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大学教員・研究者になるには

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卒業研究・修論研究を経て研究者になろうと考えている方々向けの記事を集めていきます。大学教員・企業研究者など。
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#博士課程

コロナ禍での博士課程と研究者への道

僕は 2016年4月(当時31歳)に当時勤めていた会社を退職して、東京大学の数理科学研究科の修士課程に進学しました。その6年後の 2022年3月に 数理科学の博士号 を取得しました。 2022年4月から理化学研究所の基礎科学特別研究員として 数学の研究者 をやっています。 この記事では、コロナ禍と共にあった博士課程の後半2年間と、その後の駆け出しの研究者としての日々を振り返ります。 大学院への進学を考えている社会人 や 先々のキャリアについて考えている学生 にとって参考

【大学教員公募】選考を通過しない人の特徴

 最近、研究者間の対面での交流がようやく復活しつつあり、私と同世代(20代、30代前半)の若手と語り合う機会が増えてきました。結婚や子育てといった研究外の話からアカデミックな話まで、色々なことを話しますが、一番盛り上がるネタはやはり大学教員公募に関する話でしょうか。採用から1~3年ほどしか経っていない、あるいは公募戦線真っ最中の人がほとんどである若手ならではの話題だと思います。  話していれば、悲しいかな、選考を通過しポストを掴んだ人と、なかなか選考に通過しない人の差が見えて

【若手の方へ】研究者の道と恋愛

研究者の道を目指す・博士課程に進む人向けの記事を見ると、大方、「研究以外のものを捨てる覚悟を持て」的な脅し文句を見つける。 ・同級生が人並みの給料をもらって出世していく中、むしろお金を払う側の学生を続けていかなければならない ・結婚はあきらめた方が良い ・ポストは保証されていない ・孤独 等々。 間違いではない。が、個人的には、捨てて捨てて研究者を目指すよりも、欲しいもの全て手に入れて研究者になっていく人の方が心惹かれる。金の問題も改めて書こうと思うが、本記事では博士課程

【生々しい話】大学教員になれるか、なれないかー両者を比較ー

大学・研究業界の生々しい話、現実について綴ります。大学教員を目指して奮闘中の公募戦士にはなんとしても戦線を勝ち抜いていただきたく、研究者としての一歩を踏み出した院生の皆さんにはやがて直面する現実への備えをしていただきたく、研究者を志す学部生・中高生には覚悟を固めるために現実をお見せしたく、錯綜する気持ちを正直に本稿に込めます。自分の体験談と、身近にいた(いる)方のかなり生々しいお話しです。 モチベーションを是非上げていただきたく、今回は大学教員に「なれた」後の話から始めます

博士から助教へ 任期付き採用とテニュアトラック制度

大学教員は,博士課程を修了した学生の主要なキャリアだ。 大学教員になるための公募のプロセスについては既に多くの記事を見かけるが,助教として大学教員になってからのキャリアに関する記事はあまり見られなかったので,今回紹介する。 テニュアトラック制度自分もそうだったが,現在,若手研究者を採用する際には,多くの大学がテニュアトラック制度と呼ばれる任期付きの雇用形態を取っている。 テニュアトラックは,博士取得後10年以内の若手研究者を対象としたものであり,任期は5年間だ。 テニ

研究をしたい理由(2022年版)

今年も『研究をしたい理由』を書いてみたいと思う。三月ぐらいにそういえば書いていないなと思ったが、さらにそこから1ヶ月ぐらい経ってしまった。これが(おそらく)博士課程最後の『研究をしたい理由』シリーズである。 2019〜2021年の振り返り今博士課程の終わりにおいて、過去三年の『研究をしたい理由』を読むと、理由がないことにとらわれてあれこれ苦悩している過去の自分が見える。なんだかんだ科学論の話を持ち出して理由みたいなものを書いてみたり、最後の方は徐々に「そもそも理由などいるの

【学部生向け】研究者を目指す方へ

本記事は、研究者を志す主に大学1~4年生に向けたものです。人生の10歳ほど先輩からの小うるさいメッセージとしてお読み流しください。 私自身、研究者として身を立てようとぼんやり思ったのは大学4年生の頃、より現実的に考え出したのはM1の頃でした。今覚えば、大学1~3年ともったいない時間の使い方をしてしまったと後悔しています。 「研究者になりたい」という志を持つのは、早ければ早いほどいい。研究者は自身の専攻に特化したスペシャリストであると思われがちですが、浅く果てしなく幅広い知

