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全日本選手権は、選手の人生が垣間見える大会。

全日本選手権、今ちょうど真ん中あたりまで来ました。男女シングルではショートが終わったところ、今日からフリーが始まるところです。

この2日間、「ああ、この雰囲気、この演技。全日本はこれだよねえ」とわきあがってくる、喜びのような思いで、折に触れてじんわりしていました。

世界選手権の出場権争いや4回転をいくつ跳ぶのかの興奮……そういうものを目撃するのもとても楽しい。

ただそれ以上に、全日本選手権ならではの喜びは、選手たちが「全日本に出たい」「全日本でいい演技を見せたい」と今シーズン、いや昨季から、いやいやもっと前から何年もずっと思い続けてきたこと、そういう思いの結実、みたいなものに触れられるところにあると思います。

とくに、10年とか20年とか、毎日のように何時間もスケートと関わってきた日々を経て、スケート選手としての引退のシーズンを迎えている選手たち、大学4年生であることが多いのですが、彼らの、この大会に懸ける思いが端々から伝わってくる演技は、ちょっとほかでは見られないものです。

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今年の全日本選手権、大学4年生は、男子7人、女子が6人。ちなみに男子には大学院2年生が2人いて、彼らは今季引退だとのことなので、大学や大学院を終えるシーズンの選手たちは、男子9人、女子6人です。男女とも30人エントリーしているので、うち男子9人って、結構多いですよね。そう、今年の男子シングルは、引退のシーズンだと思われる選手がとても多いのです。

先ほどカウントした大学4年生の中には、宇野選手や宮原選手も含まれるのですが、彼らが今季引退することはないと思われますし、最近は、大学を卒業しても続けている人、いったん引退しても復帰する人などもいます。大学卒業を経て今大会に出場しているのは(大学院の2人は除く)、男子が6人、女子が1人です。すごく嬉しい傾向ですね。

ということで、今季が引退シーズンなのは、多分、男子が8人、女子が5人、あとは、社会人の中の何人かが引退するかもしれない、と、想定しています。

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いつも全日本の前には、公式パンフレットで、大学4年生と、大学卒業を経た選手たちを確認しています。(同時に中学2年女子もチェックしているのですが、それはまた別の意図なので、別の機会に)。

これまで何年間か、時折名前を見かけ、時折演技を見てきた選手たちが今年4年生だと知った時のちょっとした寂しさ、多分多くの人が感じていることと思います。そして「ぜひとも全日本でいい演技を!」と、静かに熱く祈っているのではないでしょうか。

引退シーズンと決めている選手たちの演技って、なんとなくわかることがあります。選曲が『My Way』とか『別れの曲』とかなんかもうそれだけで泣きそう、みたいなもののこともありますし、そうでなくとも、演技への思い入れや執念に近いものが、ちょっと違うんです。演技のスタートから、「ここに懸けてきたんだな」というのがとても伝わってくる。ジャンプで転びそうになっても、なんとか耐え抜く……全日本選手権は、選手の人生が垣間見える大会なのです。順位とか得点とかだけではない、全日本選手権を全日本選手権たらしめているもの。そういうものが、引退シーズンと決めている選手たちの演技から、がんがん伝わってくるんです。

この2日間、男子ショートでも女子ショートでも、そういう演技をたくさん見せてもらいました。そのたびに胸が苦しくなり、涙がこぼれてしまわないように深く息を吸ったりしてやり過ごすのですが、何人かでは、やはり泣けてしまったりもしました。

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全日本には、足切りがあります。ショートは30人がエントリー。ですが、ショートの25位以下の選手はフリーに進めません。その6人(今年は男子が1人棄権、女子は1人欠場のため5人)のなかに、引退のシーズンの人たちはいなかっただろうか、と心配になります。

女子は、いませんでした。(ただし、大学卒業後も続けているたった1人の大庭雅選手が28位。) 男子では、5人のうち3人が大学4年生でした。中野紘輔選手(25位)、鎌田英嗣選手(26位)、時國隼輔選手(27位)となりました。ジュニアのころからいろいろな大会で見てきた彼らの心中を察すると、いたたまれない思いにもなります。ですが、まだ国体など試合も残っているかもしれないですし、ぜひともいいスケート人生の最終盤の時期を過ごしてほしいです。そして、こちらから見ていただけだけど、いままで、ありがとう!

そして、今日は女子フリー、明日は男子フリー。引退シーズンを迎える選手たちには、本当に全日本の最後です。出場するすべての選手が力を出し切れますように。そしてなによりも、引退を決めている選手たちには、自分の納得いく演技ができますように。そう祈るばかりです。

【朝日カルチャーセンター新宿教室】の講座もぜひ。おひとりで参加されている方がほとんどです。
●12月28日(土)は「2019-20シーズン前半とは」

●1月18日(土)「ジャンプを見極める」

●2月29日(土)「ザヤックルール、リカバリーを極める」


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