「春はあけぼの」の背景にあったもの
日本の四季の美しさを『枕草子』で読む。
「古文」の授業で勉強したような…。
この随筆の執筆のきっかけ、名前の由来は
作者の清少納言(せい しょうなごん)自らが
枕草子の最後の文章に書いています。
(ここから引用)
(引用終わり)
この文章を現代の日本語に超訳すると…。
…ふーん、まあ、そうか。
私はこれを学んだ時、まあ、紙をもらって
それを消費するために、エッセイを
とりあえず書いてみたんだな、と思いました。
史記=敷物=「ふとん」だから「枕」か。
四季なのか、と。
それから数十年、冒頭の文章すら
記憶があやふやになっていた現在。
大河ドラマ『光る君へ』で
この枕草子が誕生するシーンが
描かれてたんですね。映像で。
…いや、すごい、そんな背景が!と
ちょっとびっくりするのとともに、
「清少納言=枕草子」
「枕草子=四季折々などの随筆」と
単語だけでテスト対策に軽く認識していた
その作品の奥深さに触れた気がしました。
本記事は『光る君へ』の内容に触れつつ
(この先のネタバレもあるのでご注意を…)
随筆が執筆された背景について書いてみます。
まず、この文章に出てくる登場人物の確認。
作者の清少納言は、
「せいしょう なごん」ではなく
「せい しょうなごん」です。
少納言、とは関係者の官職名から。
せい、清、とは、清原という
家の名字から取っています。
(ちなみに紫式部の式部という呼び名も、
父親の官職から取っています)
平安時代に権勢をふるった
有名な「藤原道長」は、
この場面には出てきません。
むしろ、道長ががっちり権勢を
握っていく過程のあたりのお話。
道長のライバルが、藤原伊周です。
この時は、内大臣の伊周が一歩リード。
中宮の定子と伊周は、兄妹です。
二人の父親の藤原道隆は、道長の兄。
つまり藤原道長にとっては、
定子も伊周も姪・甥なんですね。
道長の兄、藤原道隆のほうが出世が早い。
天下を握っていた。
ですので、その子どもも、出世が早い。
定子は天皇に嫁ぎます。
伊周は内大臣になった。
道隆一家「我が世の春!」という感じ。
しかしこの道隆が43歳で急死してから、
運命が暗転していきます。
伊周は「弟の従者が上皇に矢を射かける」
という大事件(長徳の変)などに
巻き込まれた形で失脚するのです。
定子は落飾(出家)する…。
まさに諸行無常のお話。
これが995年(長徳元年)の頃のこと。
ライバル伊周がいなくなって、
叔父の藤原道長が権勢を握っていく。
中宮、天皇の妃だった定子は、
まさにこの頃、不幸の連続なのです。
何という落差!
世をはかなんでそのまま消えていっても
おかしくないような絶望のどん底…!
ただ、定子、これで終わらない。
◆997年:女児を出産
◆999年:男児を出産
◆1001年:女児を出産
何と998年、一条天皇は定子が
自分の子どもを産んだということで、
再び定子を宮中に迎え入れることになります。
しかし1001年頃、第三子を出産後に死去…。
ドラマ『光る君へ』では、
父親の道隆や兄の伊周から
「帝の子どもを産め!」と
何度も何度も執拗に迫られる場面が
視聴者の涙を誘いました。
(この二人の演技も憎たらしいこと…!)
しかし、宮中を去る995年までに
定子は子どもを産むことはなかった。
…そもそも前提として、帝と定子、
結婚するのがかなり早かったんです。
定子は、976年生まれ。
一条天皇は980年生まれ。
990年に結婚(入内)していますので、
定子は数え年で15歳。
一条天皇は数え年で11歳でした。
それで父親から「子どもを産め!」と
言われても、ちょっと…。
(もちろん、平安時代は現代よりも
寿命も短く、人生も早いのですが)
その「悲劇の宮様、中宮様」に
仕えていたのが、作者の清少納言です。
『光る君へ』では、宮中を去り、
世をはかなんで絶望している定子に向けて、
清少納言が「枕草子」を書き始める展開が
見事に描かれていました。
四季折々の情景などを見事に描写していく。
おそらく、これを読んだ中宮定子も、
天皇との生活や家族の幸せ、
清少納言たちと過ごしたサロンでの情景を
思い出していったのではないか…。
次第に、生きる希望を見出したのではないか?
もちろん、本当のところはわかりません。
しかしドラマとして、絶望した定子に
「生きる希望」を見せるために
「この世の素敵さ」を思い出してもらうために
清少納言が枕草子を書き始めた、という
展開がとてもナチュラルに描かれていて、
創作や演出の素晴らしさを、
改めて感じた次第です。
文章は、人を傷つけることもあれば、
人の心を湧き立たせることもできる…。
1000年以上の時を超えて、
いまなお『枕草子』が読まれ続けている、
という事実が、
それを証明しているように思うのです。
最後にまとめます。
本記事は『枕草子』に描かれた
四季の美しさの「背景」を、
大河ドラマ『光る君へ』で描かれた
場面とともに紹介しました。
主人公「まひろ」こと紫式部の
『源氏物語』への期待も
より高まる!という気持ち。
定子を演じる高畑充希さんと、
清少納言(ききょう)を演じる
ファーストサマーウイカさんの
渾身の演技も必見!
よろしければぜひ、
演者の皆さんのインタビュー動画も↓
※大河ドラマ『光る君へ』第21話
「『枕草子』誕生秘話
清少納言が心酔した
中宮定子への“究極の推し活”!」
の記事はこちらから↓
※『枕草子』の訳は
こちらの記事を参考にしました↓
合わせてぜひどうぞ!
よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!