#49. ユーモアを生み出さずにはいられない
刻一刻と、世界が不穏なニュースに飲み込まれていく。
ヨーロッパがあそこまで悲惨な状態になるとは、つい最近までだれ一人として予想していなかっただろうし、
欧州ばかりに留まらず、アジア・アメリカ・オーストラリア ...... 至るところで街から人の姿が消え、メディアではしきりに「国境封鎖」や「世界恐慌」など、歴史の教科書でしか見たことのないキーワードたちが飛び交っている。
(世界中の主要都市から人が姿を消した様子)
英語には、百年単位で年を数える century(世紀)という言葉があるが、それと同時に、十年単位で年を表す decade という単語もある(これは日本語にピッタリとした訳語がない)。
2020 年 1 月 1 日には、"the beginning of a new decade" (新しい十年の始まり) だとしてお祝いムード一色だったところが、いまではこんな風にまでなってしまった。
地震や火災・台風などの自然災害、あるいは経済危機などによって日本が終わりに近づいていく可能性は、きっとだれもが内心予期していたとは思うけれども、まさかこんな風にして突如現れた病原菌によって、世界がじわじわ終焉の方へ向かっていくとは、まるで予想だにしていなかった。
このまま行けばほぼ間違いなく、2020 年は、未来の歴史の教科書の年表に太字で書かれているはずである。
◇
だが違う。今日はそんな湿っぽい話がしたいのではない。
このような暗澹たる空気の中でこそ発揮される、われわれ人間のもつ強さの一つに「ユーモア」がある。
ここ数日間、暗いニュースのかたわらにはいつも、それに抗うようにして湧いた、人々のちょっとしたユーモアがあった。
まずイタリアでは:
(バルコニーに出て演奏したり、歌ったりして
士気を上げていこうと踏ん張るイタリアの人々)
ヨーロッパの人々が危機的な状況においてふと垣間見せる、こういう歌や小説・絵画などといった「アート」に対する信頼がぼくは大好きだ。
予防的観点から見れば、ベランダで合唱することなどとても得策とは言えないだろう。それでも彼らは、アートが人の心にはたらきかける大きな力を信じている。
一方スペインのとある町では:
(スペインのムルシアで目撃された、
ゴミ出しをするティラノサウルス)
(ムルシア警察公式アカウントから。おそらく
同一人物が警察に注意を受けている場面)
あまりの暗さに、恐竜がしびれを切らして出てきてしまったのだろうか。
警察からのツイートにある動画の方は、なぜか BGM がまるでディズニー映画のように壮大なのが、笑いを誘う。
そして Twitter では次のような遊び心が:
( Queen の Bohemian Rhapsody の替え歌。
Coronavirus Rhapsody の歌詞を書いた人)
Bohemian Rhapsody を聴いたことのある方は、彼のツイートのスレッドを辿って、ぜひ歌詞をフルで見てほしい。
この非常事態が笑い事でないのは重々承知だが、不覚にも爆笑してしまった。
(そしてそれを歌ってみた人)
替え歌をつくる人がいて、それを歌ってみる人がいて …… こんな風にユーモアが連鎖的に拡大していくのも、SNS の強みかもしれない。
またパロディといえば、Instagram であの世界的な絵本が:
(『ウォーリーをさがせ!』コロナ版)
写真は全部で 4 枚あるので、上の画像右端の矢印(>)を押して、中身まで覗いてみてほしい。
人ごみの中からウォーリーを探すのがいちばんの醍醐味であるはずが ...... 街から人が姿を消し、なんとそこにはウォーリーしかいない。
通常版の『ウォーリーをさがせ!』と変わらぬ笑顔で無人の街に繰り出しているウォーリーには、なんとも言えない哀愁が漂う。
◇
アメリカのコメディアン Milton Berle の言葉に次のようなものがある:
Laughter is an instant vacation.
笑いとは、つかの間の休息なのである。
危機的な状況であればあるほど、その危機に抗う術をぼくらは必要とする。
それはウィルスに関しての詳しい分析や注意喚起かもしれないし、アートや笑いなどといった「ユーモア」かもしれない。
正確なデータは、それを専門とする人たちに任せるとして、ぼくたち一般人にできるのは、暗く閉ざされた毎日の中に、ほんの少しのユーモアを探し見つけ出すことである。
逼迫した状態の中、ぼくたちには「笑い」という名の「休息」が必要なのではないだろうか。
そして、日常のどこかにユーモアを見つけられたら、それを(上の人たちのように)メディアですすんでシェアしていくこと。
ぼくらが拡げていくべきなのは、ウィルスではない、ユーモアなのだ。
◇
※続きはこちら(「それでも笑えれば」)を参照。
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