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チーズと言えば 笹井 純子 さん!と私は
第一想起をしてしまいますが、

先日、とあるカフェで
美味しいチーズケーキを食べながら
「これもまたチーズの活用のひとつか…!」
と考え込んでしまいました。

チーズ。不思議な食べ物ですよね。

「乳」から生成した、固形物、かつ保存食。
さらにそれを加工して、ケーキやピザなどに
人間は使い、様々に美味しく味わってきた…。

何十世代にもわたって「凝縮」させてきた
チーズへの飽くなき情熱!
ここに私は人間の美味に対する探究心と、
良い意味での「オタク心」を感じてしまう。


…だって、元は「乳」ですよ?

しかも、人間のものではない乳!
家畜から搾って、飲んで、流通させ、
それだけに留まらず、加工、再加工している。
牛の視点から言わせれば、
「人間…、恐ろしい子!」と思うのでは?

もし逆の立場で、牛が人間の乳を搾って
加工、再加工していたら、と思うと…。
(このあたりは藤子・F・不二雄さんの名作
『ミノタウルスの皿』を思い出しますが)

と、そういうSF設定はともかく、
本記事ではチーズの歴史について。

まずは、呼び名からいきましょう。
カタカナで「チーズ」と書きますが、
さて、漢字ではなんと書く?

「乾酪」と書きます。かんらく。

酪(らく)とは、乳製品。
「乾いた乳製品」だから、チーズ。
(ちなみにバターは「牛酪」です)

日本での酪、乳製品の歴史を調べてみますと、
「蘇」(そ)というものが
飛鳥時代~平安時代にあったそうです。
厳密にはチーズとは異なりますが、
乳汁を乾燥させ、加熱濃縮させた加工品。

飛鳥時代と言えば、聖徳太子(厩戸皇子)!
仏教をはじめ、大陸の様々な文化を
導入させて「文明開化」を行った人です。
「遣隋使」(のちの遣唐使)もありましたね。
その中で「蘇」も入ってきたのでしょう。
(隋や唐は、遊牧民の文化の色濃い
国際的な王朝でした)

700年には、文武天皇が
「『蘇』を税として納めるように!」と
おふれを出しています。
701年には「大宝律令」が定められ、
「日本」という国号も定められましたから、
古代日本では、蘇が広がっていたようです。

(「醍醐」という乳製品もあった。
これが『醍醐味』の語源です)

考えてみれば平安時代には
「牛車」というものがありましたね。
平安貴族、牛にはなじみが深かった。
とすれば、牛乳や蘇にも親しんでいたはず…。

でも、昔の日本でチーズ作りが発達した、
というイメージは、あまりない。
中世、武士の世の中では、
日本では牛の飼育や酪農が廃れていく。

…なぜでしょう?

武士と言えば、弓馬の道を極める武芸者です。
弓の腕を磨き、馬を乗りこなす人たち。
でも、牛には乗りません。
「乗れない牛より、馬を飼育すべき!」
そう、徐々に乳牛飼育が廃れていき、代わりに
乗用馬が飼育されていくようになった。

おそらく武士の心の中では、
「牛=軟弱な平安貴族」「馬=鎌倉武士」
そんな反骨精神があったのではないか?
この「武士の世の中」が続いていく。
江戸時代初期のフランス人宣教師、
ジアン・グラッセはこう書いたそうです。

『(日本人は)牛乳を飲むことは、
生血を吸うようだ、と言って用いない。
(中略)また牛酪(ここでは乳製品の意味)を
作る術を知らないのか、作ろうとしないのか、
牛酪(チーズ)も、ない』

「西洋文化大好き」の織田信長や、
「西洋文化一部取り入れ」の徳川吉宗は、
例外的にチーズを味わったりしたそうですが、
全体的には牛より馬、の文化でした。

そのため、明治時代になって改めて
「文明開化」をするまで、日本では
酪農や乳製品の加工は下火だった…。
大規模に酪農が始まるのは、
「北海道」が開拓されてから、ですね。

…はい、ここまでは日本について。
では、世界ではどうだったのか?

まず「蘇」を日本にもたらした中国は?
うん、中華料理・中国料理において、
チーズを使っているイメージは、あまりない。
さらに北のモンゴルに行けば、
ヤギの乳などを使った乳製品が豊富なのに。

…思うに、チーズは「異郷の食べ物」であり、
それゆえ中原では流行らなかったのでは?

中国は、たびたび遊牧民族に攻め込まれた
(時には征服された)苦い歴史があります。
似たような加工の「豆腐」は使った。
しかし「チーズ」は普及しなかった。

では「チーズの本場」とも言うべき西洋は?

ポーランドでは紀元前5500年頃の遺跡で
「チーズづくりの道具」が発見されました。
これが現在の最も古いチーズづくりの証拠。

中東のメソポタミア文明や、
エジプト文明、インド、
このあたりでもチーズづくりは行われていた。
「ハンムラビ法典」にも
チーズに税をかけたことが記されています。

…暑いですからね。乳はすぐ腐ってしまう。
ゆえにチーズに加工して保存しておくことは
生きるためにも大事なこと
だったんです。

古代ギリシアでは、オリンピックの選手たちに
甘く味付けしたチーズが振る舞われていたとか。
これが、チーズスイーツの起源の一つ。

さて、時代が下ってローマ帝国の時代になると、
東の遊牧民、中東やインドの商人たち、
南のギリシア、このあたりから帝国に
様々な乳製品が持ち込まれました。
多種多様なチーズづくりも発展!

800年の『カールの戴冠』で有名な
フランク王国の国王「カール大帝」
気に入ったチーズを毎年納めさせており、
税として納めるチーズ生産のために
財政が傾く村もあったそうです。

ワイン界では『テロワール』という言葉があり
土地それぞれの環境や風土に合った
独特の葡萄や酒が生まれていきます。
ダレーア Dahler 葉子 Yoko 🍷さん が詳しそう)
チーズもまた同じ、でした。
荘園や修道院ごとに特色あるチーズが誕生!

フランス語でチーズは
「フロマージュ」と言いますが、
これはラテン語で「型枠」を意味する
forma(フォルマ)から。
チーズづくりの道具から来ているんですね。

一方、英語では「チーズ」。
ラテン語の「チーズ」そのものを意味する
Caseus(カセウス)から来ています。

このチーズがヨーロッパ世界の発展とともに
「枠」を超えて世界へと広がっていく…。

チーズのふるさとの一つ、ポーランドでは
「チーズケーキ」の元が生み出されました。
ポーランド移民が流入したアメリカ合衆国では
ニューヨークスタイルのチーズケーキが生まれ、
これまた世界に広まっていく…。

こんなすったもんだがありまして、現在、
私はチーズケーキを日本の地で
美味しくいただいている、というわけです。

最後に、まとめます。

本記事では、チーズケーキから着想して
「チーズの歴史」を追いました。

…五月は、疲れがたまっていく時期です。
疲れた時には、
美味しいチーズケーキとコーヒーで
ほっと一息つかれてはいかがでしょう。

もちろん、チーズにワイン、もいいですね!

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