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未発売映画劇場「サント対魔女の館」

誰も興味を持たない(笑)サント映画完全チェック、第18弾は「Atacan las brujas」英語題「The Witches Attack」あるいは「Santo Attacks the Witches」 メキシコでは1968年2月に公開されている。前作「サント対カルト集団」の公開から1カ月ちょっと後。相変わらずのスピードぶりだ。

毎晩のように悪夢にうなされる女性。死の世界からよみがえった魔女が率いる一団が、彼女をいけにえにしようと怪しげな屋敷に連れこむ。あわやというところで銀の仮面をかぶったサントが救いにくるという夢だ。悩んだ彼女は婚約者とともに、本物のサントに相談する。サントが調査すると、夢と同じ屋敷が実在することがわかるが……こうして、歴史の闇から復活してきた魔女とサントの闘いが始まる。

ネタ的には「サント対女吸血鬼軍団」あたりと同工異曲。じつはあちらで女吸血鬼のボスを演じていたロリ―ナ・ベラスケスが、ここでも魔女を演じているのだから雰囲気が似るのも当然だろう。彼女の妖艶さは、この映画のひとつの見どころではあるのだが。

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お馴染みのフェルナンド・オセスをはじめとする、黒づくめの服に身を固めた男3人以外はすべて美女揃いの魔女軍団は見応えがある。ただしサントと闘うのは黒服トリオだけで、ほかの美女たちは、きゃあきゃあ叫んでいるだけだが。

そもそもなんでこの魔女軍団が、ヒロインを狙うのか、いまひとつピンとこなかった。いやそれはたぶん映画のなかでは説明されているんだろう。セリフだけで

映画冒頭、メインタイトルの前に5分以上にわたって繰り広げられる彼女の悪夢のシーンで、延々とモノローグがかぶさるので、たぶんそれでほとんどが説明されているのだろうと好意的に解釈したいが、頼むよ、セリフだけで説明しないで「画」で語ってくれよ、映画なんだから。おまけにスペイン語だし(当然ながら字幕なし)

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けっきょくのところ、この映画はいまひとつ魅力に欠けるように感じたのだが、その原因のひとつが、魔女軍団に狙われるヒロインに魅力が欠けていたことかと思う。悪いけど。演じたのはマリア・ユージニア・サンマルティンという女優で、サント映画にはこれが初登場だが、清楚だとか清純なわけでもないし、かといって色っぽくもない、中途半端な感じだった(失礼)

ついでにいえば、ヒロインの婚約者(恋人かな?)もいまひとつ。演じるラモン・ブガリーニは「サント対ゾンビ軍団」にも出ていたようだが、チョビ髭小太りの風采は、まことに失敬な物言いだが、ヒロインの恋人にはどうしても見えない。最初は父娘の設定かと思ったくらいだよ。まったく適役じゃないぞ……でも待てよ、途中で魔女の術にハマって敵方に回るんだから、これはこれでいいのか

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演出もモタモタしていて切れ味が悪い。サント映画の見せどころである格闘シーンでも、カメラワークが悪いし、露出の統一が取れていないのか半分くらいは暗くてなんだかよく見えなかったりする。

監督はこれまで「サント対魔の斧」「サント対墓場博士」「サント対ブラコラ男爵」と3本に登板したホセ・ディアズ・モラレス。もっぱら怪奇モノを手がけているのだが、うーん、あんまり打率よくないなぁ。

で、肝心のサントはというと、可もなく不可もなしか。せっかく前々作の「サント対贋札偽造団」で枠を破った活躍ぶりを見せてくれたのに、その後は以前のサントに逆戻りした感がある。モノクロ映画に戻っちゃってるし。

このへんは、じつは製作順と公開順にネジレがあるのかもしれない。以前にまとめて撮っていた作品を、あとから公開したのかもしれないね。

ついでにいえば、サントの試合シーンもいまひとつ。これまでのサント映画とちがって、映画の後半にポンと挿入されているが(だから試合の間も、おいおいサントさん事件はどうしたのって言いたくなる)パッとしない。サントは新技のフライングヘッドバットまで繰り出すのに。

ま、そんなことはサント映画ではよくあること。そもそもこっちもそんなに大きな期待は持ってないからね(笑)

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じつはこの映画の最大の欠点は、別にある。

ここからは、ネタバレ御免で書いてしまおう。

恐怖の魔女軍団とサントの乱闘は数回あるのだが、問題はその終わり方。サントが何気なくあるポーズを取ると、なぜか魔女軍団が悲鳴を上げて逃げ出すのだ。それで乱闘を制してヒロインを救出するのだから、見ているこっちはややポカンとしてしまう。

そのポーズとは、直立し、両手を肩の高さでまっすぐ横に伸ばすもの。

はい、わかりましたね。かの吸血鬼ドラキュラ先生同様、この魔女軍団はどうやら十字架に弱いらしい。それにしても、十字架のポーズといっても、何しろサントの上半身は筋肉隆々。パッと見はバランスが十字架には見えにくいんだが……

ということで、見ているほうには魔女の弱点がおぼろげにわかるんだが、なかなかサントは気づかない。それでも最後には気づいたらしく、ラストの大乱闘の幕切れはなかなかに凄い(いやいろんな意味で)

多勢に無勢で押され気味のサント、いきなり囚われのヒロインを見捨てて逃げ出した……かと思いきや、突如として巨大な十字架をかついで戻ってくるのだ! これはビックリだ。いったいこんなもの、どこから持ってきた? いったいいつ用意したんだ?

そして巨大十字架をかざして魔女軍団に迫ると、あら不思議、彼ら彼女らは次々に炎上して全滅するのだ。ええっ、それでおしまいかよ。

このラスト、いままで見たサント映画のなかでも屈指の脱力系。これはこれで、まあいいのか(笑)

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今回もメキシコ製のDVD。ジャケットにはきちんとリージョンコード「1番および4番」が明記されているのだが、なぜかリージョン2番のわが家のプレイヤーでも平気で再生できるという便利さでした。

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