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カンボジアでバス移動(カンボジア・ベトナム徘徊記③)

 さて、前回・前々回とフライトレビューのような記事を書いてきたが、今日もまた移動関連の記事を書くことにする。今度はカンボジアでのバス移動の話である。シェムリアップまで飛行機で行ったから帰りは別の交通手段にしようというわけだ。最初は船に乗ろうと思っていたのだが、どうもここ1年くらいは運行されていないようなのでバスに乗ることにした。所要時間はおよそ6時間である。
 情報収集のために海外安全情報を見てみたら「カンボジア国内では、観光客が公共交通手段を使ってスムーズに移動できるルートは、首都プノンペンからシェムリアップ、シアヌークビルを結ぶ空路やバス路線などに限られ、他の地域への移動手段はまだ発達していません。シェムリアップなど地方を結ぶ交通手段の多くは、古いバスやワゴン車が多く、整備不良車も少なくありません。事故や故障の可能性がありますので、ご利用される場合には、バス会社の選択に十分注意が必要です。また、場合によっては、旅行会社などを通じた運転手付きの車両を利用することもご検討ください。」と書いてある。ふむふむ、シェムリアップとプノンペンの間はスムーズに移動できるようであるが、バス会社の選択には注意が必要だそうだ。

まずはCambodia Post Vip Vanである。

長距離バス①:カンボジア国内線

 まずはシェムリアップからプノンペンまでの移動である。バス会社はいくらでもあるので好きなところを選べばいい。いや、外務省のお言葉に従うなら注意して選ぶべきである。バスの検索は簡単で、「Check My Bus」というサイトで出発地・目的地・日付を指定すればどこの会社がどんな時間にバスを運行しているか簡単に知ることができる。ちなみにCheck My BusからBook My Busというサイトに遷移して、そのまま予約できるのでとっても大変非常にすごく便利である。

 ただ、バスも安ければいいというものではない。あまりにも安いバスだとスタッフに英語が通じなかったり、車内が素敵なことになっていたりするようなので注意が必要だ。私はいいなと思う会社を見つけたらその会社を検索して、英語のサイトが出てくるか確かめることにしている。ホームページが英語対応なら外国人が使うことを想定しているということだし、そうでなければカンボジア人を相手にしている会社であるという指標になるから、英語サイトがある会社を選べば間違いないと思う。
 今回私が選んだのは「Cambodia Post VIP Van」である。名前からわかる通り、カンボジアの郵便局がやっているバス会社だ。郵便局がなぜバス事業を営んでいるのか?と思ったのだが、郵便局が郵便物を運ぶついでに人を運んでいるのである。確か料金は10.5ドル、所要時間は6時間と表示されていたのでこのバスを予約することにした。だいたいこれくらいが外国人向けのバスの最低ラインで、色々なところでオススメされているGiant Ibisだと18ドルくらいになると思う。8ドルと言えば1200円なので、節約しようというわけである。お金は大事だよ~というわけだ。それにしても円安もいい加減にしてほしいものである。ま、おかげで私の持っている株の株価はうなぎのぼりなのだが。
 乗車地はもちろん郵便局である。スーツケースもあったのでGrabで向かうことにした。本当にGrabは便利である。一刻も早く日本にも導入してほしいものだ。郵便局についてバスを予約したことを伝えると、建物の中で待っているように指示された。水が配られるか聞いたらないとのことなので郵便局内で購入することにして、いくらか聞いたらなんと驚きの1000リエルである。1リエルは0.036円なので500mLの水を36円で買えたことになる。シェムリアップの観光地価格にうんざりしていたところだったので予想外に安くて一安心である。だいたいホテルの部屋に水があるのでそれを飲んでいるのだが、たまに水が足りなくなることがあるのだ。

車種はハイエースである。お世辞にもVIP感はない。

 しばらくしたらバスに乗るように言われたので乗り込むことにした。バスとは言っても長距離バスと言われて想像するようなものではなくて、ごく普通のハイエースである。後ろにスーツケースを積んでもらって、貴重品を入れたリュックサックは手元に置いておくことにした。日本のバスなら丸ごと全部後ろに積んでしまうところだが、その辺は気を遣っておいて損はないと思う。
 バスは指定席で、好みの席を事前に予約することができる。私は助手席を指定した。え?と思われるかもしれないが、このバスは助手席を予約できるのである。後ろの席を指定するより足元が広いだろうと見越してのことだったのだが、この判断は正解だったようだ。リュックサックを足元においても足を伸ばすことができ、窮屈な思いをすることはなかった。前がよく見えるので色々と面白いものを見ることができるというのもいいところである。
 そう、カンボジアのバスでは色々と面白いものを見ることができるのだ。右側のドアが全開のまま走っているミニバン、リアハッチが全開にして荷物を詰め込んでいるハイエース、屋根の二倍くらいまで荷物を積んでいるトラック、4人乗りのスクーターなどを30分に一度くらいの頻度で見ることができて退屈することなく楽しむことができた。よく考えたらこんな危険なものを楽しんでいる場合ではないのだが、東南アジアはそういうものだと思っているのでむしろ楽しいのである。

