見出し画像

マイライフイズベリーグッド

2年半ぶりに会った前職場の後輩ちゃんと鶴橋の韓国料理屋に行った。タコの踊り食いを名物にしているらしく、メディアにもよく紹介されている人気店だ。店内で久しぶりに顔を合わせた彼女は、久しぶりに会ったと思えないほっこりとした空気感だった。『お互いイイ感じに成長してるな』と瞬間的に感じた。そもそも、今回会うきっかけとなったのは彼女から転職と結婚の報告の連絡をもらったからだ。彼女の人生の新たな門出を知らせてくれたこと、そして、そのタイミングで一緒に時を過ごせることはとても嬉しい。私自身も美容師とトレーナー業を兼業しようと頑張っているところなのでお互いの近況報告の食事会となった。

彼女が転職を考えているまさに今の年齢の頃、私も当時勤務していた個人サロンから大型サロンへと職場を変えた。ヘアサロンという業種は同じだが、個人サロンと大型サロンではシステムが全く違う。使う思考回路も実際の行動も全て違う。強みも弱みも全然違う。8年前のちょうど今頃、個人サロンに辞表を出し、大型サロンへ気持ちを切り替えている頃だったな、と思い出す。あそこが人生の分岐点になったのは間違いない。あそこで大きく舵を切ってよかったなと思う。沢山の人間関係、環境、所有していたものを捨てた。あれから8年間、デニムを1回も履いていない。今となっては履けばいいのだが、特に履きたいと思わないから履いていない。沢山のことを一斉に切り替えて、新しい環境に身を置いて、過去のやり方を一旦封印して、新しいやり方を受け入れた。納得してるしてないという議論はせず、まずはその場に染まることを最優先事項とした。ここにいるスタッフは昔の私を誰も知らない。坊主並みに髪の毛が短かったことも、コンテストや撮影やモデルハントに全てを注いでいたことも、毎週のように講習に参加していたことも誰も知らない。そんな世界があることも、私がそれらに生活の全てを捧げ大切にして生きていたことも、当たり前だが、誰もそんなこと知らなかった。生き直すのにこれ以上適した環境はなかった。
新しい環境に飛び込む前に抱えていたどうなるかわからない不安と恐れの向こう側にあったのは、完璧な解放と自由と呆気なさだった。


転機だな、と思う瞬間がある。これからの人生がかなり変わってしまう重要なポイントである節目が、きっと誰の人生にも何度かある。彼女にとっては今まさにそうだし、私自身も今まさに、何回目かの中継地点にいる。ここで何を考え、どんな未来を描き、そのために何を選択し、いつどうやって踏み出して行くのか?
その過程がその人の生き方を表していくのだと思う。その積み重ねが『生き様』と呼ばれるものになるのだと思う。何度も何度も色んな言い回しで自分に問いかける。答えを出しては打ち消し、誰かに期待されている言葉ではないか、誰かを納得させるための言葉ではないか、自分の本心はどこにあるのか、何度も何度も話し合う。利己的な自分に気付いて情けなくなり、利他的な自分を見つけては救われる。うっすらと長い時間かけて、堂々巡りに見える螺旋状のやりとりを気が済むまで続け、疲れ切ったころ、ようやく次のステージへ繋がる踊り場へ出る。ようやく、次の光が見えてくる。ここまでこればあとは流れに乗るだけ、離陸準備の段階に入る。
今、自分がそこにいるように感じる。8年前のあの頃のように。
慣れ親しんだものに区切りをつけ、見たい世界に向かうため新しい生き方で生き直していく時期がきている。離陸する準備を始めている。


とはいえ、前回のようにあらゆるものを捨ててリセットする、ということではない。美容師は辞めないし、サロンを変えたりもしない。今のサロンは私の大切な大切な核だ。恐ろしくて優しい相方と、じっとしていられない私のような人間を見守ってくれている包容力に溢れたお客さんがいる。ここがあるからこそ新たなチャレンジが出来るし、メンタルがペコンペコンな時もここに帰ることができるから回復する。そのような場所があることを心底感謝しているし、だからこそ、止まることは出来ないな、と思う。一生進化したい。変わり続けたい。新しい世界を見たいし、それを自分を信頼してくれているみんなにも見せたい。何になりたいの?とたまに冗談混じりに聞かれるが、正直、自分にだってゴールはわからない。本当に休む時は棺桶に入る時です、と話すことが増えてきた。半分以上本音だ。毎日をやり切るためには体という乗り物をメンテしなければいけないのでオフの日は作るが、完全に100%力を抜いて頭を空っぽにしてボーッとするのは死ぬ時でいい。今はまだ、しばらくの間は、色んな人に会って、沢山の価値観に触れ、喜んで、楽しんで、悔しがって、悲しんで、奮い立ちたい。毎日毎日、ワクワクしているわけじゃない。ポンコツメンタルの時も、謎の孤独感に襲われる時も、何もかもが無意味なんじゃないか何のためにやってんだ、なんて虚無の底で息をしている時もある。だけど。
それが命を使い切る、ということだと思う。与えられた命を、時間を、どんなふうに過ごすのか。その全てを並べた時に「This is My Life!!」と胸を張って言いたい。「This is My Life!!ベリーグッドでした!!!」と言いたい。「もう一回この人(自分)で次は違う人生もやってみたいです!!!!」と天国で神様に言えたら、どんだけ愉快だろう。今度は大富豪の人生を歩ませてくれるかもしれない。(何卒)


8年前の転機の頃とは完全に違う思考の人間に出来上がった自分がここにいる。
今回の転機は前回よりももっとずっと楽しめそうな気がしている。苦しいこと、つらいことにその時の全力で向き合うと、後々になって自分の強さになることを今は知っている。困難なことは自分一人で抱え込まず、周りに素直に頼れば、必ず解決の糸口が見つかることも知っている。
世界はもっと変えられる。
怖がらずに、見たい世界を見に行こう。


Change the world.
Life is wonderful.


#人生  
#エッセイ  
#日記  
#セクシャルマイノリティ  
#LGBTQ  
#2023年

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?