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総合不動産業が行う働き方改革は「多様なワークスタイル」を提供する!?〜DX事例38_三井不動産株式会社〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は不動産業からです。三井グループは三井住友銀行、三井物産とともに御三家の一つである総合不動産会社の三井不動産株式会社の働き方に関するDXです。


不動産会社の働き方改革は、「働く場所」に注目したIT活用

三井不動産は「ららぽーと」を主体とする商業施設から、オフィス、ホテル・リゾートやロジスティクスなどの様々な不動産に関するサービスを提供しています。
もちろん不動産ごとに多数のDX事例があったのですが、今回は三井不動産で働く社員の「働き方改革」のIT事例を紹介します。

三井不動産は、法人向けのシェアオフィスサービス「ワークスタイリング」を展開しており、その拠点は2020年度末に100を超えています。三井不動産は自社社員も「ワークスタイリング」を活用しながら、広域のABWを実践しはじめています。

ABW:生産性向上のため、働く場所をワーカーが主体的かつ柔軟に選択する働き方。


①LINEミニアプリを利用した会議室や個室をかんたん予約
皆さんはLINEミニアプリをご存知でしょうか? LINEアプリの中にはトークやスタンプ、LINEペイなどの複数のサービスが入っていますが、同じような形で他会社のサービスも「ミニアプリ」としてLINEに入れることができます。具体例でいうと、スシローの「受付/予約」ミニアプリや、ジョルダンの「時刻表」ミニアプリなどが、LINE上で利用することができます。

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三井不動産株式会社「2020DX白書(サマリ版)」より抜粋

「ワークスタイリング」では専用のLINEミニアプリを開発し、アプリ上で発行されるQRコードを使うことでワークスタイリングのチェックインを可能にしたり、WEBページで会議室・個室をかんたんに予約できるようにしています。


②社員の居場所を表示。コロナ感染症の拡大防止にも使える「BeacappHere」
こちらは三井不動産のオフィスでの事例です。三井不動産のオフィスでは、社員の居場所を表示するツールとして株式会社ビーキャップの「BeacappHere」を導入しています。このツールはオフィス内の至るところに設置された「ビーコン」と、社員のスマホ・PCにインストールされた専用アプリを使うことで、社員の位置情報を把握しオフィスマップにマッピングすることができます。

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株式会社ビーキャップ「beacapp HERE 特徴」より抜粋

上図にもありますが、この機能を使うことで「フリーアドレスで誰がどこにいるかわからないときに社員の居場所を検索できる」「位置情報や移動情報を蓄積調査することで、働きやすい環境作りに活用できる」などのメリットがあります
最近だと、コロナの濃厚接触者を特定するために、感染者の過去の移動経路を検索することもできるため、感染拡大防止にも役立てられるそうです。

その他にも、三井不動産では「顔認証で入退室できるオフィス」や「音声議事メモを自動作成するICT会議室」などを導入しており、社員の働き方や生産性の向上を図るための活動に取り組んでいます。


DXと経営戦略の関連について

三井不動産はDXに向けた取り組みとして「2020DX白書」を発行しています。内容としては、2025年までに「テクノロジーを活用し不動産業そのものをイノベーション」するとして、今回紹介した「働き方改革」以外にも「事業変革」「推進基盤」にもDX改革をしようとしています。

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三井不動産株式会社「2020DX白書(サマリ版)」より抜粋

事業変革の一つに「Real Estate as a Service」とあります。「REaas」と略すとイメージが湧きやすいと思いますが、SaasやMaasと同様に「Real Estate=不動産」を売るだけではなく、不動産を一つのサービスとして提供していきたい意図があります。

従来は商業施設や、オフィス、ホテル・リゾートなどの「商品別」で不動産販売を提供してきましたが、例えば「働く」という視点で考えれば自宅や、商業施設、オフィス、ホテル・リゾートのどこでも働くことは可能です。

三井不動産は今後、商品別ではなく「働く」「住まう」「楽しむ」などといった人々の行動を起点として不動産サービスを作り出し、新たな顧客ニーズや付加価値を創造していこうとしています。


まとめ

いかがでしたでしょうか?
記事内で触れた「BeacappHere」の位置情報ですが、その位置情報を使ってABWの研究をしていた記事を見つけました。
同三井グループである三井デザインテック株式会社と東京大学が共同研究「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)の環境と 働き方がもたらす効果に関する研究」を発表しており、そこでABWを行うことで社員のパフォーマンス向上が見られる報告がされています。

そこでは以下の結果が出ています。
・オフィスの滞在時間が長く、様々なスペースを使い分けながら仕事をしているワーカーが最も「クリエイティビティ」と「ワーク・エンゲージメント」が高い。
・総合職は多くの人と接すること、管理職は様々な場所で異なる組織の人と接することがクリエイティビティの向上に繋がる。

確かに一つの固定デスクに留まって仕事をするより、複数スペースを移動しながら仕事をしたほうが気分も上がりそうですね。散歩をするとアイディアが浮かびやすいと聞きますが、それと近いものでしょうか?

「BeacappHere」活用でこのような研究結果が出たように、「人の行動」をデータ化して分析すれば、まだまだ新しいニーズや思わぬサービスを生み出すきっかけが得られるかと思います。
皆さんの会社も従業員や、お客様の人の動きを注視してみると良いかもしれませんね。次回の記事も楽しみにしていただければと思います。
タナショー


参考にさせていただいた情報
三井不動産株式会社HP
https://www.mitsuifudosan.co.jp
三井不動産株式会社「2020DX白書(サマリ版)」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/dx/dx_hakusyo.pdf
三井不動産株式会社「統合報告書2020年3月期」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/library/annual/pdf/AR2020_ja.pdf
三井不動産株式会社「デジタルトランスフォーメーション」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/dx/?id=global
三井デザインテック株式会社「三井デザインテック、東京大学との共同研究 「アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)の環境と 働き方がもたらす効果に関する研究」を発表」
https://www.mitsui-designtec.co.jp/topics/210114_newsrelease.pdf
株式会社ビーキャップ「beacapp HERE 特徴」
https://jp.beacapp-here.com/#feature
LINE for Business「LINEミニアプリ」
https://www.linebiz.com/jp/service/line-mini-app/

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