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#48. 「調子どう?」なんて聞いてくれるな


英語で話をする友だちに会ったときには、開口一番 "How are you?" とか "How are you doing?"、または "How is it going?" など、とにかくまずは、相手の調子を聞く質問を投げかけるのが英語流のあいさつと言えるが、

いつも「やあ」とか「どうも」みたいな、つぶやき程度の言葉しか吐かない日本人としては、この手のあいさつをされるとどうも、質問にしっかり答えなければという気持ちが湧いて、いまいちスムーズに進まない。ていうか、自分の調子がどうだとか、いつもそんなに考えてない。

だが、こういった質問型のあいさつに、心地の悪さを感じているのは日本人だけではないようだ。

以前、イギリス人の皮肉について取り上げた記事で出てきた Lucy さんを覚えているだろうか。

彼女が最近、20 Funny, Clever & Interesting Ways to Respond to 'What's up?'( 'What's up?' に対しての、可笑しい、賢い、また面白い返事のし方 20 )という興味深い動画をまた挙げたので、今回はそれを紹介しようと思う。

ここでテーマになっている "What's up?" も、最初に挙げた "How are you?" などと同じ「相手の調子たずねる系のあいさつ」の一種だが、ネイティヴの中にもこの質問を何度も何度もされるあまりに、飽き飽きしてしまう人がいるようだ。

聞かれ飽きたら、どのようなうまい切り返し方ができるのだろうか。

基本的にすべての切り返しに共通するのは、"What's up?" という質問を「調子はどう?」というあいさつではなく、別の意味の質問として「あえて」曲解して返事をするということだ。

イギリス人らしい皮肉たっぷりの返事をいくつか抜粋して見てみよう。


1. What's up?( ⇒ up ってなに?)

It's a two letter word indicating direction.
方向を示す 2 文字からなる単語ですね。
A preposition.
前置詞です。
The opposite of down.
down の反対ですよ。

「いやなにもそんな言い方しなくても ...... 」という、ひどく機嫌が悪そうな返事。できるだけそっけなく、「え、そういう答えを求めてたんじゃないんですか?」とでも言いたげな、冷めた顔で言うのがポイントだろう。


2. What's up?( ⇒ なにが上がってるの?)

My blood pressure, actually.
実は、わたしの血圧が。
My rent, my taxes, my bills ...
家賃、税金、それに諸々の請求額が ……
My serotonin levels after seeing you, my friend.
セロトニンの濃度だよ、友だちのあなたに会えたんだからね。

(※セロトニン:体内に存在する物質で、うつの原因ともされるドーパミン不足の調節に関与し、心身を安定させるように働く)

Not my salary, unfortunately.
お給料ではないんですよね、残念ながら。
My anxiety levels.
わたしの不安が。

これらはどれも、なかなかトンチが効いていてよい。いつかどれかを使えるように、だれかが "What's up?" とあいさつをしてくれないか、すこし楽しみになってくる。


3. What's up?( ⇒ 上になにがあるの?)

Aeroplanes, birds and clouds.
飛行機とか鳥とか雲じゃないですか。
The sky.
空がありますよ。
The ceiling.
天井がありますね。
A couple of planets.
いくつかの惑星があるでしょう。

おそらく二度と "What's up?" とあいさつされることはないだろう。


4. What's up?( ⇒ なにが起こってるの?)

Why, what did you hear?
どうして?あなたなにを聞いてたの?
Homelessness and childhood obesity.
ホームレスや小児肥満の問題ですよ。

なんのけなしにあいさつしてきた相手を急にドキッとさせる一言。


5. What's up?( ⇒ なにが終わったの?)

Your time on earth.
あなたがこの世にいる時間。

これは怖すぎる。銃口を向けて言うようなセリフ。これを言ってから引き金をひく映画のワンシーンが浮かんでくるが、ただのあいさつにそれはあまりにむごい仕打ちだ。

ここまで書いていて思ったことだが、やはりこういうのは文字で面白さを伝えようと思ってもなかなか難しいものがある。

読んでだいたいの内容は理解できたと思うので、ここまで読み進まれた方はぜひ、動画を観直していただきたい。

一言一言紹介している Lucy さんの表情や声のトーンなどに、そっけない感じやユーモアなどが込められていて、そこまで含めて初めて十分に楽しむことが可能になる。

いやそれにしても、ノン・ネイティヴは答えに困るし、ネイティヴですら飽き飽きしているというのなら、こんな質問型のあいさつ、そもそもなくしてしまえばいいのに、などと思うのはすこし、傲慢が過ぎるだろうか。

これでネイティヴの反感を買って、「ぼくがこの世にいられる時間」が突然 up してしまわないように、以後気をつけておくとしよう。


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