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[DX事例84]医師がAI開発できるプラットフォーム?プログラミング知識なしで医療AI開発_富士フィルム株式会社

ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです。

このnoteではDX事例やIT活用事例の紹介を通して、経営者の方がITを身近に感じたり面白いと思ってもらえることで、企業の成長に役立つ情報をお届けしていきます。

今回は化学分野からです。カメラ用フィルムや、化粧品・医薬品等の製造・販売を行なっている富士フィルム株式会社のAIを使ったDXです。


医師がAI開発できるプラットフォームやAI技術によるワークフロー改善!? 富士フィルムのDX事例

富士フィルムは名称の通り、カメラ用写真フィルムの製造販売を中心に行なっていた企業です。最近では写真フィルムの技術を活用した化粧品事業、医薬品・再生医療事業の製造販売が中心となります。

写真フィルムの主原料が化粧品にも使われるコラーゲンであることや、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術がアンチエイジングに応用できるなど、写真フィルム事業と化粧品事業に関連性があります。

このようにフィルムとは関係のない事業にも多角化している富士フィルムですが、IT・DXを行うことで医療分野においても新たなソリューションを生み出そうとしています。そんな富士フィルムのDX事例をご紹介していきます。


①医師がAI開発できる環境を構築!?「AI開発支援プラットフォーム」

医師が診断時に行うCT・MRIなどの医用画像の診断(読影)は病理を特定するために不可欠ですが、熟練の技術が必要な業務となります。

「この診断業務をAIが代替することによって、業務効率化や診断精度の均一化ができないか?」
というニーズは以前から一定以上ありますが、学習データの準備・アノテーションに要する膨大な手間や、開発工程にかかる高度な工学的知識の習得が障壁となっていました。

アノテーション:画像データなどに臓器などの区別、領域指定などの付加情報を加工すること。


そこで富士フィルムは2021年4月に国立がん研究センターは共同で、医師がAI技術を開発できる研究基盤システム「AI開発支援プラットフォーム」を開発しました。

エンジニアでもない医師がAI開発できるという凄い触れ込みですが、実際の臨床現場で使われている画像診断環境に近い操作感で、直感的に操作・アノテーションができるように設計されているとのことです。

富士フィルム株式会社「「AI 開発支援プラットフォーム」を共同開発」より抜粋


AI開発支援プラットフォームの機能としては、AI開発プロジェクトごとに学習データやアノテーション定義情報を管理する「プロジェクト管理機能」。富士フィルムが開発している読影システム「SYNAPSE SAI viewer」を活用して、直感的な操作でアノテーションができる「アノテーション機能」やAI学習情報を管理しておく「学習管理機能」があります。

学習を行なったAIの診断テストも簡単に実行でき、一定のレベルに達して安定化しているかどうかの評価も確認できます。

富士フィルム株式会社「「AI 開発支援プラットフォーム」を共同開発」より抜粋

富士フィルムはAI開発支援プラットフォームを使うことで、これまでニーズがありながらも手を出してこなかったAI技術の活用に研究機関や医療機関が取り組みやすくなり、画像診断支援AI技術の研究開発の加速が期待できるとしています。



②医師が行う診断ワークフローをAI技術の組み合わせで効率化「REiLI(レイリ)」

先ほどのAI開発支援プラットフォームではAIが医用画像から病理を診断する取り組みでしたが、今度は医師の業務を効率化する取組みです。

近年ではCT・MRIなどの画像診断機器の高度化に伴い、検査数や画像枚数の増加や診断医の不足によって、読影業務が大きな負担となっていることから業務効率化が課題となっています。
富士フイルムはこれらの画像診断や、医療現場で発生するワークフローの支援、医療機器の保守サービスに活用できるAI技術の開発を進めており、新しいブランド“REiLI(レイリ)”という名称で展開しています。

例えば先ほどの読影業務でのワークフローで言えば、「CTスキャンなどの撮影業務」 → 「読影業務」 → 「診断書等のレポート作成」 という流れです。これを富士フィルムは自社が持つ下記の技術を活用することで業務効率化を図ろうとしています。

(1) 臓器認識:全身の各臓器および副構造を病態・個人差によらず正確に認識・抽出するAI技術
(2) 病変の検出および鑑別:がん病変など各臓器,各疾患別の検出,計測を行うAI技術
(3) ワークフロー支援:読影レポートを半自動で生成する言語処理や,類似症例画像を検索・提示するAI技術

innavi net「富士フイルムが取り組むAI技術「REiLI」」


REiLIが目指す姿として、最終的には全身をAIが自動スキャンし、臓器特定ならびに診断を行いレポート作成まで一連のワークフローを半自動化することを目指したいとのことです。

ReiLi HPより抜粋


経営戦略とDXの関連性

富士フィルムは2021年に「DXビジョン」を策定しており、全社規模でのDX推進をすると公表しています。
DX推進を支える基盤は、土台となる「インフラ」および、「製品・サービスDX」「業務DX」「人材DX」の3本柱で構成されています。

富士フィルム株式会社「DXビジョン」より抜粋


また今回の事例で取り上げたように、富士フィルムはAIを積極的に使用したソリューション開発に取り組んでいます。その取り組みの一環として、2020年11月に企業活動全般においてAIを有効かつ適切に活用するための指針「富士フィルムグループAI基本方針」を立てています。


<富士フイルムグループ AI基本方針の骨子>
1.AIの利活用により新たな価値創出を加速します。
2.基本的人権を尊重した製品・サービスの開発・提供に取り組みます。
3.適切かつ公正に利用します。
4.利活用する情報のセキュリティ確保に努めます。
5.説明責任を果たし透明性を確保します。
6.AIを高度に適切に活用できる人材を育成します。

富士フィルム株式会社「「富士フイルムグループ AI基本方針」を策定」より抜粋


AIを開発・活用する際にはこの基本方針にのっとり、従業員のAIリテラシー教育を充実させながら、AI人材の育成を強化していくとのことです。


まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は医師でもAI開発できるプラットフォームの話。またAI技術を使った医療業務のワークフロー改善の話でした。
医師の業務は専門性が高く、特に診断業務は目視による高度な判断が必要ですが、AIを使って業務効率化につながることができました。
一見難しそうな業務であってもIT活用することで、実は効率化が可能と分かる事例だったかと思います。
次回の記事も楽しみにしていただければと思います。
タナショー

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参考にさせていただいた情報
富士フィルム株式会社「「AI 開発支援プラットフォーム」を共同開発」
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210416/pdf/20210416.pdf
富士フィルム株式会社「統合報告書2021」
https://ir.fujifilm.com/ja/investors/ir-materials/integrated-report/main/00/teaserItems1/01/linkList/0/link/ff_ir_2021_allj_a4.pdf
innavi net「富士フイルムが取り組むAI技術「REiLI」」
https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/fujifilm/technical_notes/190793
ReiLi HP
http://reili.fujifilm.com/ja/#features03
富士フィルム株式会社「DXビジョン」
https://holdings.fujifilm.com/ja/about/dx/vision


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