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避難生活10の気づき 【避難生活編】

この記事は「避難所の衛生ストレス解決プロジェクト」を通じて徐々に浮かび上がってきた、緊迫した避難所をもっと安心や快適にできるかもしれない様々な気づきを10のテーマにまとめたものです。どれも課題の指摘や提言ではなく、機会や可能性の提示として、多くの皆さんにひろく共有することができればと思い書き留めました。
noteでは、10の気づきを避難生活の4つのフェーズに分けて順にご紹介していきます。

第2回は、「避難生活」についての3つの気づきです。

避難生活10の気づき 【避難生活編】

〜被災直後から数か月、避難所等で過ごす〜

03:緊急事態での「水」

水は避難所では貴重な資源 。
たとえ飲めなくても、いろいろな使い道がある。
現場の工夫に寄り添った道具がつくれないか?

緊急事態での水の用途に合わせた処理方法とは?

避難所では、「水」が日常よりもたくさんの種類に分類されていたように思う。積もった雪をお風呂で保管したり沢の水や学校のプールの水など、実に多様な水源が立ち現れていた。一方で、夏の川の氾濫では、下水から逆流して浸水した水には感染の脅威などがあり、大変危険な水も出現していた。被災時には、限られた「使えそうな水」を最大限活用するために、トイレを流す水、清掃のための水、食事など身体の中に入る水などきめ細かく優先順位をつける必要があり、仕分ける解像度が上がる。そのような中で、飲用や調理用の水をできるかぎり守りながら、清掃などに使う水、生活用水などをどのように分類するか、何らかの処理で賢く使う方法など、普段とは違う工夫がありそうだ。それらの用途や工夫に寄り添う道具を作れないか。

「地震が起きたらお風呂に水をためよう」このような呼びかけを目にすることがあります。水道設備が災害の影響を受けた場合はもちろん、設備に直接的な被害がない場合も、停電により水が使えなくなることがあります。記憶に新しい2019年秋に千葉県を襲った台風では、浄水場やポンプが停電の影響を受け、2週間以上断水が続きました。
日常生活で当たり前のように使っていると気づきにくいですが、災害時に水が止まると生活に大きな影響が出ます。使わなくてよい場合に無駄使いしないよう、また使うべきところにしっかり使えるように。確保した水のその先、使い道をあらかじめ想定しておくことも大切です。

04:非日常の中の日常

「それどころじゃない」非日常のなかで温かい食事や笑いは、
日常を少し取り戻せたサイン。
もっとたくさんの「日常」をつくれる?

緊急時に日常に近づく体験ができることの価値

被災時には、嫌な臭いや美味しさなど多くのことが後回しになるが、当時の苦労はあまり記憶に残っていないようだ。一方で、震災後2週間経って初めてシャワーを浴びた時のことを今でも鮮明に覚えていたり、学校の授業でつくったラジオが避難所で役立ったことなど、厳しい状況の中でも「何かをできた」記憶は強く残り、その後の人生を勇気づけてくれているように感じた。お風呂の湯船やサラダの生野菜など、非常事態の中で「いつもと同じ兆し」や少しでも「日常に近づく」経験が、私たちの精神衛生を支えてくれるのではないか。

子どもたちにとっての「日常」のひとつに「遊び」があります。そして、「遊び」こそが「日常」を回復する手段のひとつであることも、緊急支援団体などから指摘されています。現場では、セーブ・ザ・チルドレンやプラン・インターナショナルなど国際的なNGOや地域のNPOなど、様々な主体が災害後の子どもたちに「遊び」を通した支援を実施しています。
内閣府の避難所運営ガイドラインにも、「キッズスペース(子供の遊び場)の設置」が言及されています。
遊びを通して子どもたち自身が少しでも日常に近づくことはもちろん、子どもたちの存在そのものや笑い声で、周りの大人たちも日常を取り戻すきっかけになりうるのだと思います。

05:長期化した避難生活

緊急事態での共同生活だからこそ
いつもと違うつながりをつくっていかないと!
…でも、いつも通りひとりになれる時間がないと困る

ゆるやかにつながっているからこそ、安心してひとりになれる空間デザイン

心身ともに緊迫した状況では、みんなで支え合ったり見守り合うなど「誰もひとりにしない」ことが大切になる。一方、慣れない集団生活の中では、ひとりになりたいという瞬間が誰にでもあるだろう。それは、自宅に個室があることを思えば当然のニーズだと思う。少しのあいだ“他人”の視線や存在感から解放される空間が備わっていれば、もっと前向きにつながりあえるのではないか。多様な物理的制約に配慮した避難所づくりとともに、多様な気持ちのモードに応える場所を。飲食店や近年のオフィスのように、レイアウトや目線などの工夫で、つながりながらひとりにもなれる空間デザインのノウハウが活用できる領域ではないか。

2021年7月、熱海市で大規模な土石流災害が発生しました。当初小学校等の施設に避難していた住民は、その後市内の宿泊施設で避難生活を送ることになったそうです。ホテルでの避難生活は、設備の充実やプライバシー保護、またコロナ禍においては感染対策面でもメリットがあげられます。一方、避難者同士のコミュニケーションや、支援者が避難者の状況を把握する際には、個室であるがゆえの障壁もあったことと思います。
「他の誰か」の存在を四六時中気に留めながら過ごす避難生活はストレスも生まれますが、一方で孤立を生まないために「独りにしない」ことも大切。そのバランスをどう考えるかは、今後起こりうる災害においても考えなくてはなりません。

続けて、避難生活10の気づき【長期化した避難生活編】
ぜひ、ご一読ください。


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