見出し画像

ゲームとバレエと高級チョコと ~文化のテンパリング~

一見、何のつながりもないものが
実は意外な共通点がある、ということは
世の中にはよくありますよね!

その共通点を探ることで
ものごとの意外な側面も
知ることができる…というもの。

本記事では、その事例の一つを
「探究学習」的なかたちで
ご紹介したい、と思います。

◆ゲーム:日本におけるゲームブーム
◆バレエ:日本バレエの母
◆高級チョコ:宝石のような味わい

さて、すぐに謎を解いてしまっては
興が冷めます。
ぜひ、一緒に探究におつきあいを。

読者の皆様、この三つに共通することは
何だと思いますか?

ゲームブーム、ですか…?
1980年代『ファミコン』が普及して
家庭用ゲーム機によって
ゲームが家庭に持ち込まれる前は、
『ゲームセンター』がブームでしたよね!
『インベーダー』が人気だったとか」

日本バレエの母…。
いまWikipediaで調べてみると
『エリアナ・バヴロワ』という人が
そう呼ばれるそうですね。
鎌倉に居を構えて、多くの門人を育てた。
『霧島エリ子』という日本名も持ったとか…」

宝石のような高級チョコ
と言えば、ゴディバとか
ラ・メゾン・デュ・ショコラとか…?
ピエール・エルメ・パリ、リンツ、
モロゾフなんかも美味しいですよね!」

なかなかお詳しいですね。

そのような連想が、
どんどん生まれていくかもしれない。
しかし、あまりに広げ過ぎると
「共通点は何か」という謎解きに
集約するのがちょっと難しくなる。
ますます、わからなくなる危険性もある。

さあ、ここまでのヒントで、どうでしょう。
共通点は、ピンと来ますか?

◆「日本由来ではなさそう」
◆「欧米の文化に関すること?」
◆「生活に潤いをもたらす、とか…?」

そうですよね。

ゲームもバレエもチョコも
日本古来からあった、
という感じではない。
国外から伝来してきたもの…?

では、もう少し掘り下げていきます。

インベーダーゲームは1978年、
『スペースインベーダー』
(タイトーの登録商標)というゲームが
大ヒットしたことから日本中で
大ブームになりました。

日本のアーケード史上最大のヒット作!

スペースは宇宙、インベーダーは侵略者、
ひたすら敵の集団を撃つ。
『名古屋撃ち』などの裏技も生まれました。
「しかし、いくらゲームとはいえ
人を撃つのはよろしくないだろう」
という配慮から、当時有名だった
「スター・ウォーズ」にヒントを得て
宇宙人の侵略者、という設定にしたとか。

開発したのは太東貿易(現・タイトー)の
子会社パシフィック工業の社員、
西角友宏さん。

タイトーは元々は
「太東洋行」という会社が起源で、
ミハエル・コーガンという人が作った。
1953年に「太東貿易株式会社」と名を変えて、
ジュークボックス、ピンボール、
パチスロ、クレーンゲームなど
主に娯楽機器の製造を手掛ける。
その延長でゲーセンも作ったんですね。

『日本バレエの母』エリアナ・バヴロワは
1919年に日本に来日。
浅草で「瀕死の白鳥」などを上演して、
映画の主演にも抜擢されます。

1927年に鎌倉に
日本初のバレエの稽古場を建てる。
「エリアナ・パブロワ・バレエ団」を結成。

1941年に慰問先の南京で死去しますが、
母親や妹、多くの門人や後援者によって
彼女が土台をつくった日本バレエは
その活動を広げていきました。
1986年には「日本バレエ発祥の地」という
記念碑が鎌倉市に建立された。

日本における高級チョコの源流を探ると、
フョードル・ドミトリエヴィチ・モロゾフ、
という人の名前が出てきます。

洋菓子で有名な「モロゾフ」の創業者。
それまではどちらかと言えば
「駄菓子」として認識されていた
チョコレートを高級なものとして売り出す。

(ただし、後に経営を巡って
モロゾフの会社を追われてしまい、
彼の子どもが「コスモポリタン製菓」という
別の会社を立ち上げています)

彼は1880年にロシアで生まれましたが
1917年にロシア革命が勃発すると
ハルピン、シアトルを経て神戸に移住。
大正時代の日本が急速に
国際化・西洋化していくさまを見て
チョコレート菓子などの事業を興した。

…さあ、ここまでの深掘りで
共通点は見えてきましたでしょうか?

「エリアナ・バヴロワ。
フョードル・ドミトリエヴィチ・モロゾフ。
ロシア出身の方が、出てきましたね。
タイトーも、元の創業者はミハエル・コーガン。
このあたりに秘密がある…?」

そうなんです。

実は、この三人はいずれも
「ロシア革命」の影響により祖国を脱出、
紆余曲折を経て日本で
事業を興した人たちなのです。

1917年、ロシア革命。

ロシア国内は「赤軍」と「白軍」に分かれ、
革命軍と反革命軍の戦いが続きました。
日本も、関連していますよね。
『シベリア出兵』を実施し、
白軍を支援して革命政府と戦いますが、
じきにロシアは「ソ連」に変わる…。

この革命の影響で、多くの人が
海外に亡命していきました。

航空機のパイオニア、シコルスキー。
音楽家のラフマニノフやストラヴィンスキー。
戦後のプロ野球で活躍したスタルヒン。
横綱「大鵬」の父親、マルキャン・ボリシコ。
いずれもロシアから亡命してきた人です。
(「白軍」から由来して
「白系ロシア人」とも言われます)

日本における
ゲーム・バレエ・高級チョコ。
いずれも、実は
「ロシア革命によって海外に
亡命した人が起源」
なのです。

最後に、まとめます。

本記事では、
ゲームとバレエと高級チョコという
一見何のつながりもないものの
共通点を、探究学習風に探ってみました。

今ではゲーム業界は
スマホやオンラインにも広がって
「日本が世界に誇る娯楽」として
隆盛の一途をたどっています。
そのブームの一つを作り出したのが
インベーダーゲームのタイトー。

日本のバレエは百年ほどの歴史で
他国から比べれば浅いですが、
バレエ教室は四千五百以上、
「バレエ大国」とも呼ばれます。
世界的な大会で入賞する
バレエダンサーも多数輩出している。

高級チョコの「モロゾフ」は、
日本におけるバレンタインチョコの
火付け役
としても知られています。
1935年、英字新聞上で
バレンタインデー前日に大きく広告を打つ。
それを六年にわたって続けることで
「バレンタイン、イコール、チョコ」の
日本ならではのイメージをつくった。
(海外では見られない現象です)

現在、私たちの目の前にある文化は、
想像以上に様々な由来を持つ人が
情熱を傾けて練り上げてきたもの。


それはさながら、チョコの温度を調節して
ココアバターを結晶化する
「テンパリング」のようなものです。

読者の皆様も「当たり前」に思える
ものごとの起源を調べてみませんか?

そこには意外な共通点や
知られざるキャリアが
隠れているかもしれません。ぜひ。

※「テンパリング」についてはこちらから↑

よろしければサポートいただけますと、とても嬉しいです。クリエイター活動のために使わせていただきます!