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比べない教育・比べない評価

 評価には、相対観(他と比べる見方)に立つ評価と、絶対観(何物とも比べない見方)とがある。

①集団準拠評価・相対評価
 学校における相対評価とは、集団内の他者と比較して順位やランクを明らかにする評価である。教育界ではこれを「集団に準拠した評価」(いわゆる相対評価)と呼んでいる。略して「集団準拠評価」とも呼ばれる。

②目標準拠評価
 他方、集団内での順位やランクを見るのではなく、学習指導要領との目標に照らして、その到達度や満足度を見る評価がある。これが「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)と呼ばれている評価である。略して「目標準拠評価」とも呼ばれる。しかしこれは、事前に立てた到達目標と比べるので本質的には相対評価である。自動車運転免許試験は、目標に達していれば何人でも合格するので、厳密な意味での「目標準拠評価」と言える。司法試験は、定数調整的な機能もあるので、相対評価的な性格も混入していると言われる。

③標準テストによる評価
 全国テストを行って、全国平均と比べてその上下を見る評価も、本質的には集団準拠評価としての相対評価になる。

④個人内評価
 集団内の他の人と比べない「個人内評価」と呼ばれるものもある。それは、集団内の他者と比べないという意味では、絶対評価的な側面もあるが、しかし、過去の自分と比べるという意味で、本質的には相対評価。

⑤理想の姿を想定した評価
 教師が理想とする姿と比べる評価もある。これは、他の人とは比べないが理想の姿と比べるので、本質的には相対的評価。

⑥絶対観に立つ評価・真の絶対評価
 何物とも比べないで、現在のありのままの姿を見てその価値を受け止める評価。これこそが絶対観に立つ評価であり、真の絶対評価である。完全な絶対観に立つ評価の目に立つことは、人間には不可能。しかし、その境地に近づくことを願って、子ども一人一人のありのままの姿を見て受け止めようと心掛けることはできる。そういう見方に少しでも近づけば、近づいた分だけ、教育や学校における不寛容で息が詰まるような空気が、少しでも和らぐに違いないと、私は願っている。

 6月10日に、佐野 比呂己教授主宰の「国語を学ぶ会」オンライン研究会で、評価について話します。 
2023年6月10日土曜日 14:00〜17:15
国語を学ぶ会6月例会(第136回)【完全Zoom】

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