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[DX事例56]AIカメラで豚の様子を分析し飼料を自動配合!?健康で美味しい豚を育てたい!_プリマハム株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は加工食品です。ハム・ソーセージの製造から食肉事業、加工食品事業を展開するプリマハム株式会社のスマート畜産のDXです。


AIが豚の生育状況チェックから飼料配合まで自動決定。プリマハムのDX事例

プリマハムは顧客が求める「安全・安心・おいしさ」を実現するために、豚の生産、処理・加工、販売までを一貫体制で行い、国産豚肉にこだわった養豚事業を行っています。プリマハムの成長戦略の一つに「国産豚肉の生産強化」があり、その施策の一つとしてDXを活用した新農場が2023年に創業予定です。その農場でのDX事例をご紹介します。


①AIカメラが豚の行動を解析して体重測定や健康状態を把握「PIGI」
本DX事例は、プリマハムの養豚食肉事業の子会社「太平洋ブリーディング株式会社」の農場で行い、畜産DX事業を手掛ける「株式会社コーンテック」の技術を使った実証実験となります。

実証実験では、コーンテック社の養豚農家向けIoT・AI監視サービスである「PIGI」を利用する予定です。PIGIはAIカメラによる豚の個体識別が可能という特徴があります。畜舎内に監視カメラやセンサーを設置し、豚の個体識別機能を用いて豚の個体数や体重測定・健康状態の把握ができるようになります。

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PRTimes「コーンテックがプリマハムグループと共同でAIカメラの実証実験を開始」より抜粋

人の目による豚の個体識別は熟練者でないと判別が難しいですが、AIが代替することで常時監視することが可能となり、従来では難しかった個体ごとの成長管理や衰弱や死亡判定などの健康管理が実現できるとのことです。


②豚の健康状態・気温に合わせて飼料の配合をAIが決定
先程のAIカメラPIGIを活用した取り組みとなります。豚の飼料はとうもろこし・大麦などの穀物などを配合して作りますが、豚の好む飼料は気温や健康状態によって大きく変わるため、飼料配合成分の変更や配給量にばらつきが出やすい状態でした。

今回PIGIを利用することにより豚の健康状態や周囲の気温・湿度も測定できることから、豚の体調と気候に合わせてAIが最適な飼料配合を分析・製造する取り組みを開始するとのことです。農場内にはプリマハムグループとして初めての飼料工場を併設し、豚の健康状態を測定→AI分析により配合成分および配給量の決定→飼料工場により配合してすぐに配給、という一連の工程をワンストップで提供します。

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プリマハム株式会社「プリマハムグループ統合報告書2021」より抜粋

AI分析による最適な配合成分と配給量が決定できることから、健康かつ品質の高い豚を生育でき、さらに無駄な配給をなくすことによるコストダウンも見込めるとのことです。


DXと経営戦略の関連性について

プリマハムは「プリマハムグループ統合報告書2021」において、中長期の成長戦略の一つに「持続可能な農場運営」を挙げています。

プリマハムグループでは原材料としての食肉を世界各地から調達しています。食肉調達網の維持・強化はプリマハムの重要な生命線であるものの、近隣各国の食肉需要の増加や環境問題、コロナ禍により食肉調達が難しくなるリスクがあり、持続可能な食肉調達手段の確保が急務となっているとのことです。

その対策の一つとして「自社で運営する農場の確保」があり、今回紹介した新農場を舞台にAIやビッグデータを活用した最新鋭の「スマート養豚」を開始する予定です。

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プリマハム株式会社「プリマハムグループ統合報告書2021」より抜粋


国内の畜産農家は減少傾向であり、労働者不足も深刻な問題です。プリマハムはAIや最新のIT技術を使うことで、人の手がかからない生産性と効率の高い農場経営を行っていくとのことです。さらに自社グループでの生産性を高めることで安定的な食肉を調達し、顧客に安全安心でおいしい食品の提供を目指して活動を続けています。


まとめ

いかがでしたでしょうか。プリマハムの取り組みの一つに「アニマルウェルフェア」が取り上げられていました。
ウェルフェア=健やかに暮らしている状態、ということで「快適性に配慮した家畜の飼養管理」という意味があるそうです。

アニマルウェルフェアの5つの自由
・飢え、渇き、英領不良からの自由
・恐怖及び苦悩からの自由
・物理的、熱の不快からの自由
・苦痛、障害、疾病からの自由
・通常の行動様式を発現する自由

(公益社団法人畜産技術協会「アニマルウェルフェアのすすめ」より抜粋)


アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理を行うことで、家畜のストレスや怪我、疾病等を減らすことができるため、治療費等のコスト軽減や生産性の向上に繋がるとのことです。

サステナビリティ経営もそうですが、企業を10年20年、30年先にも持続して存続させるためには環境や社会に配慮した企業活動が必要不可欠になってきました。以前「株式会社Kalm角山」のスマート農場の記事で書いた、HACCP認証取得のためにIT技術を活用したという件もそうですが、環境配慮や認証取得をするためにはどうしても管理の手間が増えます

この手間を従業員のみで対応するのは大変な労力がかかります。そして、こういったときこそIT技術の出番だとタナショーは思います。皆さんの会社も環境に配慮した企業活動や、サステナブルな企業運営を実現するためにはどういった施策が必要か。そしてそれを実現するためにはIT技術が活用できないか考えてみてはいかがでしょうか?
DXの技術や事例はタナショーのマガジンにたくさんのバックナンバーがありますので、こちらも参考に見ていただけると嬉しいです♪
タナショー


参考にさせていただいた情報
プリマハム株式会社HP
https://www.primaham.co.jp
プリマハム株式会社「プリマハムグループ統合報告書2021」
https://pdf.irpocket.com/C2281/bygc/L86S/jYYw.pdf
PRTimes「コーンテックがプリマハムグループと共同でAIカメラの実証実験を開始」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000058347.html
PRTimes「畜産DX|養豚農家向けAIカメラ「PIGI(ピギ)」ベータ版を公開」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000058347.html
日本経済新聞「デジタル畜産で生産性3割増 プリマハム、AIが飼料提案」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ16A2Y0W0A211C2000000/
公益社団法人畜産技術協会「アニマルウェルフェアのすすめ」
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/attach/pdf/animal_welfare-55.pdf

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