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漫画から学ぶことは多いよね

いやまぁ、漫画に限らないんだけど。


(※漫画のネタバレが含まれるので、作品名を見てネタバレは困ると思ったら回避してください)


最近、『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』を読んだ。
少年ジャンプ+にて、100話全てを無料開放中なのだ(※2021年5月7日まで)。
これは『僕のヒーローアカデミア』を原作とした公式派生漫画なのだけれど、最近このヒロアカ本家を20巻まで一気に読んで(7巻まで無料開放してる時にそのまま続きが気になって一気に買った。30巻まで出てるらしいけど、キリがよかったのでちょっと歯止めをかけている)、そのままついでとばかりに読んでみたら、いい意味で予想を裏切ってくれた。
本家の主人公である、デクくんもかっちゃんも不在。完全新キャラ3人が主人公としてストーリーが展開される。脚本も作画も別の作家。ともなれば、あまり期待せずに読むのが定石なのだけれど、これはこれで全然面白かった。普通に続きが気になるし、絵柄的な違和感もそこまで感じない。一部のキャラクターたちは本家からリンクしてこちらにも出てくるし、何故か本家主人公の担任であるイレイザーヘッドに至っては数話使った過去話がこちらで展開されていて、それは良いのかと逆にハラハラした。まぁ流石に、原作の堀越先生のOKが出た上でのことだろうけれど。

そんな『ヴィジランテ』の中で、『キャプテン・セレブリティ(C.C)』というキャラクターがいる。ヘッダー画像の、金髪の男だ。
なんやかんやあって、彼は日本で大活躍し、惜しまれながら故郷アメリカに帰ることになる。帰る前に、派手にイベントを開き、日本の皆とお別れ会をする話がある。50話だ。


で、↑読んでもらうと分かるんだけど、実はこの時、彼の奥さんは赤ちゃんを産んでいる。

初めての子どもに、浮かれるC.C。
時差も忘れて、皆の前で奥さんに電話をかける。まぁそもそも、多分あの月齢の赤ちゃんを前に、奥さんの睡眠環境は時差もクソもあったものではないのだけれど、いずれにせよタイミング悪く奥さんは『やっと子どもを寝かしつけたところで、ようやく自分も寝れる』というその瞬間。
そこに、電話口で『家族写真を皆に見せた』と言われ、怒り出す奥さん。

「ちょっとクリス!
 例の写真 人に見せてないでしょうね!?
 あたしがひどい頭してるアレ!」


焦るC.C。
奥さんは色々察し、それでも理解を示す。お世話になってる5人10人は仕方ないだろうと。しかし口ごもるC.Cに、パーティで調子に乗ったのだろうと考え、『最大限譲歩して50人までなら許してあげる』と言う。

まぁ結局、「……5万人」と告げられて、彼女は無言で電話をぶち切るのだけれど。



作品全体も好きな上で、私はこの話にとても感心した。
というか、これを『少年ジャンプ』作品としてやってくれたのは実は結構凄いことだなと思っている。

正直、この奥さんは割と見た目もあまり美人という感じでもなく、目つきが悪く、愛想も悪く、口調も厳しいといったキャラ設定だ。
だがここで「50人まで許す」と言える彼女は、ものすごく優しい人だと思う。

だって多分、多くの子持ち女性がこの話を読んで「あぁー……」ってなったと思う。写真について『ひどい頭』と奥さんは表現しているけれど、構図からしてあれは出産直後に撮った写真の可能性が高い。
頑張って新しい命が生まれた感動の瞬間で、パパとしては嬉々としてみんなに見せびらかしたい写真だろうとは思うのだけれど、肝心のママは人に見せてほしくないという話、実は結構多い。汗だくで、化粧もしてなくて、瀕死で顔色が悪く、何故か鼻だけはピンクで、髪はボサボサで、顔がむくんでいる、そんなドロドロの状態であることがデフォだからだ。
(尚、この後C.Cは「約束を破るつもりはなかったんだ」「ゴメン」などと言いながら奥さんに謝罪電話を入れているので、恐らく奥さんから事前に「人に見せるな」という釘差しはあったものだと思われる)

この一連のやりとりは、なんというか物凄く身近で、リアルだ。
でも、残念ながら『少年ジャンプ』のメインターゲットであるべき少年たち(まぁジャンプなので、もっと年齢も性別も今は幅広いだろうけれど)の想像の外にある世界で、多分彼らの何割かは将来C.Cと同じミスを起こしかねないだろうなというのが、多くの男性たちの現状だと思う。
ミス?ミスという言い方も違和感があるな。罪と言うべきかもしれない。これ、勿論気にしない女性もいるだろうけど、マジで気にする人からしたら離婚に発展しかねないほどの大罪になってくる。ただでさえ産後のズタボロメンタルにトドメを刺してくる案件。無理。

勿論このシーンは作品全体ではメインと言えるシーンではなく、次の戦闘の場へとストーリーを持っていく為の繋ぎでしかない。緊張が張り詰める戦闘と戦闘の間に挟まる緩衝材であり、「C.Cやっちゃったなぁw」と読者に苦笑されるだけのギャグシーンですらある。
「この作品の好きなシーンを挙げて」と言われて、この前後でC.Cがボロボロになりながら必死に戦ったシーンを挙げる人はいても、こっちを出す人はなかなかいないと思う。

ただ、この50話を読んだ何人かの男性が、将来自分がパパになった時に(そういやC.C怒られてたな)と思い出してくれるかもしれない。そこまで真剣に悩んでくれなくても、そのちょっとした記憶が、第二第三の浮かれC.Cを生み出さないよう、歯止めをかけてくれるかもしれない。
脚本の古橋先生はそこまで考えずにこのストーリーを入れたのかもしれないけれど、私は本当に感謝したいなと思っている。


やー、続き楽しみだな。
コーイチくんもめちゃめちゃ成長してるし、ポップちゃんもどんどん愛おしくなってくるし。本家も大好きだけど、派生作品がこんなに刺さるとは予想してなかった。最高。

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