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3分の1が外国籍、男女比1対1、社内公用語は日本語と英語。小さなチームが多様性を得て気づいたこと

ダイバーシティインクルージョン。近年注目されている言葉です。一部の属性に偏った組織から脱却し、多様性を重視しようという考え方です。具体的な目標設定としては、性別、年齢、国籍に偏りをなくそうということになると思います。その逆の組織とは、日本人の男性に偏り、年功序列で年齢に対する扱いも硬直化した組織、ということになるでしょうか。

ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味です。企業におけるダイバーシティとは、性別や年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を活用することで新たな価値を創造・提供する、成長戦略といえます。[...]一方、インクルージョンは「受容」という意味。企業におけるインクルージョンとは、従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく、組織のあり方を示します。

言わんとすることはわかるけど、それに取り組めるのは社会的な責任がある大企業の話でしょ?と感じる方も多いかもしれません。

実は、私もそうでした。言葉としては知っていましたが、小さい企業でそのようなものに取り組めるとは全く思っていませんでした。

それが気づけば、直近で面接して採用を決めた方を含めると、3分の1が外国籍、男女比1対1という状況になっていた。という感じです。全然この数値目標を掲げていたわけではなく、数えてみたら、あれ?いつの間にか…というのが本当のところです。出身国も「同じ国から複数名」ではなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジアにまたがっています。

この割合は、10人以上50人未満、のような小さなチームでは、かなり珍しいのではないでしょうか?実際に、同業者やクライアントからもかなり珍しがられますし、普段どうやって仕事してるの?と質問されたりもします。

また、弊社と同じWeb制作業界で、私が知っている同業は、日本人しかいないという会社がほとんど。英語でWeb制作の打ち合わせができる、というだけで希少価値があるようで、ご指名でお仕事の依頼が来たりします。

いつの間にか多様性を持つチームになってしまった、その過程では色々な気づきもありました。このnoteでは、これまでの経緯を簡単にご紹介しつつ、その気づきを、採用に迷っている方と共有できればと思います。


スタートアップにありがち?属性の狭い数人のチーム

私が4人の仲間で起業した当初は、むしろ多様性とはかけ離れていました。30代前半の男性4人、全員エンジニアという創業メンバー。起業のために集まったチームではあるのですが、実は全員その前から面識のある友達同士。ということは、自然と属性も近しくなります。

Web制作の同業者の中でも、起業した友人がとても多いのですが、創業前からの仲の良い仲間で立ち上げ、その後もリファラル採用をメインにしているパターンが多いと感じます。必然的にメンバーの属性は似通っていきます

転機となるのはいつでも新しい風、新メンバーです。


入社後即産休!初社員は女性デザイナー

初めて採用した社員は、女性でした。面識があったとは言え、同世代男子で構成された組織とも言えない集まりに入ろう、というその勇気が全ての出発点だったのかなと思います。なかなかできることではないですよね。育休後、会社の本業と「親」業と副業もこなしているパワフルさにも納得です。入社時の経緯については、本人によるnoteに詳しいです。

この出会いがなかったら、弊社は同世代男子の集まりのままだったかもしれません。


まぁ、なんとかなるでしょで外国人採用開始

社員ゼロの何もないところから、産休育休時短リモート勤務を含めた制度を急ピッチで揃えられたことに、気をよくしていたのかもしれません。PHPエンジニアを探しているときに、人材エージェントが呟いたひとこと「ご紹介は日本人じゃなくても大丈夫ですか?」に敏感に反応。

取締役に、アメリカ在住経験があったり、海外留学経験があったりするメンバーがいることから、「まぁ、日本語もある程度できて、英語が通じるなら、いけるっしょ」というノリで、2名の外国人エンジニアを一気に採用しました。この複数名というのがポイントだったのかもしれません。

現在では会社の中核メンバーとなった二人。一人はCTOに就任しました。日本人が創業した小規模企業で、外国人が責任あるポジションに就くのも、割と珍しいことみたいです。


日本企業の女性への冷たさを実感

当初はオフィスも持たず小規模スタートをした弊社ですが、オフィスを借り、本格的に拡大していこうという中で、女性の採用が増えていきました。この理由として、「えっそれだけ?」と思われるかもしれませんが、主に求人票に「時短勤務アリ」と書いたことが理由だと思います。

