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[DX事例81]環境発電で自動充電、メンテナンスフリーの小型電池_日本ガイシ株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は素材業界からです。セラミック技術の製品を開発販売する日本ガイシ株式会社の超小型バッテリーを使ったIoT技術の紹介です。


セラミックスで企業のIoT化を後押しする電池を開発?日本ガイシのDX事例

今回はDX事例というよりはDX技術。DX化・IoT化を進めるための先端技術製品の紹介となります。日本ガイシはクロコ君が登場するCMが印象的ですよね。
セラミックスは半導体素子製造の材料であるウエハーや自動車の排ガス除去などの
分野で活躍していますが、今回バッテリー分野で企業のIoT化を後押しするような製品が登場しましたのでご紹介します。


①環境発電で自動充電!メンテナンスフリーな小型電池「EnerCera」

日本ガイシといえば素材の会社でセラミックスを中心にさまざまな製品を開発している会社です。その製品の一つに超小型の薄型電池「EnerCera(エナセラ)」があります。日本ガイシは2019年12月に、従来製品よりも動作温度の上限を60℃から85℃へと高めた高耐熱タイプの量産を開始しています。

サイズも直径12mmの小型のコインタイプ「EnerCera Coin」と曲げ耐性のある薄型の「EnerCera Pouch」が量産されています。EnerCeraは小型でありながら充電が可能な二次電池です。そして前述の通り85度まで耐える高熱耐性を持ち10年と長寿命です。


ここまでは従来の電池を小型化・高機能化したものになりますがEnerCeraはIoT化を強く後押しするような特徴があります。それが「環境発電で自動充電可能」という特徴です。
環境発電(エネルギーハーベスティング)と呼ばれる技術ですが、EnerCeraは家庭内の電灯などの光や振動、温度差など環境の中にあるエネルギーを電力に変えることができます。

もちろん環境発電で得られる充電量はμWレベルと微々たるものでですが、この低電力はIoT化、特にLPWAと相性が良いです。0Gとも呼ばれるLPWA(Low Power Wide Area)では1回の送信あたり数十mWレベルの消費電力となり、IoTセンサーによくある「1日に数回程度の送信ができればいい」使い方であれば環境発電の蓄電量で十分にペイできます。

日本ガイシ株式会社「IoTデバイス用電源に最適な超小型セラミックス二次電池「EnerCera®︎」シリーズ」より抜粋


また、2021年日本ガイシはローム社と共同で「超高効率の蓄電ユニット」を開発したと発表しています。このユニットは日本ガイシの「EnerCera」ロームの低消費電流技術「Nano Energy」を組み合わせたものです。

Nano Energyは待機時の消費電力が180nAという超低消費電力の電源ICです。EnerCeraの環境発電量は微小ですので、待機時の電力消費量も意外と無視できません。ローム社のNano Energyという電源技術を利用することで、真に超高効率の電源ユニットが実現できます。

ローム株式会社「超薄型二次電池と超低消費電源技術のコラボ! メンテナンスフリーIoTデバイスを実現するEnerCera×NanoEnergy」より抜粋


これらの技術を活用した事例がまだ具体的にありませんでしたが、日本ガイシが提示する活用例としては下記があります。

電子棚札
工場の設備機器のIoT化
屋外設備のIoT化
ランニングシューズなどの交換しづらい製品のウェアラブル機器化
入管カードなどのスマートカード化

日本ガイシ株式会社「あらゆるモノに電子機能を組み込む0.45mm厚のセラミックス二次電池「EnerCera®︎ Pouch」」より抜粋


今回の事例では低電力での使用シーンをお伝えしましたが、ワイヤレス充電器を使った充電を行うことで高出力な電子機器の使用ももちろん可能です。日本ガイシはバッテリーの課題を解決することで、どんなものやどんな場所でもIoT化が可能なソリューション開発に取り組んでいます。



経営戦略とDXの関連性について

2021年の日本ガイシ中期経営計画「中長期ビジョンについて」ではDXについての記載があります。2050年の社会は「カーボンニュートラル」「デジタル社会」が浸透している社会と想定し、そこには日本ガイシが持つセラミック技術が貢献できるとして、2つのキーワードに対応した新たな製品開発に取り組んでいくことを発表しています。

日本ガイシ株式会社「中長期ビジョンについて」より抜粋

今回ご紹介したEnerCeraではIoT製品のメンテナンスフリー化を行い、多種多様なIoT製品やウェアラブル機器の開発を後押し。同じくセラミックス製品である高機能複合ウエハーの開発で5Gや次世代高速大容量通信化の貢献を目的としています。

日本ガイシはこれら「カーボンニュートラル」と「デジタル社会」に特化した商品を開発し、2050年の売上高は80%を目指すために事業構成を転換しようとしており、このタイミングを「第三の創業期」と位置付けています。
日本ガイシはモノを作るだけではなくコト、すなわちサービスやソリューションを提供していくことで、「独自のセラミック技術で カーボンニュートラルと デジタル社会に貢献する」ための活動を続けています。



まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はDXの実践ではなく、企業のDXを後押しするための技術や製品というDX技術のご紹介でした。いつもとは違った視点でのご紹介でしたね。

IoT化を考えるとき「IoT製品の電源はどこから取るか」「充電方法をどうするか」という電源問題がありますが、今回の事例はそれを根本から解決する事例でしたね。IoTやDXを導入する際にはさまざまな課題や問題がありますが、それを解決するためのDX技術もどんどん進化しています。
今後もたまにこういったご紹介をしていければと思います!
タナショー


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参考にさせていただいた情報
日本ガイシ株式会社「中長期ビジョンについて」
https://www.ngk.co.jp/ir/news/__icsFiles/afieldfile/2021/04/28/pre_FY2020_vision.pdf
日本ガイシ株式会社「IoTデバイス用電源に最適な超小型セラミックス二次電池「EnerCera®︎」シリーズ」
https://www.ngk.co.jp/enercera_lp/
日本ガイシ株式会社「あらゆるモノに電子機能を組み込む0.45mm厚のセラミックス二次電池「EnerCera®︎ Pouch」」
https://www.ngk.co.jp/enercera_lp2/
ローム株式会社「超薄型二次電池と超低消費電源技術のコラボ! メンテナンスフリーIoTデバイスを実現するEnerCera×NanoEnergy」
https://www.rohm.co.jp/collaboration/enercera-nano-energy


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