歌はとんと鳴かなくなってしまった。
何かを語ろうとすると、虚しくなるような、そんな夜もある。
最近、僕の歌はとんと鳴かなくなってしまった。
昔のフォークシンガーの歌詞みたいだ。
こんな寂しい夜には、こうして日記を書いてみたくなる。
どうやら、今日も一曲仕上げられなさそうだ。
新しい歌が必要だ。
そんな風に思う。
しかし、あまりの時代のスピードに追いつけず、
茫然と立ち尽くしているという有様だ。
自分の事をこうして振り返る時間が有るだけ、まだ幸せだと思った。
僕の部屋には今、F100号の油絵が置いてある。
毎日、それを狭い部屋の中で眺めている。
自分で描いたのだが、なかなかの出来だ。
今度、公募展に出してみようかと思っている。
もっと前向きなメロディと、開かれた歌詞を書きたいなんて思っている。
湿っぽい歌は、多分もう書き尽くされたから。
そんな気がしている。
何も悲観してないし、かと言って楽観も出来ない。
そんな夜だ。
幸せだ。
ただ生きている事が。
僕は、普通になれただろうか?
10年以上前に、親友に言われたあの言葉を僕はさっきから反芻していた。
「あなたに"普通"という感覚が加われば、あなたに怖いものはないでしょう。」
予言めいたその言葉を、あれから十数年間、追い求めていたような気がする。
結果、普通になれたような、なれなかったような。
けど、僕はその淡い期待に胸を膨らませて、日々、何が"普通"かを吟味するようになっていた。
僕はいつの間にか、人と喋るのが好きになっていた。
それ以外にもある。
若い頃は、音楽という夢を、30を過ぎたらとうに諦めていると思っていた。
だが、30を過ぎた今、僕はようやく、何かを掴み始めたかのように、歌で表現する事を、音楽を作る事を、諦めきれなくなっていた。
業界がどうのとか、そんな事は正直どうだって良いのだ。
ただ、音楽がやりたいだけなんだ。
いつかこの想いが、この現に形となってその片鱗を見せるまで、僕はいつまでも歌っている気がする。
そう、忘れた頃に良い歌が出来て、それを人前に晒したいと思う時、本当の人生が始まる。
あの時、友人が言ってくれた言葉は、より一層僕を、歌の世界へと引き込んでくれたように思う。
話が長くなった。
日記にしては長すぎるように思う。
明日もまた、満足できるかな。
新しい歌との出会いに、期待を胸に躍らせながら、僕は今日も眠りにつく。
2024.2.5 菱田哲
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