ヒット商品分析図鑑 #1 マジックテープ
1964年の東海道新幹線開通の際、客席のファスナー(留め具)に使われたことで一躍注目を浴びた「マジックテープ」。
そんなマジックテープが生まれたきっかけは、スイス人が登山中に見つけた「ある植物」でした。
【1】マジックテープについて
1. 商品名・サービス名
面ファスナー
※マジックテープは(株)クラレの商標
2. 発明年・発明者
1941年 研究開始 ジョルジュ・デ・メストラル(スイス人)
1951年 特許出願(1955年認定)
1952年 Velcro S.A. 設立・販売開始(スイス)
1960年 (株)クラレが販売開始(日本)
3. 概要
着脱が自在で、面で接着できるファスナー。日本で一般に「マジックテープ」として知られるが、これは実は(株)クラレの商標であり、アメリカでは現地の商標である「ベルクロ(Velcro)」として認知されている。
(出典:http://www.ogino-ss.co.jp/technology/)
【2】SCAMPER解説
マジックテープが生まれたきっかけは、1941年、スイスの電子工学者のジョルジュ・デ・メストラルが愛犬を連れてアルプス登山に出かけたことでした。
(出典:https://eco-and-health.at.webry.info/201903/article_1.html)
登山が終わると、彼はふと、自分の服や愛犬の毛に大量のゴボウの実がくっついていることに気づいたのです。
(出典:https://www.magic-tape.com/about/history.html)
「粘着成分があるわけでもないのに、なぜこんなにくっつくのだろう?」
と不思議に思った彼は、ゴボウの実を持ち帰り、顕微鏡で覗いてみることにしました。
すると、ゴボウの実の表面はフックのような無数の鉤(かぎ)で覆われていて、その鉤が服や犬の毛にしっかりと絡みついていたのです。
(出典:https://eco-and-health.at.webry.info/201903/article_1.html)
これを見た彼は「ゴボウの実が服に付着する原理を何かに応用できないか」と考え始めました。
そこで「ワンタッチで取り外しができる2枚の面ファスナー」を思いつき、研究を開始しました。
そして1950年代半ば、試行錯誤の末ついに、特殊ナイロン糸によるフックとループで構成された面ファスナーを発明したのです。
(出典:https://www.magic-tape.com/about/)
ジョルジュだけではこの面ファスナーの生産は難しく、事業化は困難と思われましたが、現地企業と共同で会社を立ち上げることに成功し、1955年に特許を取得します。
その後、この面ファスナーは「ベルクロ」という商標で各国に広まっていったのです。
※ベルクロはフランス語の velour(ビロード)+ crochet(鉤)の合成語
その5年後(1960年)、日本でも、日本ベルクロ(現クラレ)が「マジックテープ」の商標で面ファスナーの製造・販売を開始します。
販売開始当初はなかなか認知されずに苦労しましたが、1964年の東京オリンピックの開催に合わせて開業した「東海道新幹線」のヘッドレストカバーのファスナー部分に使われたことがきっかけで、一躍注目を浴びます。
(出典:https://www.nttcom.co.jp/comzine/no102/long_seller/index.html)
評価が高まった「マジックテープ」は、その後もおむつカバー・靴・手袋・鞄・アパレルな ど、多くの用途に採用されていきました。
(出典:https://www.nttcom.co.jp/comzine/no102/long_seller/index.html)
■マジックテープをSCAMPERに当てはめると
Adapt(適応する)
ゴボウの実が服に接着する特性をAdapt(適応)し、簡単に取り外し可能なマジックテープ(面ファスナー)が誕生
【3】補足
モノの固定を目的とした商品を比較すると、「面で固定可能」「繰り返し着脱可能」という2つの特徴をあわせ持った商品はマジックテープの他にはなく、マジックテープが当時から重宝されている理由がよく分かります。
また、マジックテープはNASAによって無重量の宇宙空間における壁や計器板などへの物の固定にも使われました。
なぜなら、当時の宇宙飛行士たちは、無重力の衛星軌道上でも物を固定でき、簡単に取り外しができる方法を求めており、そのニーズを満たすのにマジックテープがうってつけだったからです。
この事例は、他で使われていたマジックテープを「Put to other use(他の使い方をする)」した事例とも言えます。
【4】おわりに
ヒット商品分析図鑑では、今後も世の中のヒット商品をSCAMPERに当てはめて解説し、ヒットの法則に迫っていきます。
ヒット商品分析ラボは、「ヒット商品を分析することでヒットの法則を探究する」をテーマに様々な勉強会やワークショップを行なっています。
これからも良質な学びが得られる記事をたくさん投稿していきますので、興味がある人はぜひnoteのフォロー・スキをよろしくお願いします。
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