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新旧ブランドが「新ラグジュアリー」の定義をつくる〜「新ラグジュアリー」の読書感想文

先日読んだ本「新・ラグジュアリー」の本を読んだ読書感想文です。ラグジュアリーブランドと聞くと、ルイビトンやGUCCI、CHANELなど欧州のブランドを思い浮かべる人が多くいらっしゃるかもしれません。しかし、昨今ではラグジュアリーの価値に関して大きな変化が生まれています。ラグジュアリーとは何かについて深く考えたい方にお勧めです。


本の要約

  • "ラグジュアリー"の意味に変化が起きている理由は主に3点。
    1. 自動車や体験型領域は先進国の中高年が主流という市場構造は変わらない。しかし、身の回りの消費財は若年層の台頭が著しくなっている。
    2. 企業活動にサステナビリティや社会的責任が問われているから。
    3. ラグジュアリーで主要なstatusを占めてきたヨーロッパ自体の変化。世界におけるヨーロッパ文化の位置や多文化の受け入れなど。

  • 以上の3つの理由のうち、2,3が密接に絡んでいるところは、注意すべきところ。

  • この本で提唱されているラグジュアリーの意味(新ラグジュアリー宣言)
    1. 歴史の切り取り方
    2. 異文化の理解の仕方と、異文化要素の使い方
    3. 事業だけでなく文化と政治を同じ風景の中に溶け込ませる
    4. 自らの文化アイデンティティの選択

  • ラグジュアリーの歴史
    ・1800年代:ラグジュアリーは貴族がつけるもの、それ以下の位は質素倹約に生きることを命じられる
    ・1920年ごろ: ココシャネルの登場→貴金属100%ではなく、貴金属とプラステックを混ぜて販売
    (ほか: ミキモトの養殖真珠アクセサリーが脚光を浴びる。"偽物の真珠"と揶揄され闘う)
    ・1980年代: LVMHが実権を握る→ラグジュアリーは市場を見据えて世界戦略的にマネジメントすべき規格(ラグジュアリー基準をクリアする規格)型の商品やサービスになる

    資本家がラグジュアリーブランドのグローバル化を進め、お金を払えば誰でも所有できる大衆化をもたらした結果、資本家が広告宣伝費を投入した話題のブランドからブランドへ渡り歩くようになる。デザイナーたちも、利益を上げるために飽きっぽい消費者を逃がさないよう3ヶ月で続々と商品を出す必要が生まれた。

  • この流れをもう少し知りたい方は、映画「True Cost」をご覧ください。(Youtube予告編はこちら)

  • 1990年代: ラグジュアリーという名の大量生産品が市場に出回る。一方で、その魅力に感じない人たちがクラフト的な商品に再び目を向け始めている兆しがある。

  • 日本発の新「ラグジュアリー」
    マザーハウス(発展途上国からブランドをつくる)
    SHIRO(北海道砂川の土産物店からOEMメーカーへ)
    KAPOK KNOT(アパレル企業の息子が立ち上げたヴィーガンダウン)

  • ラグジュアリーマーケティング:ラグジュアリーの変遷を見る中で、日本人は特徴的な購買行動をしていた。そこに注目されるように。(例:日本人の観光客の40%は空港の免税店で購入するが、それはアメリカ人の平均の5倍という数字もある。)現在も日本人のブランドへの評価の仕方が、欧州にとって頼りの1つになっている。ラグジュアリーの定義は決まってはいないが、一昔前の「富裕層のための商品、ブランド」という定義ではなくなっている。

ラグジュアリーの意味の変化

この本にも書かれているのですが、私たちが想像するひと昔前の"富裕層向けの商品やブランド=ラグジュアリーブランド"という定義ではなくなりつつあります。私は日本発のブランド「SHIRO」や「マザーハウス」の例を考えてみるととてもイメージがつきます。

例えばSHIROは2021年に今後のブランド方針を「「ラグジュアリーでもなく、ローカルでもなく、今の社会に存在しない『何か』を目指す」と定めた」そう。高級品として売り出していくのではありません。確かに、自社工場のある北海道砂川市に「みんなのすながわ」を開き、また2024年には「MAISON SHIRO」をOPEN予定です。これらの取り組みは、社会課題を解決するという理念からきています。

マザーハウスは、カンボジアで自社工場を作りカンボジアでの職人を育成、雇用促進を進めています。

野村総合研究所が発表している「NRI BRAND INDEX」では、ルイビトンやCHANELほかハイブランドが"ラグジュアリーブランド"として挙げられる傾向にあるものの、SHIROやマザーハウスなど新興企業がラグジュアリー領域に進出していることもあり、高価格帯のブランド=ラグジュアリーブランドという定義は崩れ、どちらかというと質の高い商品がラグジュアリーブランドになるかも…しれませんね。

参考資料

著者・中野さんへのインタビュー記事

Brain & Company 「2020年秋、世界高級品市場レポート」

Brain & Company「2023年秋、世界高級品市場レポート」

NRI BRAND INDEX® 2023

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