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月を探し歩く
娘を保育園に迎えに行く時間は、もうすっかり暗い。冬の訪れを感じる。
まぁそれがまだ明るい夏の頃でも、白っぽい月が見えてることは結構あった。空を見上げた娘が「あっ!おつきさま!おつきさま見つけた!」と嬉しそうに声を上げるのは、いかにも幼児らしくて愛らしい。
自転車を漕ぎながら、建物の影から月が顔を出すごとに「おつきさま出てきたー!」と喜べるのは、大人から見れば一種の才能ですらある。まぶしいー。月も眩しいけど、君も眩しいぜ。
まぁそんなお月様も、常にそこにあるわけではない。周期的な位置の話なのか、雲の厚みのせいかはこちらの知識不足でわからないけれど、最近は月が見えないことが多かった。
「おつきさま、いないねぇ……」と言う娘に「雲の後ろに隠れちゃってるのかもねぇ」と返すくらいしかできないのがちょっと歯痒い。まぁ、これ以上私にできることはないんだけども。
と、いう日々を送る中で。
昨日は最寄駅を降りた先に、久々に大きな三日月があった。漫画に出てくるみたいに綺麗な弧を描いている。これは娘も喜びそう。
ただ、結構低めの位置だけどどうだろな。帰宅中、見えるかねぇ。
残念ながら、保育園からはうまく見えず。
幸い、自転車を漕いでる途中でちょっと見えた。自転車を止めて、娘に「ほら、お月様。見える?」と促す。みつけた、みつけた。嬉しいねぇ。
とはいえ久々に会えた月も、また自転車を漕ぎ出せばすぐ建物に隠れてしまう。私と娘の目線の高さも同じではないからなぁ、私から見えても娘から見えない時もあるけど、とりあえず見えそうなら教えてあげたい。なんとなく空に目をやりながら自転車を漕ぐ(周囲にも気をつけつつ)。こんなに空を見つめながら帰宅するの、いつぶりだろうね。
不思議な感じ。
ちょっと坂を登ったところで、月がよく見える位置があった。
なんとなくスマホを構えてみる。大きな月だから、撮れたりしないかなーなんて。……いや知ってます、ぼやぁっとした太いバナナみたいのがせいぜいであることは。こちらも元カメラ販売員ですのでね、一眼+三脚(ついでにできれば望遠レンズ)の組み合わせがないとキツいことくらいは理解してますよ。無理だとわかってても、その後見返すわけじゃない写真だとしても、0.0001%くらいの望みをかけてシャッターボタンを押したくなるあの現象、なんだろね。不思議よね。
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とかやってたら、自転車の後部座席に座ってた娘が「わたしも撮る!」とか言い出した。
何やらカメラをごそごそ用意する真似をして、月に向かって構える。口でパシャパシャ言いながら、シャッターを押す仕草。
『ぱしゃぱしゃ!上手に撮れた!』
『ほら見て、お月様いっぱいだよ!』
お月様がいっぱいなのはブレているのでは……?などと思わなくもないけれど、娘が楽しそうなのでよし。ママの真似がしたかっただけなのか、綺麗な月に『思わずシャッターを切りたくなる』心の動きがあったのかはわからないけれど。一緒にそういうことしてくれるの、楽しいねぇ、嬉しいねぇ。
良いお月見ができた。
また月探ししようね。
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