なぜ落ちないのか不思議である。

 ただ、助手席が怖いなと思う場面はもちろんあって、とにかく運転が荒いのがカンボジアの特徴だ。運転が荒いのはカンボジアに限ったことではないのだが、今回のドライバーは輪をかけて運転が荒かった。常に100キロくらいでかっ飛ばし、前の車に追いついたら舌打ちしながら躊躇することなく追い越しをかけ、二重追い越しもためらうことなく連発していく。追い越せないならクラクションで威嚇しながら走る様子は自分が名古屋にいるのではないかと錯覚させてくれるものだった。車間距離という概念もないようで80キロで走っていようが100キロで走っていようが車間距離は20m、といった具合である。教習所に行ったときに「車間距離は速さの数字部分と同じ。80キロなら80m、100キロなら100m」と言われたのだが、ここでの正解はいつでもどこでも車間距離は20mというものであるらしい。周りも似たような運転なのでなぜ事故にならないのか不思議に思っていたのだが、走って行くとしっかり車同士が正面衝突していた。エアバッグが出ていたし、フロント部分がぶっ壊れていたので衝撃の大きさが伺える。外務省が述べていたのはつまりそういうことであろう。
 今回の便は朝9時発で午後3時着というものだったので、間で昼食休憩が入った。観光客向けのぼったくりレストランに連行され、割高なものを食べさせられるタイプの昼食休憩である。食べたくないならバスの中で時間を潰していればいいようだが、おなかが減ったのでここで食べることにした。何となくノリで注文したらラーメンのような何かが提供された。これ以外にも1、2時間に一度くらいの頻度で休憩が入るし、どうしてもトイレに行きたくなったらその辺で止めてくれるだろう。このあたりのことはあまり心配しなくてもいいと思う。休憩時間は決まっていなくて、何となくみんなが満足したら休憩終わり、というくらいだった。昼食をのんびり食べていたら「そろそろ行くぞ」と声をかけられたが、置いて行かれるということはないと思う。

謎のラーメンらしきもの、4ドル。

 カンボジアのバスは遅延する、と言っている人が多いのだが私が乗ったバスはなんと30分も早着した。考えてみれば当たり前で、速度制限というものを一切守らず暴走を続けてきたのでむしろ早着しないとおかしいくらいである。到着地は例によって郵便局だった。郵便局からホテルまでまたGrabで移動して、この日のバス移動は完結である。とても簡単で、日本で乗るのと大して変わらなかった。

長距離バス移動②:国際線

 さて、次は国際線である。プノンペンからホーチミンまでバスで移動しようというわけだ。所要時間は例によって6時間ほど、ただし本当に6時間で済むとは考えない方が良いと思う。国内線の方は暴走運転手のおかげで大幅な時間短縮が実現したが、こちらは大型バス(日本の観光バスと同じである)での移動になるので時速100キロでかっ飛ばすということができないからである。と思ったら時速70キロでかっ飛ばしていたのでやっていることは大して変わらなかったのだが、国境を通過しなければいけないのでそこでもまた時間がかかる。
 予約は例によってCheck My Busから取ることにした。別に当日バス会社に突撃してチケットを買えばいい話ではあるし満席ということもそうそうないとは思うのだが、訪問がちょうど春節の時期と重なっていたので念のため予約しておくことにしたのである。確か25ドルくらいだったと思う。20ドルくらいのバスもあったのだが、こちらは英語版のサイトが見つからなかったのでやめておくことにした。今回のバス会社の名前は「Long Phuong Cambodia」である。11時にプノンペンを出る便があったのでそれに乗ることにした。朝8時半というのもあったのだが、早起きが嫌いなので1本後の便にすることにしたのである。

