凡人社長が売上を3倍にした処世術━━わからなければ「さっさと人に聞く」

私は、自分を「凡人社長」だと思っています。

最短で最大の結果をだしてきたわけではない。経営者として圧倒的なカリスマがあるわけでもない。優秀なわけでもない。いつもそう思っています。

それでも、売上を3倍に増加させたり、新規事業を1年目で黒字化できました。見切り発車ではじめたTwitterは、7ヶ月でフォロワー数4,000人を到達。

ただ、私が特別だったからではありません。人とのつながりを大切にし、「人に頼る」を徹底してきたからだと思っています。

今日はそんな話をしていきます。

突然ですが、連載「凡人社長の処世術」をはじめます

不思議なことに、お客さんから「柳井工業の売上を伸ばした秘訣を教えてください」「柳井さんのポリシーを聞きたいです」といった声をいただくようになりました。

最初は言葉に詰まりました。これまで、深く考えたことがなかったんです。

せっかくの機会なので、私の”経営哲学”をまとめていくことに。自戒も込めています。

１：わからなかったら、人に頼る←いまココ
２：人に流されても、責任は自分で取る
３：どんな人とも対等に。いつか一緒になるかもしれないから

連載「凡人社長の処世術」のお品書き

「自分だけの力で」は、たかが知れている

私が”つながり”を大切にしている理由

大前提として、私が人がすきです。いつも”人とのつながり”を大切にしています。

理由はいたってシンプルで、わくわくするからです。

新しいアイデアに出会える。自分が知らなかった世界を連れて行ってもらえる。そんな経験は、意外にも”人”から生まれていました。

私が常々、感じていることがあります。自分の力はたかが知れている、ということ。

「もっと自分が頑張れば、売上はあがる」「もっと自分が頑張れば、きっとうまくいく」。

そんなことを、考えたことはありませんか？

でも悲しいことに、それは幻想な気がしていて。自分だけが頑張るよりも、人に頼った方が、結果が何倍もよくなるからです。

野村時代、社長さんから「餅は餅屋」を学ぶ

私は、野村證券に新卒入社をしました（以下、野村）。

業界トップの証券会社ということもあり、社長さんやお金持ちとの出会いがたくさんありました。

新卒の私に、経営のいろはを教えてくれたり。得するお金の話を、包み隠さず教えてくれて。今思えば、かなりレアな体験をさせてもらっています。

そして、大切なことを学びました。

社長さんやお偉いさんは、人の力を積極的に借りているということ。決して、自分の力だけで解決しようとはしないんです。

本やネットで学ぼうとせずに、その道のプロに聞いていました━━税金は、税理士に。資産運用は、証券会社に。法律は、弁護士に。

「餅は餅屋」だなと。それと同時に、すべて自分で知ろうとしなくてもいいんだと、肩の荷がおりましたね。

父のガンが発覚し、会社を継ぐことを決意。「人に頼る」を徹底する

柳井工業は父の会社です。今から15年前、父のガンが発覚。これを機に、私が後継になることを決意しました。

野村から柳井工業へ転身してからは、とても辛い日々がつづきます。というのも、未経験のプラント業界だったので、ついていくのに必死でした。

プラント業界は、大卒がめずらしい世界。一応、立教出身なので「どうせ、すぐ追い越せるでしょ」と甘く見ていたんです。

でもすぐに、現実を目の当たりにしました。学歴問わず、柳井工業のメンバーが優秀だったんです。

現場に行っても、私は使い物にならずにお荷物状態。

なんとかしないと。もっと勉強しないと。そう思っていましたが、ふと、野村時代に学んだ「餅は餅屋」がよぎりました。

入社当時、そもそもプラントをよく知らなかったので、まずは職人に「プラントの仕組み」を聞いてみました。

一人で学ぶよりもはるかに効率的でしたし、仲も深まり、もっと教えてくれました。

職人から「プラントの部品を作っているのはメーカだから、いろいろ聞くといいよ」。そう言われたので、素直にメーカーの担当者に話を聞いてみることに。

その助言は的確でした。

職人からは”プラントの組み立て方”を、メーカーからは”機械の成り立ち”を学び、包括的にプラントの仕組みを知れたんです。

結果的に、柳井工業に入って5年目で経営者になれました。

最短でなれた理由は、自分だけの力に頼らず「わからなかったら、すぐに人に頼る」を徹底したからだと思います。

・・・

「できない奴」と思われたくない。そんなプライドから、自分だけの力でなんとかしようとする人を沢山見てきました。もちろん、私も経験済みです。

でもその力は、限りがあります。

わからなかったら、さっさと人に聞く。教わったことをすぐにやってみて、報告をする。それだけで、ぐんと自分の視野が広がるはずです。

これからも私は、徹底的に人を頼ろうと思います。