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レポート:「まちづくり幻想」新書出版イベント(+アフター企画の読書会)

 この記事では、4月14日に開催されたイベント『「まちづくり幻想」新書出版イベント LDLゼミナール』について報告したいと思います。まちづくりの第一人者、木下斉さんのコーディネートするLDL(Localy Driven Labo)という全国各地でまちづくりを実践しているグループのメンバーが、木下さんを講師として招き、新刊のイベントを行いました。私も、ファシリテーション役として参加しました。

本の概要はこちらです。

このイベントの詳細は、案内ページをご確認ください。

つなたいですが、私の読書レビューもあります。

1.自分のまちの幻想をさらけ出し、集合知を!

 冒頭、木下さんのあいさつでは、地域の中で、現実離れしたまちづくりの計画や取り組み、などの「まちづくり幻想」について共有し、明らかになった幻想を振り払うべく、集合知を作りましょうとのコメントがありました。

 このイベントの特徴は、自らお金と時間を払って参加した全国のまちづくりに意欲ある人の中で、自分のまちの取り組みの矛盾を安心して吐き出せるということです。そして、木下さんをはじめ、全国の活動で活動しているメンバーが、現実的にできそうなことを考えていくことにあります。地域のいわゆる「偉い人」が集まって行う懇話会のように、『「お金がない」「人がいない」など愚痴や不満を言って、終わる会とは違いますよ』、ということです。

 会の中では、活動している立場など、できるだけ似たような背景の人がまとまるように、5つのグループにして、ディスカッションをしました。途中、木下さんもグループをうろうろしていただき、コメントしていただきました。

2.「幻想」として話題になったものをピックアップ!

 国の号令によって、全国津々浦々、いろんなまちづくりが行われていますが、昭和の時代の高度成長、人口増加、終身雇用、みんなで一緒に、などなど、「古き良き」日本的な考えで行われていることが多いです。5つのグループでよく出てきた内容をピックアップしてみたいと思います。

・安いのは良いこと
・世の中には「正解」がある
・人が増えたら良い

 木下さんのコラムなどでよく聞きますが、安いのが良いということは、これがそもそもの間違いで、戦後の食糧不足で食べるものがなかったころの時代から続くマインドのようです。生産者が安くそこそこのものを作れば、それが売れて、消費者、生産者、ともに潤う、しかし、そんな時代はもう終わっています。世界中で大規模生産が進む中、安さだけで競うのではなく、生産物の質を高くすることが大切、そのためには、人材育成、多様性が大切になります。

 まちづくりでは、国が旗振りすることで、誤解が広がりやすい状態にあります。少し前からのもので観光に関する「DMO」、最近では「ワーケーション」などです。でも、まちづくりには「正解」はありません。予算をつけて、一律に全国で行っても、補助金で一時的に潤っても、長期的に競争力はつきにくいです。新しい枠組みに反応するだけでは、地域の稼ぐ力はつきにくく、じっくりと戦略を考える必要があります。行政は間違ってはいけないものに取り組みにくい組織です。本来は民間が主体的に稼ぐ力をつけるよう考えるべきです。

 「人が増えたら良い」というのも根本的な幻想で、それにともない、移住、少子化対策、関係人口、いろいろ取り組みがありますが、それらも幻想だという意見で盛り上がりました。人口が少なくても、稼ぎがしっかりあって、楽しくて幸せならば、それで良いはずです。安くたくさんの時代は、働く人もたくさん必要でしたが、時代は少数精鋭の時代に移り変わりつつあります。デジタルなどツールを駆使したら、小さい規模でも、収入を得られる時代。全国の実践者の声は、説得力がありました。

3.アフター企画も盛り上がっています!

 4月18日の日曜日、LDLメンバーが参加する読書会を企画し、今回のイベントの参加者にもお誘いしました。数十人が集まるイベントと違い、小規模だと、お互いにのんびり落ち着いてお話ができました。次回、4月25日も開催予定です。

読書会の案内については岡崎さんの記事をご覧ください。

 この会で盛り上がったのが、「移住者が増えても人によってはちょっと大変」という話題でした。やみくもに移住者が増えても、現地の人とのトラブルがあったり、行政としても(言葉を選ぶところですが)トラブルメーカー的な人だと負担が増えたり、ということで、良いことばかりではないという話がありました。ただ、もちろん、来る者を拒むことはできません。

 でも、「移住してください」と招くのであれば、「この地域はこんなところです」、「こんな人に暮らしやすいところです」と伝えたり、現地の人にも受け入れる気持ちになれているか、確認したり、とコミュニケーションをとる必要があると感じます。場合によっては教育や福祉の受け皿も大切ですね。

 「まちづくり幻想」はそれを信じている人には、その幻想を感じることができません。でも、まちづくりで熱意を持って活動している人は、うすうす幻想に気づき始めるはずです。私もまちづくりについて考える中で、木下さんの書籍と出会いました。地域の中で、幻想に気づいた人は想いを言葉にして伝え、コミュニケーションをとって、仲間を作ることが大切なように感じました。

4.イベントを開催して感じたこと

 私はサブ的な立場で運営に関わっていましたが、感じたことを書いてみます。

 ・イベント運営は、運営する人の気持ちを近づけることができる。
 ・外部の人と関わることで、刺激を受ける。
 ・どうやったら広報が伝わるか、参加者に満足してもらうか考えることで、自分が勉強し、実践につながる。

と、いうことです。LDLのメンバーには、活動分野、地域がさまざまで、相手のことを理解できていない人もいましたが、このイベント運営を通じて、相互理解が深まりました。このことで、今後の活動の原動力となることと思います。

 また、LDLは会員制のコミュニティーなので、外部の人の目線を考えることが、刺激になります。自分たちの集まりの強み、参加したきっかけなど、原点を見つめることになると感じました。

 イベントを運営するということで、書籍を何度も読み返しました。良く言われますが、自分の中で分かることと、人に伝えることは、理解度が異なります。理解したことは、地域での実践につながります。このように、イベントを通じて、読書の質を高めることは良い取り組みだと感じました。

5.半歩ずつでも、前に進みたい

 今回、多くの気付きがあった読書会。で、それぞれ、学んだことを踏まえて、どうするの?ということになるのですが、2つのパターンに分けて、考えてみました。

①自分でガツガツがんばる

→ こういった方は、おそらく幻想にもとらわれることなく、行動し、実績を残していくことと思います。

②誰かと一緒に刺激し合ってがんばる

→ 一人だけではプロジェクトを進めることは難しい、という方がほとんどだと思います。時に刺激を受けたり、情報交換をしながらでも、半歩ずつでも現実を見て前に進みたいという方が今回多数参加してくださいました。そんな方で力を合わせて、地域の産業が元気に、暮らす人が豊かになる方法を一緒に考えて、実践しているのが、LDLです。興味を持たれた方は、メンバーの記事をお読みいただければと思います。

Locally Driven LABsについて、詳細はこちらご確認ください↓


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