未発売映画劇場「サント対ネオ・ナチ」
サント映画完全チェック第37弾は、その名も「Misión suicida」
英語題だと「Suicide Mission」つまり「自殺任務」 ちょっとハードでカッコイイ感じのタイトルだけど、そう思うのはみな同じのようでIMDBで検索すると類似タイトルがバラバラ出てくるくらいのオリジナリティ(笑)
メキシコ公開が1973年4月。前にも書いたように1973年はメキシコでサント映画が6本も公開された特異年で、これはその3本めにあたる。
なぜか資料によっては1971年作品となっているものもあるのだが、製作会社が「Puerto Mex Films」とあるので、あるいはプエルトリコあたりの資本が入っていて、その関係で公開が前後したのかもしれない。
ちなみにスペインでは「Misión imposible」という、あからさまに類似品にご注意なタイトルで公開されている。もちろんトム・クルーズは出ていない。
サント御大の顔以外はほとんど映画本体と関係ないイラストばかり
ちなみにポスター左下の棒人間みたいなイラストは、これまたサントとは関係ないレスリー・チャータリス著の人気ミステリ・シリーズ「聖者(セイント)」のもので、ロジャー・ムーアの出世作であるTVドラマ「セイント/天国野郎」でもおなじみ。
サントとセイント、うーん、パクリだけどまぁいいのか。この映画よりもちょっと前の時代のものだが(1962年~1969年放送)
まぁこのへんのユルさは置いといて、ストーリーでも紹介しとこうか。
世界的に有名な整形外科医が謎の組織に誘拐され、彼に言うことをきかせるためにその娘までがさらわれる。捜査と救出に乗り出したインターポールは、サントと腕利き女性エージェントのアナを派遣する。
この時期にはすでに斜陽になっていた亜流007から一歩も出ていないようなストーリーで、アクションもサスペンスも大したことはない。
整形外科医を誘拐したのはネオ・ナチの組織で、その首魁の顔を変えて追求を逃れようというのが狙いなのだが、こんなのはそれこそ「スパイ大作戦」などでヤマほどあるので、驚くにはあたらない。もうちょっとオリジナリティはないもんかと思うし、脚本も破綻気味なのだが、そのへんはいかにもサント映画なので勘弁するしかないかな。
唯一の見せどころが、サントの相棒となる女性エージェントのアナ。サントに劣らぬ腕利きのようなのだが、演じるのは、本欄ではお馴染みのロリ―ナ・ベラスケス(Lorena Velázquez)
すでにサント映画では「サント対ゾンビ軍団」「サント対女吸血鬼軍団」「サント対魔の斧」「サント対魔女の館」に出演し、セミレギュラーといってもいい存在だが、意外にもサントとコンビを組む役は初めて。いつもは悪の女王的なポジションばかりだったからね。
元ミス・メキシコだそうで、映画デビューは1956年。サント映画ばかりでなく大量の映画に出演しており、メキシコを代表する妖艶女優。「SF怪物宇宙船」「女子レスラー」シリーズなどですっかり顔見知り(オレだけか) 1937年生まれだというから、この「サント対ネオ・ナチ」の時点では36歳の女盛り。
レザースーツやビキニ、ミニスカートにブーツといったファッションもばっちり着こなし、アクションも楽々こなす。魅力たっぷりですねぇ。
これまで日本ではまったく知られていなかったようだが、最近になってアマゾン・プライムでサント映画の「女吸血鬼軍団」と「ゾンビ軍団」、それに「怪物宇宙船」が配信されているので、彼女の妖力に魅せられたい方は是非ご覧いただきたい。映画そのものはともかく、彼女は一見の価値ありだから。知らんけど。
2022年現在、どうやら80歳を超えても現役女優としてご健在のようで、非常にめでたい。
というロリ―ナ・ベラスケス嬢をのぞくと、およそ見どころのない「サント対ネオ・ナチ」だが、ちょっとだけ持ち上げておくと、ラストはけっこうえぐい。
誘拐されてネオ・ナチ首魁の整形手術を強要された整形外科医が、恐ろしい復讐を施しているのだ。いやそりゃあんまりだろと言いたくなるね。
ということで、じつはこのオチに至るまでの本編のほとんどで、サントの敵がネオ・ナチであることはほとんど意味がない。べつにフツーのギャングでもかまわない気がするが。
総じてB級以下のヤスモノ映画の域を出ないんだが、サント映画としてはまぁ標準作かな。
さっきラストはまぁまぁと書いたが、じつはその後のエンドカットこそが最大の見せ場かもしれない。事件解決後、ベラスケス嬢演じるアナのもとをいつの間にか去ったサントが残していったのは……
アナへ愛を込めて(a Ana con amor)
シャレてるのはけっこうだが、次の任務のときにはどうする気だよ(笑)
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