見出し画像

レポート:オンライン発信塾第3回「公共空間を公民連携で考えるー津山市公民連携の事例ー」

 この記事では「地方のカチを高めるオンライン発信塾~しょうおう志援塾2020~」第3回「あなたのテーマを形に~あなたのやりたいを整理しよう~」についてまとめたいと思います。9月18日(金)に開催されました。

 オンライン発信塾の概要、前回第2回のまとめについてはこちらをご覧ください。

1.今回のテーマは、まちづくりにおける公民連携

 オンライン発信塾の参加者はほとんどが民間企業や団体に所属の方です。まちづくりに関わっていると、避けては通れないのが役所や役場(行政もしくは官)との関わりとなります。場所を借りたり、必要に応じて助成金を申請したり、広報をお願いしたり、さまざまな関わりが出てきます。しかし連携するには苦戦することも多いです。

 そのため、今回は津山市役所で公民連携事業のお仕事を担当されている川口義洋さんに講師をお願いしました。勝央町ご出身というご縁もある方です。

2.公民連携とは

 岡山県津山市では、公民連携事業に積極的に取り組んでいます。公民連携とは「PPP(Public Private Partnership)」とも言われます。少し長いですが、津山市のHPの説明を引用したいと思います。

 公民連携(PPP)により津山市の未来を変える新しい制度として、民間事業者から独創的なアイディアやノウハウを活かした事業提案を募集し、民間提案型の公共サービスを実施するものです。
 従来の行政主導の公共施設等の管理・運営ではなく、公共サービスに対する市民ニーズを的確に捉えた上で、民間事業者の皆様にとって、新たなビジネスモデルの構築に役立てていただくとともに、収益性のある公共サービルを実践することが、今後、津山市においても持続可能な行政運営の実現に必要不可欠と考えられます。

1.制度について
 本市が保有する公共施設等で施設整備や運営面において、更なる利活用をはかり、民間事業者ならではの独創的な提案を求め、本市の施策や公共施設等のマネジメントに大きく貢献する提案を選定。その後、本市と民間事業者との間で対話と協議を経た後、事業化をはかるものです。いただいた提案内容を知的財産として扱い、その情報及び、内容を保護した上で、提案をいただいた事業者と随意契約をすることを前提としています。

津山市役所HP「~公民連携(PPP)による津山市の未来を変える新しい制度~運用開始について」より

 行政主導で提案したことを民間が受託するのではなく、民間が提案することがポイントになりますかね(詳しくはググってください…^^;)。

 川口さんは2019年に民間の公民連携のスクール「都市経営プロフェッショナルスクール」でPPPについて学び、実践されています。ここでは地域のお金の問題から目をそらさず地域を「経営」する視点を養うそうです。修了生がNPO法人自治経営として活動しています。

3.津山市の公共施設の現状

 川口さんは大学で建築学を学ばれ、建築専門職として役所に就職して、建築営繕や指導の仕事をしてきました。2015年から公共施設の管理に関する仕事に関わっていったという経緯があります。川口さんは公共施設を見直すにあたりカルテとしてデータベース化しました。当たり前ですが、公共施設は建てる時以外に維持管理や修繕にもお金がかかります。この部分を整理すると、老朽化して使用に支障が出ている施設があることが見える化されました。

 さらに運営も含めると大きな赤字が出ている施設があります。公共施設だから赤字で良いわけではありません。なぜなら、公共施設を利用している人は人口全体の約1・2%と言われているそうです。「これで良いのか」と考えることが大事だと、川口さんから説明がありました。

4.見切り発車の「全国初の学校断熱ワークショップ」

 さらに、2019年、川口さんは建築士会と協力して、小学校の断熱ワークショップを開くことを提案します。学校は耐震などの基準があり、維持管理にも効率的に設計されていると思いきや、実は学校の断熱性能は最低レベルなんだそうです。最近は冷暖房完備になって快適になっていますが、エネルギーコストはかなりかかってしまうそうです。確かに、私も学校というと冷たい床と壁、スース―する簡素な扉だった記憶があります。これが自宅だったら光熱費は恐ろしいと思います。

