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資本主義の最先端「アイデア資本主義」とは(大河内直子)

東洋経済のこの記事が素晴らしいので、ほぼ丸々引用させて頂きます。

資本主義の最先端「アイデア資本主義」とは

一昔前であれば、事業を始める前に資金を集めるのは非常に困難でした。銀行から融資を受けようとしても、基本的にアイデアに対して融資が下りることはありません。何年か実際に事業を営んで売上や利益の実績を作ってから、かつ自分の資産や信用を背景に個人保証をしたり、会社の資産を担保にしたりして、やっと融資が下りるというのが一般的な形でした。
もちろんこうした状況でも事業に先立つものとしてアイデアは存在しました。しかし先に例示したように、アイデア自体がお金になることはありませんでした。もともとアイデアは単独で存在しているというより、生産手段の前段階として存在していたのです。
しかしいまや、アイデア自体を売り込んで出資を受けることができる時代になっています。もともとアイデア自体がお金になることがなかったのは、資本の希少価値が相対的に高く、資本の側が収益性の高い生産手段を選ぶ側だったからです。その状況においては、資金を欲する人はなんとかして生産手段を具体化して、その収益性の高さを示してみせる必要があります。
一方で、現在は国債金利の低下に見たようなカネ余りが常態化しています。これは、資本が行き場をなくし、コモディティ化しているということです。資本の希少価値が低いのです。そのため、資本同士が競合しながら稼げる投資対象へと向かっていっており、その競争は生産手段についての青写真、すなわちアイデアの段階で他の資本を出し抜かなければ勝てないほどに激化しています。
アイデア資本主義とは、アイデアが生産手段の前段階としての位置づけを脱して、アイデアそのものが独立した投資対象になっている状況を指します。アイデア資本主義は、伝統的なフロンティアが消滅したことによって、モノがあり余り、カネがコモディティ化する中で、それでも利潤を得ようとする資本の運動の果てに生じた現象です。アイデア資本主義においては、アイデアを生み出す人のアタマの中が、資本主義にとってのフロンティアであると言えます。
(中略)このように、アイデア資本主義においては良いアイデアを生み出せるようになることが極めて重要です。しかし、良いアイデアを生むのは簡単なことではありません。モノ余りが進行し、不足を埋めるものを作れば売れるという時代ではなくなりました。不足のない社会というのは、人々(消費者)がどうしても必要とするものが特にない社会です。
欲しいものはあるかもしれませんが、まだ存在しないものについては彼ら自身も自分が本当に欲しているのかどうかなど当然よくわかっていません。先にも触れたように、いま、人々(消費者)が何を求めているのかが非常にわかりづらくなっています。
そのような中で、良いアイデアを生むためのキーとして重要なのが、インサイト(insight)です。インサイトとは英語で洞察や見識といった意味をもつ単語ですが、マーケティングの文脈では消費者の言動の背景にある、ないし言動を生み出す心理のことを指します。
新しいアイデア自体はある要素と別の要素の掛け合わせなど、色々な方法で生み出すことができますが、乱雑に生み出したアイデアが良いアイデアであることは多くありません。確度高く良いアイデアを生み出すには、良いアイデアを生み出すための「根拠」が必要になります。その「根拠」が、消費者についてのインサイトなのです。
そしてそのインサイトを見つけ出すには、消費者の思考というフィルターを通した産物である「発言」ではなく、日常の中での自然な「行動」に着目する必要があります。
良いアイデアを生み出すにあたって、徹底的に観察を行うことと、それによって導かれるインサイトが重要であることは、製品開発・サービス開発に限らず当てはまります。
(中略)コピー機の例でも、「正解」は非常にシンプルでした。インサイトやそれにもとづく仮説に対して、シンプルに解を出そうとする姿勢が、打率高く良いアイデアを生むことにつながると私は考えています。繰り返しになりますが、アイデア資本主義においては、良いアイデアを生み出せるようになることが重要です。そして勘に頼らずに良いアイデアを生み出すためには、インサイトを捉えた上で企画書や新しい製品・サービスについてのアイデアを具現化していく必要があると言えるでしょう。

自分としてはわかりみ、すごいです。特に近年の史上空前の低金利⇒アイデア資本主義⇒SNSマーケティング⇒インサイトと繋げる流れは、慧眼というしかありません。「フィリップ・コトラーがこう言ってる」とか嘘ついてもバレないクオリティ。

確かにマーケティング用語の「インサイト」って文化人類学の民族誌学(エスノグラフィー)に相通じるところがあるよなぁ、とは私も長らく思っていた所でした。

また金融資本のグローバル化、フラッシュ化も見逃せません。いいアイデアなら外国からでも出資を引き出せます。ゴールドマン・サックスやブラックロックが日本の企業の株を沢山持っていることは周知ですし、オンライン・トレードや仮想通貨に見られるマネーのフラッシュ化もアイデア資本主義に流れ込むでしょう。

コロナ禍前の好景気をバブルかな?と警戒していた氷河期世代の私としては、スタートアップブームにマクロ経済のこういう背景があるというのは、発見でした。

こういうことを書いている人が、元々金融関係者で現在は文化人類学者を名乗っている、というのも、私などには時代が変わったなぁ、と改めて思います。

一昔前は、こんなキャリアを進む人は皆無でした。人材の流動性があってこそ、こういう洞察が生まれるし、それを評価する人々も多くなるのです。タコ壺化した旧来の学術界では、こういった分野横断的なアプローチを理解し評価してくれる人は少なく、またそういう場もありませんでした。

この記事のタイトル「「『お客様の声』から良いアイデアが生まれない理由」ってのは、主張の深みからみると、すごく勿体ないタイトルだなと思います。

正しい背後仮説を知っておかないと、生産性の向上や高付加価値の経済活動に結びつけることは大変困難です。現代に必要とされる教養とは、こういうものではないでしょうか。


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