二十歳のねこ、うにちゃん。
私はねこが大好きだ。
自由で、気ままで、それでいて甘えたいときに甘えてくる。まるくなって眠る姿も、にゅーーっと思いきり伸びをするのも、獲物をギラギラした目で追いかけるのも、ぜんぶがかわいい。
私の実家に、うにちゃんという黒ねこがいる。
私が中学生の頃に家のベランダにやってきた子で、そのままうちで迎えることになった。初めて飼うねこだった。
まだ、両手に乗るぐらいの子ねこだったとき、私の腕をつたって背中へいき、反対の腕をつたってぴょんとジャンプをしたことがある。軽やかに私の体を走り抜けるうにちゃん。ジブリのファンだった私は「魔女の宅急便のジジみたい!!」と大興奮したことを、今でもはっきりと覚えている。
飼い猫になっても外に自由に出ていたころは、すずめをくわえてそれを見せにきたり、毛虫にちょっかいを出して口を腫らして帰ってきたり。ねずみのおもちゃを動かすと、ひげが全部前に向いて、夢中で追いかけてきたりとものすごくやんちゃ。でも、ものすご〜く怖がりな一面もあり、玄関のチャイムが鳴ると、猛ダッシュで誰もいない部屋へと逃げていく。それもまた、かわいかった。
うにちゃんは、家族の中でもなぜか私によくなついてくれて、寝るときは私のロフト式ベットの上まで、はしごや出窓をつたって登ってきてくれた。
ベットの上でまるくなったうにちゃんを撫でると、いつもゴロゴロと大きくのどを鳴らす。眠る前、そのうれしそうな音を聞くのは、私の幸せでもあった。
でも、結婚して家を出ることになり、10年一緒だったうにちゃんともお別れすることになった。
⁑
そして、結婚してまもなく10年。
うにちゃんはいまも健在で、20歳になった。
ねこの20歳は、人間でいう96歳!ぐらいらしく、もうずいぶんなおじいちゃんだ。
今年のお正月は、まだ段差を登って出窓にのぼったりしていたけれど、2月に入り、目が悪くなってきたせいか出窓や階段からずり落ちてしまうことが出てきた。
そして、まっすぐ歩けないときも出てきて、ぐるぐると時計回りに同じ場所をまわってしまうことも。
お正月から1ヶ月ぶりに実家に帰ったときのこと。うにちゃんに「おいで〜」と言ってもちゃんと反応せず、抱き上げてひざに乗せて撫でても、以前のようにゴロゴロと大きな音は出さない。あぁ、うにちゃんは、もう私の知ってるうにちゃんじゃないのかもしれない…と、すごく切なくなった。
でもその日、
まあるくなってソファですやすやと眠るうにちゃんの姿を見た。子ねこときや、元気いっぱいの頃と変わらない、まんまるになって眠るうにちゃん。
もう、ぴょんと軽やかにジャンプはできないし、チャイムが鳴ってもダッシュしない、私がおいでと呼んでも伝わらない…。
いろんなことが前とは変わってしまったけれど、こうして幸せそうにまるくなる姿はおんなじ。
うにちゃんは、今もこうして幸せな時間を過ごしている。
そんな風に感じられて、切ないけれどなんだかうれしい気持ちになった。
うにちゃん、残された時間はもう長くはないのかもしれないけれど、どうか穏やかに、幸せを感じ時間を過ごしてね。
また、会いに行きます。
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