの香りの判別が可能になると考えらる。哺乳類の嗅神経細胞には香り物質に対応する受容体が存在し、1個の嗅神経は1種類の受容体をもっている。特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経の軸索は、嗅球の糸球体に投射していて、嗅球には匂い地図がつくられている。嗅球に達した香り情報は次の神経に伝達され、大脳辺縁系に達する。大脳辺縁系は学習・記憶、情動などの機能と密接に関連している部位。そして、香り情報はさらに視床下部に伝えられる。視床下部は自律神経系や内分泌系を支配。香りの情報はただの「匂い」という情報だと思われがちだが、嗅神経を通して、大脳辺縁系、視床下部、自律神経系や内分泌系といった身体のあらゆる部分に伝わっていく。

自律神経系は交感神経系と副交感神経系から成り、アロマは、その種類によって交感神経系あるいは副交感神経系に作用。嗅覚のメカニズムを知ると、香りを嗅ぐことは中枢神経系を刺激あるいはリラックスさせる効果をもち、香り情報は内分泌系を介してストレス状態に対応したり免疫能に影響を与えるわけで、昔から経験則的に信じられていたアロマ効果も間違いではなかったと理解できる。

2004年に嗅覚受容体遺伝子が発見されて以来、嗅覚受容体を含む嗅神経から嗅球にかけての形態や機能に関する研究は著しく発展している。ところが、どのように香り情報が脳内で処理され、知覚が形成されるのかについては、まだ充分解明されているとはいえない。嗅覚受容体の存在が証明され、嗅覚に関する研究が盛んになってきたことから、アロマの効果が神経科学的に証明される日は遠くないのかもしれない。

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