今度は観光バスである。

 指定された時刻に指定されたバス乗り場に行ってみたら、バスターミナルではなくその会社の営業所だった。営業所の目の前に大型バスが止めてあって、時間になったらそれに乗り込んで出発である。営業所のお姉さんがバスの中で水を配ると言っていたのだが結局配られなかった。買ったところで格安なのであまり心配する必要もない。こんなことでいちいち怒っていたら海外旅行なんてやっていられないのである。
 バスは定刻通りに出発し、市内を抜けて田舎へと走って行く。もちろん運転が丁寧などということはなくて、近くの車をクラクションで威嚇しながら走って行くのである。途中、日本からのODAで作られた「つばさ橋」という橋を渡り、バスは快調に暴走を続けた。走行ではなく暴走である。前の車を追い越しながら対向車をクラクションで威嚇するのはどうかと思うのだが、これがカンボジアのルールらしい。
 この時の乗客は声と態度のデカい隣の某赤い国の人がほとんどだった。前世はアブラゼミかガマガエルか、はたまた右翼の街宣車かというくらい声が大きいのは勘弁してほしいものである。態度も大きいのでひじ掛けの上に後ろの席から足が伸びてきたりする。肘で押し返すとしばらく引っ込むがまた出てくるので押し返して、の繰り返しである。こういう人々を見ると欧米人や日本人のマナーの良さは際立つし、海外旅行の時にはある意味でその国を代表する立場になるということを実感する。

カンボジアとベトナムの真ん中。

 このバスは国際線なので、途中で出入国をすることになる。そのため、スタッフが出発前にパスポートを回収しに来る。他人にパスポートを渡すというのはあまり心地のいいものではないが仕方ない。ちなみにこのパスポートはカンボジアを出国するときにまとめて出国管理官に渡されるようになっている。そのあとバス会社のスタッフがパスポートを持ってベトナムの入国管理官に渡してくれて、その入国管理官からカンボジアの出国印とベトナムの入国印が押されたパスポートが返却されるというわけだ。ベトナム入国の時に「アレ、パスポート返ってこないの?」と思いながら入国審査官の前に進んでみたらパスポートを返されたのだが、説明くらいはしてほしいものである。

カンボジアに入国。

 私はカンボジア出国の時に少しトラブルになったので説明しておこう。ことの発端はカンボジアに入国したときにパスポートにホチキス止めされた入国カードに入国管理官がスタンプを押していないことだった。入国後にパスポートに入国印が押されていて、入国カードに「T」のようなサインがされていたのは確認したのだが、どうもサインではなくスタンプがなければいけなかったらしい。そして、出国するときに「スタンプがないから10ドル払え」と言われたのだ。おお、これが賄賂というヤツである。もちろん払うわけがないのでバトルを開始することにした。
 まず私が言ったのは「そもそもスタンプが必要などと言う説明は受けていない」ということである。それでも相手は「10dollar」などと言っているので「じゃあ、ここにスタンプがないのは誰の責任だ?スタンプを押すのはイミグレの仕事だろ。悪いのはイミグレのスタッフであって私の責任ではない」とまくし立てたら「OK、オレがスタンプを押してやるよ」ということでいいことになった。意外と簡単にバトルが終わってしまってつまらなかったのだが、何はともあれカンボジアを出国することができた。しかし、出国で賄賂を要求するのはその国のイメージを最後に下げることになるのであまり賢いとは思えないのだが、さすが汚職ランキング156位の国である。というわけで、これからカンボジアを訪れる人は必ず入国したときに入国カードにスタンプが押されているか確認することをオススメする。周りの中国人は誰もこうなっていなかったので、日本人がカモにされているのかもしれない。こういうのは一人一人がきちんと断って、日本人はカモではないというのを腐敗役人に理解させるのが重要である。
 ベトナムに入った途端に路面が荒くなったのだが(私は意外に思ったのだが、カンボジアは外国人が最初に目にするところは綺麗に整備しているのだ)、バスはカンボジア国内と変わらないスピードで強引な運転を続けていた。どう考えてもこのバスだけクラクションを鳴らす頻度が他の車の10倍くらいあって、1.5倍くらいの速度で走っているのである。どうもベトナムの方が運転は穏やからしいのだが、この運転手だけはそうではなくて無理な追い越しと割り込みを繰り返しながら走っていた。この運転手だけがそうなのか、それともカンボジア人がみんなそうなのかは知らないがひどい運転だった。
 バスを下ろされた場所もチケットに書いてあった場所と全く違う場所だったのだが、どうも中国人の泊まるホテルの近くで降ろしたということらしい。つくづく、どうしようもない運転手である。ちなみにこのトンデモ運転手は中国語はできるが英語はできないらしく、私に向かって中国語で話しかけてきた。日本のパスポートを持っているのに、である。腹が立ったので「I’m not Chinese, I’m Japanese. Please speak in English or Japanese.」と言っておいたらそのあとから露骨に機嫌が悪くなっていた。つくづくどうしようもないドライバーである。

ホーチミンに到着。綺麗な街である。

 そんなわけでカンボジアのバス移動を記録してきたが、安い移動手段としては重宝するものだと思う。同じ区間を飛行機で行こうとしたら値段が5倍くらいになるので安さを重視する人や東南アジアを肌で感じたい人にはオススメの移動手段である。ただし、助手席に乗るのはやめておこう。

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