実写は怖いのでアニメを観る
テレビドラマの中の世界では、現実世界にいるような姿形をした人たちが、現実と同じく肉体と不可分に紐付いた声で、現実の人々に似せた話し方をしている。そうしたリアリティの持つ鈍器のような硬さに耐えられない時がある。
日常系のほのぼのしたドラマを見つけ、これなら心穏やかに観られるだろうと思っていた。大きな波乱もなく物語は進んでいたのだが、最終回付近で一度だけ、主人公が声を荒げるシーンがあった。時間にしてほんの数秒。身体が強張った。
コメディタッチの柔らかい作品ですら安心して観られないと悟った。もうテレビドラマは観たくないと思った。
元気な人なら何の問題にもならないレベルのこと。それでもある種の治り切らない傷には刺激が強い。
その点アニメは自分にとって安全性が高い。大声で叫ぶシーンはよくあるが、台詞をしっかり言うせいか、怒鳴り散らす、喚き散らすといった印象にはならないことが多い。理性を失った怒声に直面する無力感を呼び起こされずに済む。
アニメのデフォルメ性がクッションになって、不必要に心を乱すことなく物語を受け取ることができる。リアルじゃないから安心できる。
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