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自分に適した『構造』へ ~ブローデルからのヒント~

先日「実存」と「構造」を対比して書きました。
その記事からの発展形だと思って
本記事をお読みいただければ幸いです!
(記事は下部のリンクからぜひ)

◆実存主義:自由、道を切り拓く者たち!
◆構造主義:不自由、構造に左右される!

「実存主義」では、自分がまず「ある」。
何者になることも可能!
行動して選択し、責任を取るのも、自分。
一方「構造主義」では、私という存在は
自由であるように見えて、実は、
「枠組み」に囚われ、縛られて、
それに基づいて行動している存在…。

どちらも一理ありますよね。
かつ、どちらかだけでも、ない…。
そんな感じを私は受けました。

確かに人間、自由に動けます。
ただ、その行動は「見えない構造」に
左右されがちだ、ということもまた事実。
(SNS一つとっても、見えないアルゴリズムに
左右されますよね)

確かに人間は「構造」に縛られる。
文化、歴史、枠組み、アルゴリズム…!
そういったものに、
知らないうちに囚われている。
ただ、全員が全員同じなのか、というと
違うのもまた事実。個性がある…。

そう考えていった時、私は
「動かしやすく変わりやすいもの」と
「動きにくく変わりにくいもの」とに
分けられるのでは…?
と感じたのです。

歴史学者の中に、
ブローデルという人がいます。
フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel)。
フランスの歴史家。1902~1985年。

このブローデルは『地中海』という
有名な本を刊行しました。
自費出版。1949年、47歳の頃です。
この本は「新しい歴史学」の先駆けとなる。

◆歴史的時間における『重層性』

これを発見した、と言われている。
層が分かれているんです。ひとつではない。

◆「長波」・「中波」・「短波」の
「三層構造」として歴史を把握する

こういう歴史の見方を勧めた本です。

「長波」とは、もっとも深層にあって、
不変、あるいはほとんど変わらないもの。
地形とか、自然、気候、環境とか…。

「中波」とは、ゆっくりリズムを刻む社会の歴史。
「局面」や「人口の動き」、
「国」「戦争」などを指します。

対して「短波」とは「個人」の動きや歴史、
単発的な出来事、事件、そういったものです。

要するに、目の前で日々移ろいゆく事件、
人の流れなどは「短波」に過ぎない。
そういう「目に見えるもの」だけに
目を奪われ過ぎると「全体」がわからない!
もっと、中波や長波など「目に見えないもの」
長く広い「構造」も考えよう!
という主張です。

「…要するに『見える』日々の
細かいことだけではなく、
『見えない』『広い視点の』『構造』を
押さえろ、ということですか?」

ええ、私もそう思いました。

例えば実存主義的に「自分は自由だ!」と
言ったとしても、何らかの縛りがある。
今いる国家の「環境」、
今、使っている「言葉」の範囲、
これまでに積んできた「経験」、
あるいは生まれ持った「特性」…。
そういった『構造』『枠組み』がある。

でもそれは「見えない(見えにくい)」
特に、自分だけの主観では…。

例えば日本に住んでいたら、
他の他国における常識が奇異に見えます。
ですが他国から見れば、日本の常識こそが
個性的で奇異。

日本語だってそうです。
英語からすれば、日本語はなんと
まどろっこしい「忖度言語」なのか。
でも、裏を返せば奥深く趣深いものでもある。

自分のキャリアの特徴、経験、特性…。
そういったものは「他者」と比べて「分けて」、
初めて「分かる」ものです。
自分とは違う「分かれる」他者に触れなければ、
「分からない」ことになる…。

でも、あなたは今、こう思いませんでしたか?

「…いや、それでも、私は自由です。
『お昼に何を食べるか』を選択できる。
お風呂が先か、ご飯が先か、も選べる。
LinkedIn上の人に会って食べることも可能」。

そうなんです。
おそらく、ブローデル風に言えば、
「三層構造」いや、もっと分けて、
「五層構造」くらいに分けられる、と私は思う。

変えやすい構造と変えにくい構造に、です。
行動や未来が変えやすいか、変えにくいか。

◆個人(自分)
◆集団(組織)
◆地域(都市)
◆国家(民族)
◆世界(人類)


仮にこの五つに分けて考えてみましょう。

◆個人(自分)の「行動」は、変えやすい。
もちろん各個人で「見えない」個性や特質はある。
身体条件、ビジュアル、遺伝子は変えにくい。
でも、行動自体は自由です。

◆集団(組織)になると、変えにくくなります。
「自分だけ」ではなくなるから。
家族、学級、部署、会社…。
人が増えれば増えるほど全会一致にはならない。
家風、校風、社風、などの「文化」も生まれる。
暗黙の了解、見えないルールも…。

◆地域(都市)になると、色んな人がいます。
◆国家(民族)になれば、容易に変えられない。
◆世界(人類)はもちろんすぐには変わらない。

個人には「実存・自由」と「構造・運命」の
両方がある、と思うんです。
その個人が集まれば、変えにくくなる。
ましてや世界レベル、約70億人だと、もう
個人ではどうしようもできないことが多い…。

「…いや、でも例えば、
大谷翔平選手などは個人のパフォーマンスで
球界を変えていってますよね?」

そう。傑出した「個性」や「技術」が、
「構造そのものを変える」こともある。
チンギス・ハンやナポレオンもそうだった。
そんな彼らを「歴史的な存在」と呼びます。

でもこれは「個人」だけではない。

織田信長が「鉄砲」を使ったように、
坂本龍馬が「海援隊」を作ったように、
また最近では「ネット」や「SNS」が
閉鎖的な構造に風穴を開けるように、

新しい「思想」や
「技術」「ツール」が普及することで
構造が変わっていくことはある
のです。
農業革命、産業革命、情報革命…。
この変化を『パラダイムシフト』
呼ぶこともある。

最後に、まとめます。

本記事では実存と構造の対比の先には、
変えやすいものと変えにくいものがあり、
関係者が増えるほど変えにくくなる、
という話を書きました。

さて読者の皆様の「組織」はどうですか?
皆様が住んでいる「地域」や「国家」は?

変えにくい「構造」に対して、
「個人」としてはどうしていますか?
変えるように頑張る? みんなを巻き込む?
それとも、そのままの構造に従っていく?


そう考えると、自分の「個性」が発揮でき、
自分に少しでも適するような
「構造」を見極めて、
そこに飛び込んでいく
ほうが
「良い人生」になるような気がします。

もちろん、生まれ育った土地や環境が
そうだったら言うことなし、ですが…。
大谷翔平選手は、海を渡りました。

あなたの周りの「見えない構造」には、
どんな特徴があるでしょうか?
どのように、それを「見える化」しますか?

※ブローデルは『地中海』という本の中で、
構造を丹念に「見える化」していきました↓

※『実存主義と構造主義』についてはこちらを↓

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