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[DX事例80]専門商材の重要属性をAIが抽出し、検索しやすい・購入しやすいECサイトへの変革_アスクル株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は通販業界からです。法人向け事務用品を販売を販売するアスクル株式会社のAIスコアリングを使ったDX事例です。


AIを使って商品ごとの重要属性を自動スコアリング。アスクルのDX事例

アスクルといえば社名の通り「明日来る」という翌日配達をコンセプトにした通販会社です。タナショーの会社も利用していますが、商品がすぐに到着するのが便利ですよね。
翌日配達を実現するために設立当初から高度な物流センターを用意し、徹底管理されたサプライチェーンマネジメントを行っている会社です。今回はそんなアスクルが更なる商品拡充と使いやすい商品サイトにするためのDX施策を行なっていますので紹介していきます。


①専門商材の重要属性項目をAIが抽出「重要属性スコアリングAI」

アスクルでは、医療・介護や製造業等の業種向け専門商材を中心とした商品拡充を進めています。専門商材となると定常的に注文が発生しにくいことから、出荷頻度が低い商品(=ロングテール品)となります。
しかしながら品揃えを拡大する一方で、各種商品カテゴリに対し「購入する際の決め手となる重要情報(属性項目)が何かわからない」という課題を抱えていました。

例えば棚やカゴを購入する際は大きさや容量などの「サイズ」や「材質」が重要視されると思いますが、医療や工具、研究開発用の専門商材となると何を重要視して購入するのかは専門知識がないと分かりません。通販サイトという特性上、これらの重要項目を商品サイトに掲載したり商品検索キーワードとする必要がありますが、実現が難しい状態でした。

アスクルは2021年12月に株式会社マクニカが提供する「重要属性スコアリングAI」を導入開始しています。

アスクル株式会社「アスクル、専門商材の重要属性項目の抽出に AI スコアリングを導入。」より抜粋


「重要属性スコアリング AI」はアスクルが抱える自社商品情報や外部データをもとに、商品の属性項目の重要度をスコアリングします。

例えば、実験や検査で使用される「マイクロピペット」という商品があります。マイクロピペットは液体量のマイクロレベルでの測定を行う機器です。
マイクロピペットを購入する際の選定項目として「容量」「タイプ」「ブランド」という基本項目だけを掲載していましたが、スコアリングAIを利用することで、「チャンネル数」「オートクレーブ」という情報も追加掲載すべきということがわかりました。
チャンネル数:機器の先端部分の数
オートクレーブ:高圧蒸気滅菌器対応のこと

これらのように、AIスコアリングに基づき算出された属性情報をサイトに掲載することで、より細かい検索が可能となり、これまでより選びやすく購入しやすいサイトに改善することができました。


②ロングテール商品の拡大に伴う各種施策

アスクルは2025年5月期の中期経営計画において、ロングテール品の在庫化を進め売上拡大することを成長戦略の一つとして位置付けています。

ただし、注文数が定期的に発生する人気商品と違い、ロングテール品は注文の頻度が少ないため在庫数が少なくなりがちなので、不定期に大量の注文がくると品切れとなってしまう場合が多いです。販売機会ロスにもつながります。

アスクルはロングテール品のような出荷頻度が低い商品への根本的対策として、下記のような対応を進めています。少し細かい対応が多いので、ざっくりのご紹介となります。

1.実行型AIロボットによる自動化・省人化
入荷作業での人手作業を自動化・省人化するための取り組みとして、実行型AIロボットを導入しています。昨今のEC需要拡大に伴い、アスクルの物流センターでの出荷量が急激に増加しているため、従業員の身体的負担を解消するための取り組みとなります。
現在アスクルの物流センターでは、デパレタイズロボット自動棚搬送ロボットが稼働しています。

アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画補足資料」より抜粋
アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画補足資料」より抜粋


2.カスケード型発注の実証実験開始
カスケード型発注
とは、指定サプライヤーの商品在庫がない注文が発生した場合に品切れとするのではなく、別サプライヤーの在庫を確認し発注する方式です。
カスケード型発注はAmazonも採用している方式ですが、高度な発注・在庫管理が必要な発注方法となります。

アスクルは2021年10月にOAPC用品の一部からカスケード型発注の実証実験を開始。ASKUL Logi PARK 横浜を皮切りに、翌11月にはDCMセンターへも検証範囲を拡大しています。

アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画補足資料」より抜粋



経営戦略とDX事例の関連性について

アスクルは2021年の中期経営計画にて、2025年に成し遂げることとして「オフィス通販からのトランスフォーメーション」を掲げています。そのための重要戦略として、プラットフォームの改革があります。

前述したロングテール品の品揃え拡大に積極的に取り組むことで、ロングテール品も「明日来る」状態をDX活用で作ろうとしています。

アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画補足資料」より抜粋

また、現在までの通販サイトとしての販売データをもとに、アスクルはBtoB事業としては日本最大級の膨大なビッグデータがあります。これらのデータをもとに
、よりお客様に寄り添ったサービスや商品拡充をしていこうとしています。

アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画補足資料」より抜粋

アスクルはDXを通したバリューチェーンの改革や新たな顧客体験を創造することで、オフイス通販から「すべての仕事場とくらしを支えるインフラ企業へ」のトランスフォーメーションを図ろうとしています。



まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はロングテール品という発注頻度の少ない商品の品揃え拡充と、目当てのロングテール品を簡単に検索・購入しやすくするための取り組みでした。

品揃えを拡充すると在庫や物流の最適化だけでなく、取り扱う商品知識や商品情報のカバー範囲も増えていきますよね。アスクルの中期経営計画では第一戦略として「取り扱い商品を2倍に増やす計画(1800万アイテム)」がありますが、それらを補助するための仕組みとしてDXが活躍していました。

タナショーの記事では何度か触れていますが、経営戦略を達成するための手段としてDXがあります。みなさんの会社の経営戦略に対しても、DXが活用できるシーンが必ずあると思っています。

そのためには他社の様々な事例が参考になると思いますので、引き続きDX事例をお伝えしていきます。次回も楽しみにしていただければ嬉しいです!
タナショー

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参考にさせていただいた情報
アスクル株式会社「2022年5月期〜2025年5月期中期経営計画」
https://www.askul.co.jp/kaisya/ir/library/pdf/FY2021Q4.pdf
アスクル株式会社「アスクル、専門商材の重要属性項目の抽出にAI スコアリングを導入。」
http://pdf.irpocket.com/C0032/p5Zl/G3E1/Req3.pdf
アスクル株式会社「アスクル、出荷頻度が低い商品の品切れ解消に向け 実証実験を段階的に実施」
https://pdf.irpocket.com/C0032/p5Zl/Ci5u/QoDR.pdf
アスクル株式会社「アスクル、実行型 AI ロボット導入で物流現場の DX を加速」
http://pdf.irpocket.com/C0032/Zbuw/VEta/Kkxw.pdf

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