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スカートのファスナーへの考察、100年前のエルメスとシャネルの素敵な逸話

スカート(洋服)の脱着に必須なファスナー、今や当たり前のものとして成立しているけど、いったい誰がいつから使い始めたんだろう。。。
わたしはヨーロッパでファッションを長年の生業としていて、つい最近知った、もはや知らなかった事実が恥ずかしくて、罪であるかのように感じた衝撃的な歴史をここでシェア(苦笑)
その原点は実は約100年前のシャネルとエルメスの関係にさかのぼる。

時代は1920年代、第一次世界大戦。
フランス軍は、当時のエルメス社 社長を馬具用の皮の買い付けのためにカナダに派遣した。
そこで彼は、アメリカですでに発明されていたファスナーが、派遣先のカナダで自動車の幌を固定するために使用されていたのを発見する。
エルメス社はさっそくファスナーを輸入し、『システムエクレーヌ』という名前で特許を取得して、世界初のファスナー式のバッグを開発した。
当時の高級バッグは、現在のケリーやバーキンのように、開口部をベルトや紐で閉めるか、そのまま開いた状態で持ち歩くなど、デザイン性は十分だけど、機能性、防犯性ではまだ開発の余地があったとされている。

向かって右奥が現在のバーキン、手前左側がケリー

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これが世界初ファスナー式バッグ、1925年当時の”エルメス ブガッティ“(当時の高級車の名前から引用された)という革製のバッグで、現在では”ボリード“と名称を変えて、100年経った今でも、時代を超えて多くの人に愛用されている。

そのファスナーに目をつけたのがパリでビジネスを拡大していたココシャネル。シャネル自身も女性用の動きやすいストレッチ素材のシンプルなワンピースや、両手が自由に使えるようにショルダーバッグを開発したりと、当時めちゃくちゃ革新的な存在だった。
スカートはそれまで主流だった、裾が広がっていて床につくほど長い丈から、動きやすいタイトな膝丈を提案した。ちなみにシャネルの名言で、『膝(関節)は、人様に見せびらかすような美しいものではない』というのがあって、クラシックなシャネルスーツのスカートは、絶妙に膝が隠れる上品な丈になっている。
この“目新しい留め具”をなんとか洋服に取り入れたいと思いつき、それらのスカートに縫い付けてみるシャネル社。でも、機能的かつ美しさも両立した縫い付け方がわからない。。。そこで、当初は、エルメスの皮職人たちがシャネルのスカートにファスナーを縫い付けていた。という、なんとも豪華なコラボレーション!!!!

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今やどこのブランドも、たとえばハイファッションがストリートブランドとコラボレーションしていっときの注目を浴びたりしてるけど、(一昔前のルイヴィトンとシュプリームがきっかけで、今やハイブランドxストリートは蔓延しすぎ) 現代の話題作りのためのコラボレーションじゃなくて、100年前のシャネルとエルメスは、巧みな技術をシェアして革新的な物を生み出そうという職人の魂が感じられて、その背景がしびれるほどカッコいい。


長く続くメゾン(ハイブランド)には、
昔から今に至るまで優れた職人が、
たゆまぬ努力で一流のものづくりを続けている。
ファッションの中心がパリだと言われるのには、
100年も前から理由がある。
フランス人の美的感覚と革命的な挑戦には、
いつまでも感銘を受けるのだ。


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