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アンドリュー・ジョーンズさん。
メジャーリーグの歴史に残る、外野手。

かの有名なイチローさんも、
彼のプレイが印象に残っているとのことです。

(ここから引用)

『「この人のセンターの守備は最高ですよ。
(守備の名手といわれた)
トリー・ハンターよりも
美しかったかもしれないですね。

(中略)

その守備について
「遊んでいるように見えるんですよ、
ふざけているように見える。

でもそれって、
余裕ないとできないんだよね。
こんな守備はなかなか
出てこないですよ」と言わしめた。』

(引用終わり)

※『イチロー氏が「この人のセンターの守備は
最高。美しい」とした選手は? プロスピA』↓

https://news.yahoo.co.jp/articles/3add1d3254e128f0d68da34630c9ee9fee8cb850

ヤンキースでも、イチローさんとは
2012年に一緒にプレイしています。

メジャーで10年連続ゴールドグラブ受賞…。
素晴らしい守備。かつ、よく打つ。
2005年から二年連続「40本塁打・100打点」。

実は、彼は日本でもプレイしています。
2013年・2014年、楽天に在籍していました
(当時の監督は、星野仙一さん)。
楽天ファンの方にも、馴染みがあるのでは…。

彼のメジャーでのニックネームは
「スマイルボーイ」そして、
「ザ・キュラソー・キッド」など。

そう、彼は「キュラソー島」の出身です。
本記事では、
彼の故郷のこの島について、書いてみます。

「…お酒のキュラソーは知っているけど
島がどこにあるのかは、知らない」

そんな人が多いかもしれません。

この島は、カリブ海の島です。
北米と南米との間。
南米ベネズエラの北、約六十キロの沖合。
面積444キロ平方メートル。
日本で言えば「種子島」くらいの広さです。
ここに、約十五万人の人が住んでいる。

その名前を世界的に有名にしているのは
「キュラソー酒」と呼ばれるお酒。
カクテルなどにも、よく使われます。

これはリキュールの一種でして、
キュラソー酒はスピリッツやブランデーに
「オレンジの果皮」の香りと糖分を
混ぜて作られています。

十七世紀後半に、この島のオレンジを使って
オランダで作られたそうです。

…えっ、なぜに、オランダ?

はい、十七世紀は「オランダの世紀」
この時代、オランダは「世界進出」していて
覇権を握っていたんですね。
海外の各地に、植民地を持っていた。

遠く日本にまでやってきて、
「鎖国下」の日本と、長崎の出島で
貿易をしていた
のは有名な話です。

このオランダ、カリブ海にも
勢力を伸ばしていました。
…当然、このキュラソー島にも。

元々、スペインが占領していましたが
十七世紀前半に、オランダが奪う。
その後、オランダはイギリスなどに
徐々に覇権を奪われていくのですが、
この島は、手放しませんでした↓

1954年「オランダ領アンティル」成立。
カリブ海の「小アンティル諸島」と
呼ばれる島々が作った自治領です。

全部で、六島。

◎アルバ島、ボネール島、キュラソー島
◎シント・マールテン島、
シント・ユースタティウス島、サバ島

ABC諸島、SSS諸島と呼ばれていました。

このうちのアルバ島は、
1986年に、単独の自治領として分離。
2010年に、オランダ領アンティルは解体し、
キュラソー島とシント・マールテン島も
単独の自治領として、独立しました。
残りの三島は、オランダ本国に編入。

ということで、
現在(2022年時点)の「オランダ王国」は、

◆オランダ本国
◆アルバ
◆キュラソー
◆シント・マールテン

から成っている王国なんです↓

要するに、元オランダの植民地、
今はオランダ王国グループの一員、
というのが、キュラソー島です。

当然ながら、WBCの
「オランダ代表チーム」を結成する際には、
この島の出身者も参加します。

アンドリュー・ジョーンズ選手も、参加。
ヤクルト等に在籍し、年間本塁打記録を作った
ウラディミール・バレンティン選手も出身者。
他にも、メジャーで主に活躍した
アンドレルトン・シモン選手、
ケンリー・ジャンセン選手といった、
錚々たるメンバーも、出身者です。

…なぜ、こんなに小さな島から
世界的な野球選手が続々と生まれるのか?

この島の歴史的な背景から生まれた
「異文化への優れた適応能力」
その理由の一つだ、と言われています↓

(ここから引用)

『外国人が新しい文化に適応する際、
障壁になるのが言語だ。

メジャーでプレーする選手には
通訳がついてくれるが、
マイナーリーグは自分の力で
周囲とコミュニケーションを
取らなければならない。


マイナーにはアメリカ人に加え、
様々な国の人がやって来る。

そうした状況で、
キュラソーの選手にとって
言語力は大きな強みだ

(引用終わり)

日本で活躍した選手がメジャーに挑戦し、
成功する人もいれば失敗する人もいる…。
日本出身者は、特に「言語の壁」が大きい。
野球は、チームプレイが大事ですから。

その点、キュラソー島では、現地の言葉、
英語・オランダ語・スペイン語、
豊富な言語教育が行われています。

(ここから引用)

『日本と中国、韓国が
同じ東アジアにあるのに
互いの言葉を話さないのは、
いずれも大きな国家だからだと思う。

カリブ海諸国はどこも小さいが、
それぞれの関係性が深い。


キュラソーから飛行機に乗れば、
30分でスペイン語圏のベネズエラに行ける。
1時間の距離にあるプエルトリコ人は、
英語とスペイン語を話す。
英語圏のジャマイカも近い。

そうしたカリブ海に住んでいるから、
我々は多くの言葉を学べるんだ

(引用終わり)

もちろん、この言語や異文化適応能力だけの
話ではないと思いますが、
出身者が活躍しているのはこの島の歴史が
その背景の一つにある、と思われます。

最後にまとめます。

「キュラソー」という名前の由来には
諸説がありますが

俗説では「治癒の島」と呼ばれたことが
その由来だ、とも言われていました。

壊血病(ビタミンC不足)に悩む船乗りが
この島にたどり着き、
オレンジなどの果実を食べると
不思議と病気が治る…。

「アイランド オブ ヒーリング」
スペイン語風に言えば
「イスラ デ ラ コァラション」。

治癒は、英語でcure(キュア)
このあたりが混ざって、
キュラソー、と呼ばれるようになった、
という俗説です。

…第二次大戦中、ナチスドイツに迫害された
ユダヤ人は、海外に脱出する際に、
ユダヤ人への偏見が比較的少なかった
オランダ亡命政府のビザを求めました。

植民地キュラソーへのビザ。

それは名目上で、目的は
経由地のアメリカや上海への脱出!
当時のリトアニアのカウナス領事館にいた
外交官、杉原千畝(すぎはらちうね)は、
この「命のビザ」を発行して、多くの
難民の命を救ったと言われています↓

野球の島。キュラソー酒の島。治癒の島。
…難民の命を救ったビザの島。

名手アンドリュー・ジョーンズの故郷は、
味わい深いカクテルのような島なのです。

ぜひ、読者の皆様におかれましても、

キュラソー酒入りのカクテルを飲む際、
カリブ海に浮かぶこのキュラソー島へと
想いを馳せてみてはいかがでしょう?

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