見出し画像

米ウォルマートが取り組むブロックチェーンを活用した食品衛生管理とトレーサビリティ〜DX事例?5_Walmart Inc.〜

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。
このnoteでは経営者にITを身近に感じてもらうための記事や、IT活用のヒント、経営者へのお役に立ちそうな記事をお届けしていきます。

今回は米ウォルマートが取り組むブロックチェーンを活用したトレーサビリティ事例となります。今回のテーマは「ブロックチェーン」ですがなかなかDXといえる企業事例が見つからなかったので、今回はウォルマートの方針等はご紹介程度、かつブロックチェーンの導入事例という側面が強く、タイトルにDX事例?とつけさせていただきました。ご了承ください。


関連するタナショーのDX記事
DXなしに「モノ」から「コト」への変革はシンドい?〜DXの必要性〜
DXは経営者が進めていくもの〜DXの進め方と注意点


米ウォルマートが抱える衛生管理の課題とは?

ウォルマートといえば言わずもがな、世界最大のスーパーマーケットチェーンとして君臨しており、日本では2008年に西友を完全子会社化して「ウォルマート・ジャパン/西友」という名前で市場展開しています。

ウォルマートの特徴として、「Everyday Low Price=毎日低価格」という言葉がとても有名ですが、低価格を実現するために全世界のあらゆる市場から仕入れを行なっています。この世界規模の調達により、調達経路の複雑化ならびに品質不安のある食品経路の追跡(トレーサビリティ)は大変に困難なものになっていました。ひとたび品質問題が起きて調達経路を追跡しようにも数日かかることもあったようです。

また2018年、アメリカではロメインレタスによる大腸菌中毒が急増しており、色の安全が脅かされる事態となっていました。
ウォルマートは「Healthier food for all(=すべての人に健康な食べ物を)」というスローガンとともに、ロメインレタスやほうれん草などの葉菜を対象として、ブロックチェーンテクノロジーを活用したトレーサビリティの実証実験を行いました。


ブロックチェーンとは

AIやドローンなどと違い、ブロックチェーンについてはイメージが湧きにくいと思いますので、簡単な説明を入れます。

ブロックチェーンは「分散型台帳技術」と呼ばれる技術です。仮想通貨の時に頻出したキーワードですが、仮想通貨だけに使われる技術ではなく、「台帳」という名前から想像がつくように「安全かつ不正改竄されない記録技術」となります。

ざっくりと解説すると「取引記録を1箇所で集中管理するのではなく、取引記録を特定のブロック単位に分割・分散し、複数の拠点に分散記録する」、「分散記録することで、災害や不正改竄により1拠点の台帳情報が誤った情報になったとしても、他拠点との整合性チェックにより正しい情報に復元できる(改竄ができない)」となります。

スクリーンショット 2020-09-20 21.48.20

出典:経済産業省発行の「平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査)報告書」


米ウォルマートが取り組むブロックチェーンによる衛生管理とは?

話を戻して、ウォルマートがブロックチェーンを使って何を実現しようとしたかを解説します。ウォルマートはこのトレーサビリティの取り組みに伴い、IBM社の食品トレーサビリティプラットフォームシステム「IBM Food Trust」を導入しています。さらに調達経路に存在する各サプライヤーに協力してもらい、生産農家からスーパーマーケットまでのあらゆる経路の記録に挑戦しました。

①トレーサビリティ時間の高速化
日本でも平成13年のBSE問題がありましたが、食品の品質汚染というのは米国でも大きな問題となっていました。特に、今回トレーサビリティ対象となった葉菜は、当時大腸菌ウィルスによる死亡者や入院患者が出たことがニュースとなり、原因となった食品の経路特定は重要課題となっていました。
当時のトレーサビリティに関しては、サプライヤー間で独自の管理を行なっていたため経路特定に7日程度かかっていましたが、「IBM Food Trust」の導入により、食品のバーコードを読み取るだけで瞬時に特定することが可能となりました。

②偽装食品の改竄防止
ブロックチェーンの代表格とも言える改竄防止技術は、食品のトレーサビリティに対しても極めて有効です。ウォルマートは中国の豚肉のトレーサビリティ実証実験を2016年に実施しており、当時豚肉不足が深刻化、それに伴う密輸と偽装の問題が蔓延していた中国において、ブロックチェーンの改竄防止技術は大きな成果を挙げました。

③調達時間のボトルネック解消と効率化
生産地からスーパーマーケットに並ぶまでの流通経路の全てが記録され、それが瞬時に把握できるようになれば、それはサプライチェーンマネジメントに大きな意味をもたらします。流通経路上に食品が滞留してしまうようなボトルネックの把握が容易になり、調達時間の改善に取り組みやすくなります。例えば流通経路の各ポイントで品質チェックを行い、チェック結果をブロックチェーンに記録することで品質マネジメントの改善ができたり、不要な中間業者を省くことで調達コストを抑えることができるようになります。

01.ふろー


まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はDX事例とは言いづらい内容となりましたが、ブロックチェーンのネタはどうしてもやりたかったので、今回とりあげさせていただきました。

ブロックチェーン技術はその特性上、自社だけではなく協業相手等にも参加してネットワークを大きく広げないと真価が発揮されない技術です。そのため導入は難しい技術でもありますが、公正・安全・透明性のある技術としては非常に価値あるものだと思っています。皆さんの知識として、今後のビジネスアイディア検討の際などに役立てられれば嬉しいです。次週もお楽しみにしていただければと思います。タナショー


参考にさせていただいた情報
Walmart.Inc「2019Walmart Environmental, Social & Governance Report」
https://corporate.walmart.com/esgreport2019/
IBM 「IBM Food Trust」
https://www.ibm.com/jp-ja/blockchain/solutions/food-trust
IBM「【事例】ブロックチェーンで生産から消費まで「食のサプライチェーン」を可視化する」
https://www.ibm.com/think/jp-ja/business/food-trust/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?