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ヒットの手がかり:使わない人を狙う

今日もご覧いただきありがとうございます。
商品がヒットした要因を独自に分析、その中から一つを、”ヒットのヒント”として解説します。
今日は少々前のものになりますが、日経新聞のオンラインでヒット商品として紹介されていた、アックスヤマザキの「子育てにちょうどいいミシン」を見ていきたいと思います。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC174N80X10C21A9000000/
(トップ画像引用元:https://www.amazon.co.jp/vdp/2ddb30833da248d0b8e2e74c42cfb9fd?product=B08PTP6NSF&ref=cm_sw_tw_r_ib_dt_C4kMnBcxd56jQ)

子育てにちょうどいいミシンについて

「子育てにちょうどいいミシン」は、ミシンメーカーであるアックスヤマザキが2020年に発売したミシンです。アックスヤマザキは他にも「TOKYO OTOKOミシン」などのヒット商品でメディアで見る機会が多いですね。さて、この「子育てにちょうどいいミシン」は、その名の通り、子育て世代のミシン初心者を狙った商品です。日経新聞の記事によると、2020年3月の発売から1年間で5万台を売り上げる大ヒット商品になっているようです。さらに、2023年2月には上位モデルの「子育てにもっといいミシン」を発売し、商品が好調に売れているのが垣間見えます。

子育てにもっといいミシン。いわゆるコンピューターミシンになっている。
(画像引用元:https://www.axeyamazaki.co.jp/products/kosodate_motto/)

ヒットの手がかり:使わない人を狙う

「子育てにちょうどいいミシン」がヒットした理由は、現在ミシンを使っていないユーザーをターゲットにしたことが挙げられます。
一般的には、今使っているユーザーの声を商品開発に反映させ、顧客の支持を得られる商品にしていくことが多いと思います。これは、新規顧客の取り込みよりも、既存のユーザーの離反を防ぎ、ロイヤルティを高める方が、コストが掛からず、売上に繋がると考えられているからです。

一方で、「今使っていないユーザーを狙う」というのも、理にかなっていることがあります。例えば、普及率がそれほど高くない商品カテゴリーにおいては、今の市場の中で考えるよりも、現在商品を使っていないユーザーの方が広がりの可能性を持っています。また、商品自体の普及率が高くても、市場シェアでは、圧倒的に自社が市場シェアNo.1でない限り、多くの業界で他社商品全体のユーザーの方が多くなります。つまり、自社商品を使っていない消費者の取り込みは、上手くいけば売上拡大の可能性が高い一方で、他社は既存顧客の維持を考えている、という場合に有効な戦略になり得るのです。
ミシン市場の場合、各社コンピューターミシンなどの高付加価値商品で既存のユーザーの買い上がりを狙っていたように思われます。自動で何でもできるという点で、初心者へのアプローチもしてはいますが、普段ミシンを使わない人からすると、それほどたくさんの機能がある価値は理解しにくいでしょう。言ってみれば、高機能のオーブンレンジの自動機能をなかなか使いきれないのと同じです。
その中で「子育てにちょうどいいミシン」は、現在ミシンを使っていないユーザーを取り込むことに焦点にすることで、最小限の機能に絞り、名前の通りわかりやすい訴求を行い、さらに価格も他社ボトルラインと同等の価格(現在は少し値上がりしているようです)を実現し、ユーザーの拡大に成功しています。

企画全体の一貫性

「子育てにちょうどいいミシン」のヒットの裏側にはターゲットに合わせた商品だけでなく、販路や販促の展開の一貫性もあります。忙しいお母さんに合わせたネット販路を中心とし、ミシンの使い方や、メンテナンスの仕方、財布や小物の作り方などを自社のYouTubeで紹介しています。このYouTubeも本体に貼られたQRコードから飛べるという徹底ぶりです。

本体QRコードからアックスヤマザキ公式YouTubeを見られる。
(画像引用元:https://amzn.asia/d/0TFAV91)

ユーザーが困らないだけでなく、ミシンで様々なものを作るサポートをし、成長させる仕組みにもなっています。
子育てにいろいろとお金がかかる中で、自分で作り、手入れすることで、出費を抑えて長く使う、そんなニーズに応える商品、価格、販促、販路の4P展開がされているからこその、ヒットと言えるでしょう。

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