 このきっかけは、先述した都市経営プロフェッショナルスクールのメンバーから「そそのかし(悪魔のささやき)(笑)」にあったそうです。それから断熱の専門家を招き、建築士会の仲間とともにワークショップを開催を計画します。計画開始が6月で、それから教育委員会の許可を取り、夏休みの8月中に作業を終わらせるという、強行突破の日程をこなします。お金の工面も含め、このエピソードは聞いていてハラハラしました。

 断熱の効果でエネルギー効率は絶大。さらに子どもたちも快適に授業を受けることができるようになりました。断熱ワークショップの様子は動画でご覧いただけます。

5.『試行・トライアル・プロトタイプ』が大事

 断熱ワークショップのように、いかに「とりあえず」できるかが大事。この考えで川口さんは津山市の他の事業にも関わっています。

 「トライアル・サウンディング」という公共施設・公共空間の利活用を社会実験から開始し、民間にも参入しやすくします。津山市では公園や市役所前のスペースを活用した取り組みも「お試し」でスタートしています。

6.お金を「払う」建物から「得る」建物へ:「町屋ホテル」の事例

 こちらは少し大きな事業。公共財産の古い町並みの町屋の活用についてです。こちらを投資とリターンの視点で見ていきます。

 改修が必要な建物でしたが、もともと市が改修してその後の指定管理を民間にお願いするというのが良くある方法で考えられていました。これでは指定管理料として継続して費用が発生していきます。5年などの数年単位の契約では、民間の建物に対して創意工夫をする余地が少なくなります。

 しかし、ちょうど市長交代のタイミングでコンセッション方式に変更となります。20年という長期契約で民間が市に運営費を支払います。その代わり、改修は民間の意向によって進めることができます。これにより、民間サービスにとって稼げる改修ができ、運営費として市は収入を得ることができます。こうしてできたのが、「城下小宿 糀や(こうじや)」です。

7.共感・コンテンツ・チーム

 今回の話のまとめとして、従来行政の公共施設は建物(ハコモノ)があることに価値があったが、今はそれだけでなくどんなコト、コンテンツを提供できるものか大事だと言われました。行政の仕事も「行政サービス」という言葉で評価されるようになりましたね。この「コト」をつくるのは民間の強さを活かすことができます。これは都会田舎関係なく、地域で共感できる魅力があれば人が集まり、地域が稼ぐことにもつながります。

 今、公民連携という言葉も少しずつ広がってきているようですが、単に行政の仕事を民間に与えるだけでは目的は達成されません。川口さんはPPPやコンセッションという仕組みだけが広がっているのを危惧しているそうです。そこには、動かすことができるメンバーがいるチームが作れるかにかかっています良いチームは初めは数人程度でも価値観が共有できる人がいれば動き始めます。断熱ワークショップでも数人でスタートしたからできたと言われていました。

8.質問:価値観の共有できる行政の人と出会うには?

 参加者からの質問として「行政には熱意のある人とそうでない人との差が大きく、どうやったら川口さんのような人と出会えるでしょうか」というものがありました。私も、役所や役場の人と相談した際の杓子定規な回答のイメージは浮かんできます。

 アドバイスとして「○○課とか看板を見るのではなく、別の課の方でも信頼できる人に相談して紹介をしてもらう」だそうです。

 自分自身がチャンネルを開いて行動して、信頼できる人と出会うことが大事だということを教えていただきました。ここは行政、民間問わず、一緒かもしれません。私も「聞いてくれない」は言い訳かもしれない、小さなことからでも動き続けようと感じました。


【この記事は、こちらのメンバーと刺激しあって作成しています】
 私は「Locally Driven LABs(LDL)」のプロジェクトの1つ“地方のオンラインの普及と価値の創造“にも所属しています。ここでは、参加者同士でオンラインツールの情報共有を記事にしています。地方で実践しているメンバーがオンラインツールの使用感、参考事例などを話しており、資料としても活用できるよう整理しています。

Locally Driven LABsについては


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?