様々な方と面接でお話ししていて驚いたのですが、世の中には時短勤務が選択肢として存在し、残業なく帰れる、という条件の求人が実に少ないらしいです。また、あっても実際にそう言った働き方の事例があるのかというと、「制度上は存在する」だけというパターンもあります。弊社の場合は、実際に時短かつリモート勤務の女性社員がいることが、興味を持ってもらえるきっかけにもなったようです。

硬直した拘束時間に加えて、長時間の残業も当たり前。こんな会社では、女性自身が、結婚・出産後は元いた会社の働き方には戻れないと感じても仕方がないですね。また、会社が元いたポジションに戻さないという話の多いこと!確か、育休後に元のポジションに戻さないのは違法だと思うのですが…。実際にそれが理由で転職活動をしている人が面接に次々来られるわけで。不思議ですね〜。

というか、本来は性別に関係がない話なんですよね。全ての希望がかなうことなどないとしても、誰だって、自分の働き方を会社と相談くらいしていいはずなのに…。せっかくの優秀な人材を、わざわざ追い出すような真似をするのは、実に謎ですし、損をしていると思います。おかげで、弊社のような弱小企業でも優秀な人に来てもらえるチャンスが生まれるわけですが…。


日本人の外国人アレルギーは深刻

外国人採用で、いろいろな候補者を面接したり、また入社した社員と話をしていての気づきとしては、「本当に日本人は外国人と接しないんだな〜」ということです。

ある外国人エンジニアは「日本以外の国なら、しばらく暮らしていれば現地の言葉を覚えられる。でも日本では、日本人が誰も話しかけてこないので、全く言葉が覚えられない」と言っていて、さもありなん、と思ってしまいました。彼は「今の会社は日本人が話しかけてくれるので嬉しい」と言っていて、逆に話しかける程度で喜んでもらって申し訳ない、という気持ちになってしまいます。

日本人は…という大きな主語は好きではないですが、やはり外国人=英語という思い込みと、英語アレルギーの組み合わせは本当に強力で、日本で外国人に会っても関わらないでおこう、という態度を取る日本人が多い。しかし、ここは日本なんだから、日本語で話しかければ良いんです。実際、観光客ならいざ知らず、日本に住んでいる外国人に一番通じる言語は日本語です。次点でポルトガル語とかでしょうか?

面接をしていて、日本で就職したあとに日本人との関係性で良い思いをせず、転職する人がそれなりに多いんだなというのは実感しました。日本で転職しようと思ってくれるならまだマシで、他の国で働こう、母国に帰って就職しよう、となってしまったら、日本経済にとっての損失ですよね。まぁ、おかげで弊社のような弱小企業でも優秀な人に来てもらえるチャンスが生まれるわけですが…(2回目)。


語学研修でコミュニケーションをサポート

様々な母国語をもつメンバーが集まる弊社では事実上、公用語が日本語と英語の併用になっています。「全員英語の使用を強制!」のようなことは好きではないので、基本的に相手の語学能力に合わせたり、その場その場で使いやすい言語を使うようになっていると思います。

例えば私がCTOと話すときは、彼が英語で話し、私が日本語で答えることが多いのですが、お互いに日本語と英語の両方が程度の違いはあれ使えるので、場合によっては逆転したり、英語だけで話したりします。

このように、外国人メンバーは基礎的な日本語が使え、社内では基本的に問題なくコミュニケーションできているのですが、実生活では、役所や病院など日本語が使えないと不利益を被る場面は多いものです。日本で働き続けたいと思って欲しいので、外部講師を招いてマンツーマンの日本語研修を実施しており、さらなる日本語能力の向上をサポートしています。講師の方が、日本語初学者にはこういう言い回しの方が伝わるよ、と日本人にアドバイスをしてくれるのもとても助かります。

日本人メンバーも英語の語学研修が受けられるようになっていますが、こちらは手探りが続いています。生活がかかっている外国人に比べて、どうしても日本で暮らす日本人にとって、語学の優先順位は高くないものです。とは言え、Web技術の最新情報は常に英語で提供され、日本語に翻訳されるのはそのごく一部、という事実だけを取っても、英語を学ぶメリットは計り知れません。


