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ポジティブメッセージを伝えたい

臨床現場では患者自身も医療従事者も、自身が持っている肯定的な力を気づけずにいると感じる場面が多々ある。
人は人との肯定的な関わり合いによって支えられ、自身の力を信じて発揮できた時、また人の支えとなる。だからこそポジティブメッセージの重要さを痛感する日々を振り返りたい。

在宅の現場で、肺転移のある患者さん

Aさん「トイレ行くだけでくたくただよ。このまま疲れて死んでしまうんじゃないかと思うから、元気になる薬とかないのかな。」

Ns「すごく疲れやすい状況辛いですね。元気になる薬ですが、実はプレドニンと言ってすでに飲んでいるんですよ。前は飲んでいない時トイレに行けないときもありましたが、今は行けるようになってるんですね。できることが増えて、頑張っていますね」

Aさん「この前は本当に心配かけたからね。あとはこのすぐ疲れるのをどうにかして(笑)」

Ns「今は体力を回復させる時期なんですよ。これまであまり動けなかった体が、少し元気になって動いたから肺が休憩させてと言っているんです。苦しい時は体を休めながら酸素を当てて楽にする。その積み重ねで体力は回復していきますから。」

Aさん「そうか。じゃあこれ(高栄養飲料)も飲んだら良いね」

Ns「ナイスアイデアですね!盲点でした。さすがです。」

循環器病棟にて、ペースメーカーオペ後3日目

Bさん「足を布団から出して、ティッシュは左、タオルは柵にかけて、ナースコールは右手の近く」

Ns「こんな感じですか」

Bさん「うるさいと思ったでしょ」

Ns「え」

Bさん「私は物の位置とか細かい所気になるから」

Ns「………それは身の回りをきちんとしたいからですよね。術後すぐは気も回れなかったでしょうけど、今は意欲があって嬉しく思います。その意欲はまた以前のような生活に戻れるために役立ちますよ。しっかり者なんですから。」

Bさん「叱られると思ってたら、褒められるとわね。ありがとう。」

回復期病棟にて、退院前

Cさん「いよいよ来週退院だ。荷物多いな」

Ns「約6ヶ月の入院でしたからね」

Cさん「長く居すぎたかな。退院して何するか、正直分からないよ。」

Ns「そうですよね。分かるようになるまでぼちぼちやっていくってのはどうですかね。」

Cさん「焦っても仕方ないか」

Ns「そうですよ。せっかく大きな骨折を乗り越えて、歩けるようになったんですから。まずはぼちぼち生活を。それから囲碁でしたっけ?また教室に行ってみるとか。」

Cさん「そうだ治したぞって自慢しないとな。」

Ns「良いですね。リハビリの経験はCさんプロの領域ですから。」

Cさん「またそんなおだてて(笑)まぁぼちぼちやっていくわ。」

振り返って思うこと。

医療も生活も、私たちの暮らしと言葉は切っても切れない。そして人は希望に向かってしか意欲を出せない。
ポジティブメッセージの本質は、事実を把握した上で展望のある世界と未来をイメージさせることにあると私は思う。

看護師として健康に対する知識や話を聴く技術にはそれなりの自信がある。
だけど今寝ているベッドのこと・着ている服のこと・文字を打ち込んでいるスマホのこと・ノートアプリのこと、知らないことばかりだ。

だから世の中のほぼ全ての人が、自分より優れた何らかの経験・能力を持ち合わせていて、それぞれが自分の強みに気付きを与える「ポジティブメッセージ」をこれからも大事にしていきたい。

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