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ミーシャ・ジー インタビュー(後編)「僕自身の現役最後の演技の感覚がよみがえってきて……」

ミーシャのインタビューです。前編は以下から、どうぞ。

さて、インタビュー後編です。

―髙橋選手のショートプログラムの振付けを今振り返ると……?

忘れられない大きなことだったと思います。振付師としてこれまで、いろいろなスケーターに振付けてきたけれど、こんな貴重な機会はない。ダイスケは、とっても特別だから。

スケートキャリアのほとんどの期間、僕はダイスケのスケートを見て育ってきたんです。2004年に(ミーシャが当時住んでいた)中国で見たときから、毎年、毎試合、テレビやビデオテープやパソコンで、繰り返し彼を見てきた。だから僕のなかに、オールラウンドで特別なスケーターとして、彼という存在が沁みこんでいるんです。

いつか、彼のプログラムを手がけられたら、と思っていました。それが現実になって、とてもありがたいことであったけれど、同時にものすごいチャレンジでもあったんです。(少し言葉を探したのち、急にとてもシンプな英語で)Because he is so good. 彼のテクニックは素晴らしいし、世界のあらゆる素晴らしい振付師とプログラムを作ってきているから。

今回のショートプログラム『The Phoenix』は、シェリル・ムラカミと一緒に振付けをしたんだけど、驚きがあり、新鮮でユニークで、さらになにか他とは違ったものを、という思いでやってきました。

すごく難しかったんです。ただ、ダイスケが初めてステップシークエンスをやってみたとき、上半身の振りはつけずに足元だけだったんだけど、終えて第一声が『難しい(注:ミーシャも日本語で発音)』だったんです。僕は、『イエス!』って思いました。だって、世界チャンピオンが難しいって言うんだったら、僕はいい仕事をしたってことだから。そのステップシークエンスをつくるのに、僕、2週間かけましたから。

―全日本選手権のショートプログラムでは、友野選手の直前が髙橋選手の滑走でした。ということは、髙橋選手の演技は、見られなかった?

見られなかったです。すごーく見たかった、ダイスケだから。

―そのときは、どんな状況でしたか?

カズキのためにバックステージにいました。ダイスケのステップシークエンスのメロディと歓声を聞きながら、でも僕は、カズキに集中していたんです。コーチとして、落ち着いた状態でいなければいけないから。

―ずっと憧れて見つづけてきた選手の最後のショートプログラムで、しかもそのプログラムは自分が振付けている。なかなかない貴重なシチュエーションですね。

そう、ずーっと彼を見てきて、その彼の最後の試合だったんです。でも、どんな状況であっても、自分の選手に集中するということを学ぶ場でもあったと思っています。

―そうですね。ちなみに、髙橋選手のフリーの方は見られましたか?

ノー。カズキのウォームアップの時間だったので。ただ、フリーも会場の音が聞こえるところにはいました。カズキの滑走順はまだ少し先だったので、ウォームアップもまだ落ち着いた状況にありました。そんなときに、ダイスケの演技が終わって、ものすごい歓声が聞こえてきたんです。その瞬間、最後の試合というのがどういうものだったかってことを思い出しました。僕自身の現役最後の演技の感覚がよみがえってきて、ふぅーーーっとすごくエモーショナルにもなりました。

―今回のICE EXPLOSION 2020では、グループナンバーの振付けを?

はい。でも詳しくは内緒です。

―どんな曲を使う予定ですか?

『The Phoenix』だよ! ダイスケのショートプログラムを、ダイスケを含めた5人で滑ります。

―楽しみですね! ソロでも滑りますか?

はい、ソロも滑るけど、まだどんなものなのかは秘密で。ショーを見に来てね!

―少しヒントなどは?

少し言うと、この曲、7年前に使いたいと思っていたんです。2012-13シーズンのころ。でも、あの頃のテクニックでは、まだこの曲を使うのは時期尚早だった。その曲を、今回やろうと決めたんです。スケート界のレジェンドたち、たとえばジョン・カリーとかトーヴィル&ディーンとかが滑ってきた曲ですね。

―7年ほどあたためたものを、なぜ今、滑ろうと思ったのでしょう。

通常、アイスショーでは、主催者からの「この曲で」というリクエストに合わせて滑るんですね。主催者がそういうリクエストをする思いも、とてもよくわかります。と同時に、僕はできれば、その時に心から演じたいと思うものを、心から演じられるものを、と思っているんです。今回、ICE EXPLOSION 2020の主催者と事前に話をしたところ、そうした思いを認めてくれました。すごく嬉しかったし感謝しています。だからこそ、今なら滑れるこの曲を、という思いで選んだんです。

―久しぶりのアイスショーでのパフォーマンス、とても楽しみです。スケートに関わる人として、短いスパンでも長いスパンでもいいのですが、なにか目標のようなものはありますか?

毎日上達していくこと、に尽きますね。コーチとしても振付師としても、毎日上達、毎日いい仕事をすること。それが大事だと思っています。

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▼これまでの、ミーシャ・ジーさんインタビュー

2019年4月のもの(さいたまの世界選手権にて) / ●2018年5月のもの(アイスショーへの来日時に) / ●2017年5月のもの(ヘルシンキの世界選手権にて&成田空港にて) / ●2017年2月のもの「フィギュア選手の「最後のシーズンかも」との言葉から」 / ●2014年3月のもの「男子フィギュア、ミーシャ・ジー「変化のときが来た」




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