上げ米・渋幕・参勤交代
先日、東大日本史入試を一問、紹介しました。
以下のような内容です。1983年の過去問!
(ここから引用)
(引用終わり)
…この出題意図は、一言で言えば
「各藩の財政が悪化したのは
結果であって目的ではなかった。
幕府がこの制度を設けたのは
『主従関係を確認するため』だった」
という「制度の理由・時代の本質」を
理解しているか、という意図。
主従関係の確認!
江戸時代は「武士の世の中」です。
幕府・将軍は、主君。
各藩・大名は、家臣。
呼んだら這ってでも出て来い!
粗相があったら領地を召し上げ、
違う領地に異動(転封)させるぞ!
そういう上下関係を
「平和な時代」に「見せつける」、
それこそが参勤交代だったのです。
…今の平和な令和時代にもありますよね。
「出社の義務、通勤させる」とか
「朝礼で社長がありがたいお言葉」とか
「在宅リモートではなく直接対面」とか
「支社は目を離すと危ないから監査」とか
「社長・本社に逆らったら、左遷!」とか
そんなことに通じる側面もあります。
参勤交代ならぬ、通勤交代、本社拝謁…!?
それはさておき、実は東大、繰り返し
参勤交代に関する出題をしているんです。
本記事では、その問題を紹介します。
ぜひ、皆様も考えてみて下さい!
(ここから引用)
(引用終わり)
1998年出題。
問題文中にヒントがあります。
一つずつ考えていきましょう。
上げ米。あげまい。
これは江戸幕府の中興の祖とも呼ばれた
八代将軍「徳川吉宗」が定めたもの。
彼は暴れん坊将軍…ではなく
「米将軍」と呼ばれました。
とにかく幕府の財政を立て直さなきゃ!
そこで吉宗は問題文にもあるように
「参勤交代を緩め、代わりに
米を各藩から納めさせる」ことを考えた。
…そこまでしなきゃいけないほど、
当時の幕府の財政は逼迫していたんです。
1657年の明暦の大火で江戸の街が焼けて、
その復興のためにお金がかかったこと。
直轄の金山・銀山の産出量が激減したこと。
旗本や御家人が増えたため人件費が増加…。
そういった理由が、背景にあった。
当時の経済状況は、と言いますと
「元禄時代」から経済が発展しており、
かつ、新田開発による米の増産によって、
米の価格が低かった。ダブついていた。
米をお金に換える時に安かったら、
当然、財政は厳しくなりますよね。
そこで吉宗は「享保の改革」において
大坂の米市場を公認したり、
新貨幣発行でインフレ政策したり、と
何とか米の価格を上げようと試みる…。
米に苦悩した。だから米将軍、なんです。
ただしそもそも、江戸時代の経済は
「年貢米を換金する」システムです。
各藩は「天下の台所」こと大坂に
蔵屋敷をつくり、商人と取引をさせていた。
年貢米が増えれば増えるほど、
田んぼが増えれば増えるほど、
米の価格が下がるという矛盾、悪循環…!
Aの解答例は、以下の通りになります。
では、Bはどうでしょう?
『幕藩体制における
幕府と大名の関係に留意しながら』
というヒントが書いてあります。
「主従関係の確認」の参勤交代。
江戸在府期間を半減する、ということは、
呼びつける期間を半減する、すなわち、
「俺が偉いんだぞ!」の権力をも半減する、
ということにつながりかねない。
各藩の大名も、各地に住める期間が
増えることになるわけですから、
幕府の監視の目が行き届かなくなる…?
だから『幕府と大名の関係に
重大な変化をもたらすおそれがある』
と言われたんです。
美味しい米がゲットできても、まずい!
あくまで「財政のための臨時措置」でした。
Bの解答例を挙げましょう。
事実、8年後に、この上げ米の制は廃止。
幕藩体制の統制のほうを重視したんです。
最後に、まとめます。
本記事では繰り返し出題された
東大の日本史の入試問題を紹介しました。
参勤交代は江戸幕府の根幹、統制策の軸!
だからこそ「ちゃんと分かっていますか?」
と、繰り返し出題される…。
ちなみにですが、
渋谷教育学園幕張中学校・高等学校、
通称『渋幕』の中学入試
(注:高校入試ではない)では、
以下の問題が出されました(2018年)。
(ここから引用)
(引用終わり)
1983年の東大入試の問題と瓜二つ…?
中学校の出題者の
強烈な意志を感じる設問!
「表面だけ・暗記だけの学習ではなく、
背景や理由まで考えていますか?」と
受験生に突き付けるような設問ですよね。
(これを完璧に解けた小6生、すごいな…)
現代と同じような面がありつつも、
違う背景と論理で動いていた江戸時代…。
だからこそ「なぜ?」や制度の本質を
理解しておきたいですね。
読者の皆様は、どう思われましたか?
※『渋幕』の入試問題については
上記の記事を参考にしました。合わせてぜひ。
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