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5月11日~20日の詩(Nos. 34~45)

作品No. 34(5月11日)

覚悟を決め
逃げ道を断ち
在るべき場所に
己の全てをかけて立つ

その人の瞳は
凛と美しい


作品No. 35(5月12日)

相手の課題を
我が事として背負う
それは一見優しくて
深く美しい愛のよう

でもそんなこと頼んでない

あなたは一人で張り切って
あなたの思う正解に
私を引きずり突き進む
嫌がる私を叱咤して

私はそんなに無力でしょうか
自分の歩む道さえも
自分で決められない程に

どうか私を信じてください


作品No. 36(5月13日)

心の声は
小さな小さな囁き声
「べき」で殺せてしまえるほどに

声の死骸は
腐り、溶け、
すべてを呪い、膿ませる傷

いつでも耳を澄ましていて
聞こえなかったら立ち止まり
怖がらないでいいんだよって
子供みたいに抱き止めて


作品No. 37(5月14日)

繊細で優しい人は
傷付き
疲弊し
挫けてしまうこともある

それでも優しさを捨てない強さを
どうか


作品No. 38(5月14日)

悩んでいるとき

手に負えないなら助けを求めろ

疲れているなら仕切り直せ

どちらでもないなら甘えで逃げだ
ぐるぐる回って酔って吐いて
自棄の快感
大口開ける雛

悩むくらいなら考えろ
現在地を割り出し
行き先を胸の奥に尋ね
道筋を計算しろ

あとはひたすら進むだけ

君にはそうする力がある


作品No. 39(5月15日)

貴方が
大切な人に己を捧げ
貴方の大切な人が
貴方に己を捧げたら
螺旋の先は楽園か奈落か

貴方が
貴方を大切に思ってくれる
大切な人のために命を捨てたら
大切な人を奪われた彼に
希望は残るのか

自分一人も幸せにできない者に
誰かを幸せにできるものか

自己犠牲は最後の足掻きに取っておけ


作品No. 40(5月16日)

綺麗な綺麗なお人形
ガラスの棺にお行儀良く収まり
糸に引かれてひらひら踊る

空っぽのお人形
嘲笑われた右脚切って
にこにこ笑ってかたかた踊る

糸の切れたお人形
心を封じた鍵が壊れて
生温かい涙に汚く濡れて
ようやく人になったとさ


作品No. 41(5月17日)

おかえり

頑張ったね

ごめんね
家で過ごしたかったよね
傍にいてほしかったよね

君はよく闘った
疲れて眠っているみたい

さよならが来るのは
どうして
このままずっと一緒でいいのに

でももう僕はこの手を離すよ
君がゆっくり眠れるように

ありがとう
共に生きた時
幸せだった


作品No. 42(5月18日)

誰かの助けになりたかった

世界をより良くしたかった

本当に救いたかったのは自分自身


作品No. 43(5月18日)

宿無しのヤドカリ
誰より堅固な家をと願った

彼は妻子を引き連れて
作った新居に意気揚々

けれど暮らしてみたならば
光の射さない澱んだ洞穴
こんなはずではなかったと
力任せに壁を打つ

妻と子供は海原へ逃げ
移ろう波に身を任せ

肥大した彼は洞窟に囚われ

海底に響く慟哭の打音
彼はひとり


作品No. 44(5月19日)

僕に目を付けた天使
眉根を寄せて

心配してるの
大丈夫なの?
そんなの変よ
やめときなさい
こっちのほうが良いわ

真白い翼で僕を包み
目隠し
拘束する

僕の感情
意思
感受性
柔らかな羽根に切り刻まれ

天使が畏れる見えない神は
他の天使の視線に乗って
天使を脅し
駆り立てる


作品No. 45(5月20日)

僕が受け取った善いものを渡そう
同じ屈折を抱えたあなたに
悪いものは誰にも渡さず
僕の体温で蒸気に変えよう
まあるい虹のバトンだけ
巡り渡ってゆくように

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