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ヒットの法則:後出しジャンケンの法則

今日もご覧いただきありがとうございます。
今回は日経TRENDY2023年上半期ヒット大賞(家電部門)を受賞した、パナソニックのパーソナル食洗器「SOLOTA NP-TML1」を見ていきたいと思います。
(トップ画像引用元:https://panasonic.jp/dish/products/NP-TML1.html

ヒット商品がヒットした要因は様々あると思います。自分はこう考える、といった意見がありましたら、ぜひコメントに残していただければと思います。皆様のコメントによって、より多角的な分析に繋がると思います。

怒れる王者

パーソナル食洗器「SOLOTA NP-TML1」(以下SOLOTA)は2月にパナソニックが発売した、単身世帯向けの食洗器です。
商品の話に入る前に、少し食洗器の市場動向を振り返ってみます。
さて、家電量販店の店頭に行くと、取り付けに工事が必要な従来型の食洗器は、パナソニックの商品しかないことがわかります。かつては日立や東芝といった大手メーカーが商品を展開していましたが、2003年に100万台近くあった市場も2009年には14万台まで落ちこみ、市場が縮小する中でパナソニックが他メーカーを駆逐、独占していたのです。
しかし、2018年頃から、食洗器市場に新たな商品が登場します。SKジャパンやシロカ、アイリスオーヤマといったメーカーから小型の食洗器が登場してきました。

タンク式食洗器の例(引用元:https://kakakumag.com/seikatsu-kaden/?id=14694)

これらの小型の食洗器はタンク式食洗器と呼ばれ、本体のタンクに貯蔵された水を使うため、水道からの分岐栓の工事が不要で、手軽に置けるのが特徴です。対応食器点数は16点前後でおおよそ2~3人での使用に適しています。
パナソニックも2~3人サイズとして、水切りカゴサイズで置ける食洗器を販売していましたが、手軽さを差別ポイントとして牙城を切り崩された形です。今では、東芝の商品展開に加えて、ネット通販では多数の中国メーカーまでもが商品を展開して、一つの市場として成立しています。
独占で利益が取りやすい、せっかくの市場を奪われ、パナソニックはさぞお怒りだったことでしょう(笑)

後出しジャンケンの法則

さて、そんな中でパナソニックが発売したのが「SOLOTA」です。この商品、非常にパナソニックらしい商品の展開だと思います。
今回の「後出しジャンケンの法則」は、「市場の地位別戦略」のリーダーの戦略です。詳しい説明は別の機会に「ヒットの種」でしたいと思いますが、簡単に触れると「資源がたくさんあり、市場のシェアも高い企業は、他の企業の商品と同様の商品を出すことで、勝つことができる」というものです。仮に、同じ商品を扱う二つの会社があった場合、販促により多くのお金を掛けられ、かつ、知名度が高い企業の商品の方が、消費者に届く可能性が高いわけです。
SOLOTAはタンク式で設置に工事が不要で、他の小型食洗器と同様の特徴を持っています。2月17日の発売日には発表会の開催や、テレビ東京のWBS(ワールド・ビジネス・サテライト)の「トレンドたまご」のコーナーで登場、しっかり販促に力を入れていて、まさに王道通りの登場に関心したのを覚えています。
唯一、他の小型食洗器と異なるのは、ターゲットを単身世帯とし、対応食器数も6点と割り切っているところです。おそらく、これは単身世帯の増加の反映と、価格で有利な有象無象の中国メーカーとの戦いを避けたのだと思います。
この時、ターゲットにした20代の認知度が50%程度と低かったため、急遽「推しの子」とのコラボレーションを行い、キャンペーンを展開。こういったキャンペーンが打てるのも、資源が豊富なリーダー企業だからこそと言えるでしょう。

王者の定番的な法則

この「後出しジャンケンの法則」はリーダー企業では定番の法則です。
パナソニックは、SOLOTAだけでなく、はるか昔、松下電器の時代から、他社の商品を研究、より良いものにして発売していたことから”マネした電器”と揶揄されていました。
トヨタも、日産・エルグランドにはアルファード、ホンダ・ストリームにはウィッシュ、スバル・レガシィにはカルディナと、後出しジャンケンをしています。
ただし、現実の後出しジャンケンと違って、マーケティングの後出しジャンケンは必ず勝てるとは限りません(前述のカルディナもスバル・レガシィに勝てませんでした)。結局は、消費者が本質的に求めているのものを理解し、価値あるものでないと勝てません。
SOLOTAはこの上半期のヒットとなりましたが、ユーザーのレビューを見ていると「この分量なら手で洗っても変わらない」といった声も一定数あります。定番として生き残ることができるか、世の中の評価はこれからだと思います。

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