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仲間にしか伝わらない

 抗議の言葉は本当に伝えたい相手には伝わらない。

 変わってほしい相手は変わりたいと願っていない。変わらないために耳を塞ぎ、あなたの口を塞ぐ。

 あなたは鏡を掲げて相手の醜い部分を見せようとしている。だが相手の防衛本能が像を歪める。鏡を見ない理由も、醜さを美しさに変換する論理も、いくらでもひねり出すことができる。思考は気付いていない、自らが感情の奴隷だということに。

 相手は傷を隠している。自分自身から隠している。意識から傷を消し去り、なかったことにするために、あなたの手にある鏡を砕かなければならない。

 相手が膿んだ傷を直視して消毒しようとしない限り、あなたの訴えは聞き入れられない。しかしあなたは相手を押さえつけて無理に治療することはできない。

 言葉は伝わる人にしか伝わらない。ならば伝わる相手にだけ伝えればいい。

 一人の言葉で理不尽を変えることはできなくても、仲間を力付けることはできる。一緒に生き延びることはできる。

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