『名将』と呼ばれた野球の監督はたくさんいます。

Bクラス常連だったカープを率いて
リーグ三連覇を成し遂げた「緒方監督」
鉄拳制裁も辞さず、人間臭い指揮で
ドラゴンズ、タイガース、イーグルス等を
優勝へと導いた「星野監督」
データを駆使して相手の弱みをつき、
ボヤきながらも人を再生させた「野村監督」

他にも、さまざまな「名将」が思い浮かぶ。
もちろん日本のプロ野球だけでなく、
世界各国や高校野球にまで広げれば、
人それぞれ、色んな顔が思い浮かぶでしょう。

ただ、今回、WBC優勝を成し遂げた
栗山監督は、間違いなく歴史に残る
「令和の名将」だと思います。


ダルビッシュ選手、大谷翔平選手をはじめ、
ヌートバー選手を招集した「人を見る目」、
不振の村上選手を使い続けた「信頼感」、
決勝戦でズバリはまった「投手継投」、
他にも「この監督を優勝させたい」と
選手に思わせるような魅力!

しばらくは栗山監督の名将ぶり、
その人心掌握術と人事活用に
スポットライトが当たるでしょう。

本記事では、人の能力を活かしきる
チームと監督
について、
思うところを書こう、と思います。

栗山監督の凄かったところは、
まず「軸になる選手の招集に成功した」
ところですよね。

メジャーの例を見てもわかるように、
必ずしも全員がこの大会に
参加するわけではありません。

特に、WBC1回目にはまだ
アメリカ合衆国チームは本気ではなかった。
メジャーリーグの第一線級の選手は
あまり参加していなかった。
今回、5回目の2023年大会は、
実力者を揃え、総年棒も凄かったですが
それでも意中の全員を揃えられたわけではない。

もちろん、日本も同じです。
怪我で涙を呑んで辞退した鈴木誠也選手や、
メジャー1年目のため辞退した千賀投手など、
参加できなかった・しなかった選手も、いた。

つまり、まずはチームの軸になる選手を
問題なく無事に出場させることができるか?
「チーム編成」から、戦いは始まっている。

そこでは、日本の代表チーム本部であったり、
メジャーのチームとの交渉であったり、
フィジカルやメンタルのチェックであったり、
地道な駆け引きがたくさんあったことでしょう。

ただ、ダルビッシュ選手や大谷選手は何よりも
「栗山監督なら…」という
強い出場意欲を持ってくれていた。
どんなに監督サイドが出場を熱望しても、
本人が熱望しない限りは出られない。
この段階で、栗山監督は
最初のハードルを飛び越えていたのです。


もし他の監督であったら、
彼らはそこまで出場を熱望しなかった、
かもしれない、のですから。

次に、メンバーの構成、特に内野。

これまでのWBCのメンバーと言えば、
もの凄い守備力を持った忍者並みのセカンド、
カープの菊池選手であったり、
打力も守備も一級品のショート、
ジャイアンツの坂本選手などが
内野を固めていましたよね。
ただ、年齢や様々な問題もあり、
彼らは今回、招集されませんでした。

しかし、一点勝負の厳しい戦いが
待っているのは、予想できる。
そこで栗山監督はショートに、ライオンズの
源田選手を招集し、主に起用した。


私は、この源田選手こそが
影のMVPではないか
、と思えるほど、
この起用が素晴らしかったと思っています。

「源田たまらん」の呟きがSNS上で
あふれるほどの守備の安定感!
「源田の一ミリ」と言われた
準決勝でのセカンドでのタッチプレー!
背面フライキャッチ!
しかも途中で指を骨折しながらも
再度起用され、安定した守備を見せる。

彼と二遊間コンビを組んだのは、
DNAの牧選手、スワローズの山田選手。
どちらも実力者で安定しています。
投手陣は、とても安心して投げられた。

ホームランなどの打撃は目立つために、
どうしてもスポットが当たりがちですが、
「守備で相手のチャンスを消す」、
これもまた、とても重要なことですよね。
この意味で、源田選手の招集と
彼を信じて起用し続けた栗山監督の采配とが
ずばりはまった、と言ってもいいでしょう。

はい、ここまで、二つ挙げました。
「有力な選手を招集する」。
「内野守備を固める」。


ただ、次の点がさらに重要だ、と思います。
それは「軸となる選手にチームの一部を任せ、
『俺たちのチーム』にする」こと。

いくら凄い能力の選手を集めて、
いくら守備を固めようとも、
それだけでは、野球は勝てませんよね。

野球は「メンタルのスポーツ」でもあります。
今回の村上選手の例を見てもわかるように、
不振や失敗が日常にあるからです。
打者は三割打てれば凄いバッター。
逆に言えば七割は失敗するわけですから。

特に短期決戦では失敗を取り戻すのが厳しい。
もし、AIに選手起用を聞いたら、
「不振が続く村上選手には代打です!」
即答したかもしれない。

しかし、栗山監督は村上選手を使い続けた。
ある意味、非合理です。有り得ない。

ですがそれを続けたからこそ、彼は奮起した。
準決勝では、大谷選手や吉田選手が
彼に打席をつないで、塁上から鼓舞した。
試合前には出場辞退の鈴木誠也選手が、
「顔を上げて打て!」と動画で応援した…。
そういうものがあっての
「村神様おはようございます」だったんです。

また、大谷選手のMVPの投打の大活躍、
「俺が引っ張る!」「メジャーに気遅れるな!」
という言動は言うに及ばず、

ダルビッシュ選手による投手陣への
コミュニケーション、助言
なども
もの凄い力を与えた、と思います。

これ、すべてを監督自身がやろうと思ったら
膨大な労力がかかりますよね…。
というか、できない。
監督と選手は、どうしても違う立場ですから。

だからこそ、大谷選手とダルビッシュ選手は
「監督の意図をつかんで、
積極的に選手とコミュニケーションをとって
ずっと彼らを鼓舞し続けた」
のでしょう。
理想的な「選手兼コーチ」。
見方を変えれば「プレイングマネージャー」。
こういう選手がチームにいれば、
指揮官は、とても心強い。

もちろん、目に見える部分だけでなく、

通訳や医療班、データ分析班、
そういった黒子の部分も、栗山監督は
ファイターズ監督時代に培った人材を駆使して
信頼できるスタッフを揃えた、と言います。
かつ、彼らにも「俺たちのチーム」精神を
呼び覚ましていったことでしょう。

そんなこんながすべてかみ合っての
「チームとしての」優勝だったと思います。

最後にまとめます。

軸となる人材を集めて、任せて、活かしきる。
バックアップの体制を、しっかりと作る。
「自分たちのチーム」だという認識を持たせる。

これあってこその名将、ではないでしょうか。
特に「実力者だらけ」の代表チームでは…。
(もちろん、まだ発展途上の高校野球などでは
少し違うとは思いますが)

さて、読者の皆様のチームはいかがですか?
名将はいますか? バックアップは万全ですか?
精神的支柱となる選手は、いますか?

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