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アイデア資本主義 読書感想文〜前編

「資本主義」と聞くと、経済学の用語として拒否反応を示す人もいらっしゃるかもしれませんが、noteはじめSNSで発信していくのであれば、とてもためになる本なので、ぜひ読んでほしいです

※今回、要約だけでだいぶボリューミーになりましたので、
本を読んでの考察は「後編」に書いておきます。
後編を更新したら、こちらにもリンクを貼っておきます。


前提

時間がこれからも、直線的に過ぎていくという感覚
過去の記憶があるからこそ、現在と過去な差異が、そして現在が過去と異なる時点にあるということが知覚される
→直線的な時間の観念が未来についての予測を促し、それがさらに未来における利潤の計算を可能にするからこそ、人はどのように資本を投資すべきかを判断できるようになる
例) 過去の収穫に従って消費を行っていたアルジェリアの農民

資本主義を3つの視点で捉え直す

1. 資本主義の地理的拡大

オランダ東インド会社を機に企業の存在感が増してきた
→おそらく、世界史でも習ったようにこの感覚がしっくりくるはず。資本主義は、実際は10世紀に中国や中東から、資本の蓄積やそれによる大規模な交易、信用取引などが発達していた

2. 時間のフロンティアの拡大

狩猟採集社会では、行動の時間的射程は、「将来」には及んでおらず、今に焦点が当たっている。
一方、今を生きる私たちは、マイホームのローン(何十年)など、遠い未来まで延びている。「想定される未来から逆算して現在の行動を選択する」という行動様式が、狩猟採集時代には当たり前ではなかった。

資本主義においては、消費が単に先送りされるのではなく、いまの消費を抑制した上で、抑制によって生じた余剰が「将来」のより多い富のために投資されるという感覚。
cf) 収穫した米を次の収穫まで少しずつ消費していくのが前資本主義的(マルクスの言う「単純再生産」)

3. 生産=消費のフロンティアの拡大

・生産量や消費量を増やすこと
→現在ではモノが溢れている状態のため、モノをつくれば売れる時代ではない。生産量におけるフロンティアは消滅している
・生産性を上げること
→イノベーションによって生産コストを下げる、安価な労働力を投入することがなされてきたが、生産コストはゼロにはならない



こうした、3つの資本主義のフロンティアが拡大できなくなっているため、現在ターニングポイントを迎えている。
新たな現象が、この本のテーマである「アイデア資本主義」

アイデア資本主義の拡大

エボリューション→内側へと回帰する現象。資本主義の拡大志向が拡大した現象ではあるが、ベクトルが外ではなく内を向いている。内側への再投資。
例) まちの再開発、Kaizen(not 改善)

エボリューションの3つの視点

・空間: 土地の再開発→土地の収益性を再び高める
・時間: 高速取引→いまを細分化し、取引の回数(儲ける回数)を増やす
・生産=消費: 労働集約によって生産性を向上させる。資本投下に頼らず、ボトムアップで品質向上を目指す


アイデアの時代へ

優れたアイデアに対して、資本を投資する

「アイデア資本主義」=アイデアそのものが独立した投資対象になっている
例) noteへの課金、令和の虎、クラウドファンディング
→なぜアイデアに投資をする時代になったのか?
・色々なことが、分かりにくくなったから
モノが溢れた、SNSで情報が大量に流れている
・インターネットで繋がれば、投資をできる、投資をお願いすることができる

課題: 真摯に実現を目指していても、頓挫することも…

「期待の社会学」(sociology of expectation)
アイデア時点で期待を生み出し、期待に基づいて資金を得たあと、技術開発が続く

後述する、著者・大川内さんへのインタビューnoteから引用しておきます。

「私も間違いなく大きな問題だと思っていて、解決手段について自分なりに考えはじめています」と答えてくれた。(中略)
まずは、実態の伴わないアイデアに投資が集まってしまうリスク。著書でも、血液検査の画期的技術を開発したとして巨額の投資を集めたが、結局そうした技術は存在せず、詐欺罪で起訴されるに至った

そのリスクを和らげる手段はありうるなと思っています。例えば、アイデアのアナリストのような人たちが出てくるかもしれません。株式だって、個人がそれぞれの銘柄を分析するのはなかなか難しいので、アナリストがついて定期的にレポートするじゃないですか。その分析を見て、売り買いを考えたりする。それと同じように、アイデアについてもアナリストがいて、点数やレーティングをつけて評価されていくかたちはあり得るかなという気がしています。


合わせて読みたい

著者・大川内直子さんがインタビューされていたnoteがありました。

この方は、この書籍に関する東洋経済の記事を引用しながら、「インサイト」についての疑問を呈していらっしゃいます。


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