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オーストラリア政府、2025年から留学生の数を制限

新聞記事の見出しみたいなタイトルになってしまいました。しかしこれ以外の表現の仕方が思いつきませんでした、、、。

今年5月にオーストラリア政府が「来年から大学が受け入れられる留学生の数の制限を設ける」と発表してから各大学はドキドキしながら詳細の発表を待っていました。
そして、8月27日、ようやく政府からの発表がありました。

https://ministers.education.gov.au/clare/improving-sustainability-international-education

これによりますと、オーストラリア全体で、2025年に「高等教育機関」で「新たに」受け入れる留学生の数の上限を27万人にするということです。「高等教育機関」とは、職業訓練の学校も含みます。具体的にはいわゆる「公立大学」での受け入れ上限は14万5千人とのこと、その他の大学等に関しては3万人が上限とのことです。*オーストラリアの大学はほとんどが公立です。
そして、各大学の上限も、大体の数字が通達されています。
注意しておきたいのは、この上限はいわゆるコースワークの学生にのみ適用で、例えば研究課程の修士や博士課程の学生には適用されません。また、オーストラリア政府等の特定の奨学金留学生は対象外となります。

こうした制限を設ける背景には、今オーストラリア全体で住宅供給が追いついておらず、住宅価格、賃貸価格の高騰が続いている事があります。その原因が移民と留学生の増加によるものと「国民が思っている」、あるいは政府が思っている。コロナ禍で一旦住宅需要は落ちたのですが、今はその反動で急激に供給が追いついていないとの味方があります。私自身は、この住宅供給はコロナ禍以降始まったものではなく、それ以前から人口増に伴う現象として捉えております。来年国政選挙がありますから、国民にわかりやすい施策でアピールしたいという政府の思惑が垣間見えます。

以前の記事に書きましたが、オーストラリアの大学にとって留学生は多額の学費が取れる大きな資金源です。もちろんその分留学生向けのサービスの充実にも多くの資金を使っています。

これまで、人気の高い大学(例えばシドニー大学やメルボルン大学など)は、大変多くの留学生を受けいれてきました。この制限が、これまで他大学に比べてそこまで留学生がいなかった大学への留学生の流入につながるかどうかは、まだわかりません。ただ、留学生の数が著しく減る大学にとっては今回の上限制度は大きな打撃になります。

これに加えて、オーストラリアへの留学生用のビザ申請料も上がっております。

2024年から、それまでの710豪ドルから1600豪ドルへと引き上げになっております。なんと倍以上の値上がりです。
この引き上げにより、世界で一番留学生ビザ費用が高い国となったようです。 
*これにより、「オーストラリアは世界で一番留学費用が高い国となった」という記事が散見されますが、留学費用はビザ費用だけではありません。それぞれの学費や生活費も含まれますから、ビザ費用の値上がりだけを持ってして「留学費用が世界一高い」とは言い切れません。私が7月に滞在していたロンドンでは生活費も高いですので、イギリスへの留学も相当の費用が’かかると思います。

先ほど、私が上記に書いた「住宅価格、賃貸価格の高騰が続いているのは移民が原因だと国民が思っている」件についてですが、私が「国民が思っている」と書いたのは、理由がこれだけではないと思うからです。確かに移民は年々オーストラリア国内に入ってきていますが、これだけでは住宅価格と賃貸価格の高騰の説明には不十分です。オーストラリア国内のインフレが影響していることは否めないと思います。

オーストラリアの中央銀行、Researve Bank of Australia によりますと、現在のインフレ率を測る指標、消費者物価指数は3.8%です。目標値は2-3%の水準ですので、目標値よりも高い現在の水準は、消費者にとっては苦しい状態ということです。今年7月の消費者物価指数は3.5%だったとのことですので、若干落ち着いているということですが、2%台にはなかなかなりそうもありません。

来年の留学生数がどうなるか、オーストラリアの新しい政策により、イギリスやアメリカなどの他の英語圏に流入してしまうか、今の時点ではわかりません。当大学でも懸念されています。我々教員としては、教育・指導をより充実させ、質を高めていくしかありません。これは今回の措置に関わらず、ずっとやっていかなくてはいけない事です。

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