【生き物からのラブレター#19】幻のシロナマコ

環境が変わればそこに棲む生き物も違う。人が直接海にアクセスできる海岸はみな一様ではなく、岩がゴロゴロした磯から泥どろした干潟、海藻生い茂る藻場など様々だ。

近くてもちょっと環境の違う場所にアクセスすれば異なる生き物に出会うことができるのが海の面白さのひとつだろう。

今日は佐渡の砂浜で出会ったちょっと珍しい生き物の話。


前回#18日本海の洗礼で話題にしたとおり、佐渡の海はあまり潮が引かないので、砂浜での採集も海に入らなければできない。そして二人がかりの大仕事だ。

畑を耕すような大きなスコップと、両手で抱えるサイズの大きな篩を持って海へ向かう。一人がスコップで砂を掘り、もう一人が持つ篩の上に晒してシャカシャカふるう。ひたすらやる。けっこう疲れる。

でもそうしていると、砂の中に潜んでいた生き物たちがチラホラと引っかかるのだ。ゴカイやクモヒトデ、小さな二枚貝など。サラサラしたただの砂の中に本当に色んな生き物がいるんだなぁと驚くばかりだ。

そうして採れた生き物の中で異彩を放っていたのが大きくて白いナマコだ。そのまんま名前はシロナマコというのだが、正直初見は気持ち悪いと思った。太くて白いイモムシという感じだったからだ。

他のナマコと違ってイボイボしたものはなく、表面はツルンとしている。白といっても肌色に近い感じ、真ん中あたりは内臓も薄っすら透けていて紫色っぽい。両手にちょうど収まるくらいのむっちりボディが妙になまめかしくて、それがゆっくりゆっくり動く。

でも、実験所の先生は大興奮だった。すごいすごい!シロナマコが採れた!と。なんでも生息地が限られた珍しい種で、佐渡はその数少ない産地なのだそうだ。それでも最近は佐渡でもなかなか採れず、先生も見たのは数年ぶりらしい。

そう言われると俄然興味が湧いてくるのが人間である。すかさずスケッチを始める。じっくり観察しているとだんだん可愛く見えてくるから不思議だ。

どんな生き物でもそうだが、よくよく観察すればするほどその造形美、機能美に惚れ惚れしてしまう。気持ち悪いなんてとんでもない。生き物を気持ち悪いと思う人は一度じっくり観察してみたらいい。

それに砂の中でひっそりと生きてきたと思うと、その健気さに感動してしまう。確かに「生きている」「存在している」という実感が、私自身が「生きている」という実感にもつながるように感じるから面白い。

もちろんシロナマコに出会ったのはこれ一度きりだ。本当に貴重な体験をさせてもらったなと思う。生き物との出会いも一期一会。一つ一つ大切にしていきたい。



☆生き物との出会いや体験を綴るエッセイ連載中☆

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