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未発売映画劇場「サント対国際犯罪団」

サント映画完全チェック第19弾。「El tesoro de Moctezuma」つまり「モクテスマの財宝」といったところ。

待ってました、サントとホルヘの名コンビ、「Agentes Secretos(シークレットエージェント)」が再登場する。

つまりは「サント対贋札偽造団(Operación 67)」の続編だ。1967年11月の前作からわずか8か月後の1968年7月に公開されているのだが、ずいぶん素早いじゃないか。前回書いたように、最初から続編を予定していたってことかね。

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カラーだよ!

などと感動するのは、せっかくシリーズ前作「サント対贋札偽造団」でカラーに昇格(?)したのに、その後の2作ではふたたびモノクロに降格(?)していたせいである。

続編らしく、前作でサント&ホルヘ組にやられた国際犯罪団がふたたび登場する。今回彼らが狙うのは、アステカ帝国の皇帝モクテスマの失われた財宝(タイトルになってるのはこれ)

悪の組織としてはずいぶんな方向転換じゃないか。いいのかキミたち、そんなことで。

とはいえ、秘宝発見のヒントとなる石像は博物館から強奪するし、邪魔になりそうなサントとホルヘを色仕掛けやら仕掛け爆弾やらで排除しようとするから、まあいいか

香港に本拠を置くくせになぜメキシコの秘宝を狙うのかも、何しろ国際的な組織だから、まあいいか

どうやら前作のラスト、ホルヘの腕の中で息絶えた組織の女幹部が遺した指輪が秘宝発見のカギらしい(そんな設定なかったと思うが) そうとは知らぬホルヘくん、問題の指輪をネックレスにして後生大事に身に着けていたりして、イロゴト担当のわりには純情なところもあるじゃないか。

サント&ホルヘ組の役割分担も前作どおりで、モテモテがホルヘで、荒事担当がサント。サントが悪党相手に苦戦している最中にも、敵の女スパイを介抱したりするあたり、ホルヘくんも徹底している。

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前回も書いたが、ホルヘ・リベラは本職の俳優さん。にもかかわらず、今回はバッチリとタッグマッチにまで駆り出される(そもそもサント&ホルヘはプロレスのタッグチームでもあるという設定なのだ)

イロゴトならともかく、さすがに試合では本職のサントにかなわない。そりゃそうだろう、映画ばかり見ていると忘れがちだが、サントは伝説の名レスラー、一級品なのだから。

だから試合シーンでは一目瞭然、サントのシーンはロングショットやフルサイズなのに、ホルヘが出てくると、とたんにクローズショットばかりになる。ロングショットではスタントを使っているのがバレバレだ(ちなみにタッグマッチの相手チームには名レスラーのレイ・メンドーサがいた。前にも出てたよな)

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前作もそうだったが、今回もサントはフツーに服を着ている

いや当たり前に聞こえるかもしれないが、これまでのほとんどのサント映画でのサントは、常にマスクにタイツにリングシューズにマントという、リングの正装で登場している。オープンカーを飛ばしていても、自宅でくつろいでいても、レストランで食事中も、秘密捜査中も、悪党とのアクションシーンでも、いつでも正装。常在戦場か。マントを脱ぐのは試合中だけだったんじゃないか(笑)

そんなサントの普段着姿(?)が見られるのは貴重だ(ホントかよ) 今回はマスクの白銀色とコーディネイトしたのか、グレイっぽいタートルネックとパンツで決めている。あ、似合うかどうかとかカッコイイかとかは、また別問題。

もちろん、マスクは絶対に脱がない。そりゃそうだよな、マスク脱いだら、誰だかわからなくなっちゃうもんね。

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(これ、スロベニア語版らしい)

ところでタイトルにもなっているアステカの皇帝モクテスマの財宝ってのは、ほんとうにある話なんだろうか。

結論からいうと、財宝の伝説はほんとうにある。16世紀にスペインのコルテスがアステカを征服した際に、皇帝の莫大な財宝が行方不明になったというのだ。スペイン人による財宝の目撃譚が残っており、その後多くの人々によって宝探しが行なわれたが、いまだ誰も発見におよんでいないそうだ。

日本ふうにいえば、武田信玄の隠し金山とか秀吉の財宝とか徳川埋蔵金みたいにポピュラーなものなのかな。

そんな財宝探しをメインに据えるとは、なかなかのアイデアとはいえるが、一方でそれじゃインディ・ジョーンズじゃん。このシリーズって、007ばりのスパイ・アクションじゃなかったのかよ。

前作「サント対贋札偽造団」とこの作品は、サント映画のなかでも特別なシリーズだと思っていたが(なにしろカラー映画だ)、どうやら買いかぶりだったみたい。この軸のぶれ具合は、まぎれもないサント映画でしたね。

【前回】サント対魔女の館    【次回】サント対ドラキュラの秘宝

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