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ずっと人間になりたかった。 違う。人間にならなければいけないと思っていたんだ。 自…
小説『望郷の形』、完結しました。お読みいただいた方は本当にありがとうございました。 我…
〈最初へ〉 〈前へ〉 縦に長い直方体の台の上に敷き詰めた小石。その上に純白の卵をそっと…
〈最初へ〉 〈前へ〉 「こんな時ですが、ご依頼の話をしましょうか」 肩を落としたシーさ…
〈最初へ〉 〈前へ〉 出立は明日ということになった。 スバルは兄の部屋から動こうとせ…
〈最初へ〉 〈前へ〉 「スバルさん」 シーさんが静かに呼びかけた。 「満潮時の道を渡っ…
〈最初へ〉 〈前へ〉 ごろごろと岩の露出した山道をシーさんの先導で上る。 こうしていると、神木に会うために山頂へ通っていた日々を思い出す。平地よりもずっと大きく感じられる重力。この重さを感じるために汗を流し、息を切らして身体を上へ上へと運んでいたのかもしれない。私の足に当たって転がり落ちていく石の高揚を感じる。私は石になりたかったのだ。みっしりと充実した実体として、古木の懐に抱かれていたかった。 「どうぞ」 いつの間にか建物の前に着いていた。ガラスの扉を押し開け
〈最初へ〉 〈前へ〉 眩い海岸線に沿って、島の中心よりもやや奥にある丘へ向かって歩く。…
〈最初へ〉 〈前へ〉 ノックの音に目覚めてドアを開ける。訪ねてきたのはフリフリのエプロ…
〈最初へ〉 〈前へ〉 草原に据えられたカフェテーブルを、てんでばらばらな格好の十数人が…
〈最初へ〉 〈前へ〉 眠れない闇が重くて、夜明け前に抜け出した。 人工の灯りを持たな…
〈最初へ〉 〈前へ〉 宿に滞在していたのは私だけではなかった。隣の部屋にいたのは蓑虫状…
〈最初へ〉 〈前へ〉 骨を手の中で滑らせながら、硬いベッドの上に日がな一日座っていた。…
〈最初へ〉 〈前へ〉 「君はあまり驚かないね」 まだ少女と言ってもいい年頃の主人が言う。 「何に?」 考えもせずに訊き返した後で、普通の人なら奇異に思うようなことならいくらでもあることに気付く。例えば宿の一階にあるこの喫茶室に集う住民たちの見慣れない服装あるいは肌の彩色、ピアスや木の葉や小石の飾り、椅子という概念を知らないかのような寛ぎ方。例えば私の前で湯気を立てている泥水のようなほのかに甘い飲み物。例えば作りかけの人形のように一切の体毛の無い店主の顔。 「ここ