多言語チームにとって、テレワークは正直厳しい

語学研修を実施しているとは言え、もちろんほとんどのメンバーはバイリンガルではありません。身振り手振りのボディランゲージを交え、ホワイトボードに絵や図を書いたりして補足し、やっと伝わる。ということも多いのが外国語コミュニケーションというもの。それだけに、昨今のテレワークの実施により、言葉以外が封じられるのは非常に厳しい。

エンジニアはまだ、プログラムコードという最強の共通言語があるので、ソースからお互いの意図を読み取ることが可能ですが、非エンジニアのスタッフについてはかなり苦労をさせているなと思っています。

この解決策としては、ひとりひとりが理解しやすくする工夫が必要ではないかと思っています。日本語話者は「やさしい日本語」を、英語話者は「やさしい英語」を使う。そういう社内勉強会も必要かなと思い、色々勉強しています。

将来的には、日本全体で外国人採用の需要が増えて、外国人に伝わりやすい「やさしい日本語」を日本人に教える講師を専門でやる人が出てきたりするといいですね。

とはいえ、そもそも言語関係なく、テレワーク環境ではより積極的にコミュニケーションを取ることが必要かなと思っています。画像や動画などのマルチメディア、絵文字など非言語コミュニケーションをうまく使ってコミュニケーションの質を補っていきたい。私自身がもともとフリーランス気質なので一人で黙々と作業をしてしまいがちなのですが、企業としてはコミュニケーションの質が生産性に直結しますので、手探りしながら改善していきたいと思っています。


宗教を分かった気になってはいけない

メンバーが多国籍になるということは、必然的に多様な宗教を信じているということです。弊社にはイスラム教徒のメンバーもいるのですが、日本人に馴染みの薄い宗教ですので、逆に「イスラム教ってこういうものでしょ」「イスラム教徒にはこういう配慮が必要なんだよね」とWikipedia程度の知識で分かった気になりがちです。私もそうでした。

しかし、実際にいろいろな話をしていく中で、日本社会ではたまたまマイノリティな宗教を信じているからと言って、配慮が当たり前に必要な存在ではないのだ、ということに気づかされました。1日複数回の礼拝の義務や食べ物の禁忌などがある彼らに対して、日本で暮らすのは大変だ、支援が必要だ、などと思うのは勝手な思い込み。彼らは彼らなりに色んなツールを使いこなし、工夫して快適に日本で暮らしているのです。

例えばムスリム向けのアプリを教えてもらったのですが、めちゃくちゃ便利な機能が詰まってます。ネットの知識の思い込みで、「会社に礼拝室を作らなきゃいけないのかな?キブラで礼拝の方向が分かるようにしなきゃ困るのかな?」なんて思っていたのですが、「全然いらない、アプリさえあれば困らないし、勝手にやるから」と言われて拍子抜けしたのを覚えています。

もちろん、弊社のスタッフがそうだというだけで、神の信じかたも一律ではなく、信仰はひとそれぞれです。人によってはもっと厳格に礼拝しているかもしれないし、一方ではお酒を飲むイスラム教徒もいます。ネットで手に入る知識ではなく、本人と話して得る知識の方が相互理解にとって良いですし、なにより面白い!

仲の良いエンジニアたちは、教えてもらってプチラマダン体験もやっていました。本場の断食を経験できる機会なんで、日本人だとなかなかないですよね!もちろん、ラマダン体験をやるべきということではなく、大事なのは本人の気持ちなのかなと思います。人によっては他教徒が宗教儀式に参加するなんて許せない!という人もいるかもしれないし、日本人ももっと気軽に自分の宗教に理解を深めて欲しいと思っているかもしれない。しかし、もし後者なら…もっと積極的に交流して良いと思います。


ジェンダーを分かった気になってはいけない

宗教と同じ話で、ジェンダーも人それぞれです。捉え方も誰一人同じではないのだから、安易な理解したつもりは慎むよう自戒するようにしています。

あまり他の会社の実態がどうかは分からないのですが、弊社は生理休暇も気軽に取れるし、宗教儀式でも気軽に休んでます。休みや残業が評価に直接影響しない仕組みを取っていますので、休暇が取りやすいのはいい環境なんじゃないだろうか…と勝手に思っています。色んな会社の実態を聞いてみたいところです。

