見出し画像

10月16日〜31日の詩(Nos. 170~182)

作品No. 170(10月20日)

四つ葉を摘めば
私だけの幸せが
かさついた手で枯れるだけ

ならば残しておきましょう
いつか見つけるあなたのために
根の付いたまま 生きたまま

そこに幸せがあることを
知っただけで十分ですから


作品No. 171(10月20日)「誰かに助けてほしかった


作品No. 172(10月21日)

私は正しくないのです
正しくないものを好きになり
正しくない思想を宣い
正しくない欲を抱きます

どこのコロニーにも棲めず
糧を掠め取る盗人です

己に付けた名前すら
思い込みでしかなくて
正しくないという刻印すら
勘違いに過ぎません

正しくもない
間違いですらない
ただの漂流物なのです


作品No. 173(10月23日)

美しい獣に仕えていた

高飛車で 注文が多くて 脆い宝石
無垢な魔性は罪の大地から浮いている

彼女を基点にコンパスは回る
ずれて重なる 愛し子の軌跡

彼女を満たせる喜びも
滑らかな毛並みを梳く栄誉も
エデンの園で賜った恩寵

耳を閉じれば
掻き集めた楽園の欠片が
優しく目を潰し軋む


作品No. 174(10月24日)

罪の火花が導火線を追ってくる
煉獄を欲し歩を緩めれば
炎はじりじりと僕を待つ
窒息しまた走り出す

宛先違いの賜り物を
あるべき場所に返すのだ
決して汚して捨ててはならない

走り続ける
逃げ続ける
使命を全うするために
君に償いを届けるために


作品No. 175(10月25日)

母の洗ったタッパーのぬめり
萎れたスポンジで今夜の脂に混ぜ
老いの苦さを密かに流す

遠い聖人が言っていた
飢えた敵には施しなさい
それは灼熱の熾となり
彼の頭に積まれてゆくから

聖人の教えを逆手に取った
この遠回しな復讐は
私をも灼いてしまうでしょう


作品No. 176(10月26日)

舞い上げた埃は光の在り処を示す


作品No. 177(10月26日)「裏方は一人サーカス団


作品No. 178(10月28日)

飢えた獣より野蛮なのは祈りを忘れた人間


作品No. 179(10月28日)

「敵」にも寄り添うこの情は
時に致命的だと知っている

軟弱者と笑われようとも
棘の鎧を着込むより
心臓を晒して生きていたい

正義だなんて言うつもりはない
パパママ仲良くしてと泣き
喧嘩を止めようとする子と同じ

争いの中で生きられないから
平和は僕の生存戦略


作品No. 180(10月28日)

天使が差し出す錠剤を
素直に胡乱に呑み下せば良かったものを
獣の鼻が無闇に利いて
逡巡のうちに糖衣は剥げた
吐き出す苦い唾液と救済

薬か毒か
治癒か死か
博打の参加権は失われた

深遠な張りぼての天使は去った
肥大した理性を持て余す僕は
究極理論の神を探し続ける


作品No. 181(10月30日)

悪臭を撒き散らさないため
叩き潰されないため
自らミイラになったのに
やっぱり生きたくなってしまった
コンクリートの上の
灰色の雨蛙

忘れた色を歌う
強張った喉で歌う
まだ生きている
望まれた色になれなくとも
階段の隅でまだ生きている


作品No. 182(10月31日)

どちらの「らしさ」も拒絶して
どちらでもなさに囚われた

らしくなさを得るために
細い喉を潰したら
言葉は届かなくなった

本当は好きだよ
頼りないこの声が

ちぐはぐでいい
全部のパーツがニュートラルじゃなくても
核は両極のどちらにもいない

自分のカタチは自分で決める

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?