学部・修士・博士における「研究」の違いから見た博士に進学する理由と注意点

あくまで個人の見解ですけど、落ちこぼれ博士だった私の中ではこんな感じ。 前置きまず、ざっくりだけど、情報系の研究は以下のような作業から成り立っている。実験系だと、装置の使い方なども入ってくると思うが、情報系で必要となるプログラミングは学部1〜2年で学んでいるのでスキップ。 知識獲得:文献調査を通じて、過去にどんな研究がなされていたのかを網羅的に調べる。特に最新の動向を把握していないと、最後に学術的価値のない研究だね、と言われてしまう確率が高くなる。 課題発見:1で広く文

研究者の登竜門、学振に関する知見を共有 採用編

今思えばよく通ったなぁ。借金地獄に落ちるところだった。 まぁ側から見れば、借金地獄の方が面白かったのかもしれないけど。 はじめにこんにちわ。ぴくむんです。 私は、 小さい頃から実生活で役に立たない学問ばかり教えられる。 「現代社会でダイレクトに役に立つ学問がない」 研究は、勉強の醍醐味であるのに大多数の人がやっていない。 「大多数の人は研究をする機会がない」 ことに対して疑問を覚えていました。そこで、 国なんてあてにせずに 自分の力で「実生活に直接役に立つ学問の確立」

修士で製薬企業の研究職を目指したけどダメだった話

こんにちは。私は薬学系研究科で生物系分野の研究をしている博士課程1年の居間口です。 この記事は、21年卒修士学生として製薬企業の研究職を目指して内定がもらえなかった私の、個人的な反省を書き出したメモとなっています。 端的に言えば、ただ怠惰な学生が順当に失敗しただけの話です。なので、就活や進路選択に悩む方の役に立てるかは分かりません。が、こんな人も居るんだな、という1例として参考になれば幸いです。 とりあえず就活前後の流れを紹介します。 B4:メンタルの強さからD進もいい

コラム#6. 博士号の取りやすさ(課程博士・ラボ選び)

 課程博士を無事に所定年数(修士課程を除いて通常3年)で終えられるかは、本人の能力もさることながら、学術論文必要数とラボのアクティビティーに大きく依存すると言えます。  規定年数を1年くらいなら超過してしまっても良いという方は、ざっと見積もっても400万円から1億円の損失を許容するという意味であることを理解してください。 ### 1年の損失の内訳・働くのが1年遅くなる(入るはずだった1年の年収が入らず、退職金が減る。)・希望職種に就職できる可能性が50%程度減少、生涯年収

論文博士のススメ#1. Introduction

 日本には、2種類の博士がいます。課程博士と論文博士です。2つの取得方法があるともいえます(厳密に言えば、もう1つ、功績を上げた人に授与される名誉博士というものもありますが、ここでは扱いません。)。「日本には」と書いたのは、欧米では課程博士が一般的であるからです。よって、日本は少し例外的であると言えます。  課程博士と論文博士も、名称を名乗る際には同じ博士であることに変わりはありませんが、それぞれメリットとデメリットがあります。  このNoteでは、その知られざるメリット

論文博士のススメ#2_生涯収入と研究者としての持続性について

 論文博士のススメ#1. Introductionでは、博士には課程博士と論文博士の2種類あり、その難易度や取得必要年数、その他の重要なポイントにて比較を行いました。#2では、課程博士と論文博士の生涯収入についてシミュレーションし(グラフに図化しています)、研究の持続性について触れます。シミュレートした条件は以下の4条件です。今後、アカデミアへ就職したケースも比較していきたいと思いますが、今回は企業に就職したケースを比較します。 累積収入(~30歳まで) 恐らく生涯年収は

有料
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(就活)研究職を目指す学生へ

 お越しいただきありがとうございます。カルフです。地方 of 地方の国立大学博士課程を修了し、現在は化学メーカーで研究をしています。例年通り、11月から大手化学メーカーの博士枠の採用が始まりましたね。D2の方は早めに動き出しましょう(私は2月末から動き始め、博士枠の採用が終わっていたので、かなり焦りました(笑))。入社して半年以上が経ち、企業での研究にも少し慣れてきました。それに伴って就活をしていた頃に抱いていた企業研究者像と実際のそれとのギャップがくっきりとしてきたところで