とはいえ、本記事が外国人の話がメインなのでお気づきの通り…ジェンダーギャップについてはまだほとんど取り組めていないです。こちらも勉強していきたいと考えていますし、冒頭でご紹介した第一号社員の成長と昇進にも期待しています。


BacklogやMoneyForwardなど日本発日本企業向けサービスの英語対応がイマイチ

ITツールの国際化が進んでいないのは本当に盲点でした。同業者はほぼ100%使っていると言ってもいい、プロジェクト管理ツールのスタンダード、Backlog。世界に向けてサービス展開しているため、英語対応済みなのですが、「種別(Issue Type)」など一部に日本語が残ってしまう。一部とはいえ使わない機能ではないので、地味〜に不便です。

また、勤怠管理や経費精算はMoneyForwardを使っているのですが、英語対応は非常にお粗末なもの。やろうという気は感じるのですが、全体としては対応してないと言って良いレベルだと思います。結局弊社では英語でMoneyForwardの使い方マニュアルを書く羽目になっています。


日本に定着して働く外国人を増やすために、社会保障協定締結国の拡大を!

日本で働く弊社の外国人スタッフは、全員厚生年金に加入しています。これは加入しないという選択肢はありません。強制的に加入になるのが日本の制度になっています。しかし、日本で経験を積み、いつかは母国に帰ろうと思っている外国人にとっては、日本で年金を受け取る予定はないわけです。となると、当然払い損になります。

これは明らかに不利益ですので、それを調整し、母国に帰っても、保険加入期間を引き継げるようにしよう!という制度が、社会保障協定になります。

ただ、この協定が発効済みの国はたったの23ヵ国。弊社スタッフの母国は残念ながら全て対象外…。

母国が協定対象外の場合、取れる手段は脱退一時金です。日本を離れるときに、納付済みの保険料の一部が返ってくるという制度です。

この一時金も全額ではないので、一部は年金保険料の払い損になりますし、そもそも母国では年金に加入していたことにならない。これでは、あまり長期間日本で働くのも考えものだな、となりませんか?ぜひ、協定の加入国を増やしてください!誰にいえば良いのかな。厚労省か。


多様性を生かしたチームへのチャレンジはこれから

いつの間にか多様性を持つようになった弊社ですが、もちろん社長の私の意向が働いていない、ということはありません。同世代のオッサンだけのチームでは思考が硬直化する一方、多様性のあるチームは変化に強い、そういう組織になるべきだ、という信念はあります。

しかし、難しいのが、だからと言って属性で採用するのは間違いだ、ということです。女性だから採用するとか、外国人だから採用するというのは、やってはいけないこと。あくまで、弊社のビジネス上必要な人材と目指す規模があり、そのゴールに向かって冷徹に採用しなくてはいけない。あくまで能力で採用して、結果的にいろんな属性のスタッフが集まっているのがベスト、ということになります。

となると、そうそううまくいかないはず。と思っていたのが、なぜかうまくいってしまった。いよいよ手に入れた多様性を何に活かせるのか、という次のビジョンを持つ必要性を感じています。つまり、具体的なサービスとしてお客様の目に見える形にするということですね。まずはモデルケースの構築からと考えています。

弊社の日本人社員にとっては、日本語が普通に通じないことが不便だと感じることも多いと思います。外資系に就職する人は当然覚悟してるでしょうが、弊社は普通の日本企業。まさか英語力がそんなに必要とは…と入社してから気づく社員もいるかもしれません。

しかし、今後日本ではますます外国人高度人材が増えるのは間違いありません。今から彼らと一緒に仕事をする経験が積めるのは絶対にキャリアにとってプラスだと思います。また、多様性を持つチームというのは、どんな人にとっても働きやすい環境であるはず。ですので、もう諦めて(笑)、このチームで何ができるのか、というチャレンジに、ぜひ付き合って欲しいなぁと思っています。

あと、今は世界を覆う感染症の渦中ということもあり積極的な採用はしていませんが、もしこの記事を読んで興味があればコンタクトを取って欲しいなと思います。


あと色々と書き残したいことはあるのですが、乱雑になりそうなので、いったんここで筆を置きたいと思います。もし質問などがあれば、コメントいただければ追記します。長文をお読みいただきありがとうございました!

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