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鏡のなかの言葉(定期購読)

映画監督松井久子が編集長となり、生き方、暮し、アート、映画、表現等について4人のプロが書くコラムと、映画づくり、ライティング、YOGA等のワークショップ、そして編集長がお勧めする…
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2020年10月の記事一覧

つくり手であること 10*柿

あんまり人に話したことはないのですが、柿に親近感があります。 今はなき藤沢の実家は「大きな柿の木がある家」という表現をされるほど立派な柿の木がありました。残念ながら渋柿の木だったんですけど、数年前に見知らぬ方の立派なお宅が建ってるのを見たとき、生家よりも柿の木が跡形もなく無くなったことの方に寂しさを覚えたほどです。 また、20年前に母が再婚して住んでいる新潟・佐渡は「おけさ柿」という通称で親しまれる平核無(ひらたねなし)柿が有名で、農家の義父は丁寧に渋抜きをして毎年大量に

つくり手であること 09*麹

少し前のことですが、生まれて初めて滋賀県の近江八幡に行きました。やや弾丸での取材依頼があったのです。ちょっと駆け足な取材ではあったものの、西日本への訪問経験が多くないので機会があれば喜んで行きます。 とはいえ時はコロナ禍。取材先も落ち着いた人生の先輩世代でしたし、あまり好き勝手に動きまわらない方が良さそうな世間の空気も察していました。ご依頼元に示された訪問スケジュールがタイトなのも、基本的にはコロナ禍のために日帰り指示だったからです。 でもなぁ、急ぐと疲れるのよねぇ、わた

自分史エッセイ 「粉骨」という儀式

私の父は2018年に84才、母はその9ヶ月後の2019年、85才で黄泉の国へ旅立ちました。生まれたのも死んだのも時期はほぼ一緒。 ともに自らの人生を並走してきた同志のような関係で、旅立ちまで仲のいい二人でした。 そんななか、私と妻は二人の遺骨を分骨して、自分の家に残すことに決めました。実家の仏壇とは別に、自分の家でも二人の証を残しておきたいと思ったからです。 しかしそれをどう保管するかが問題。 少しとはいえ骨そのものでは場所も取るし、自分で粉にするのもどうなのか…と迷って

稲木紫織のアート・コラムArts & Contemporary Vol.10

ジャズフォトグラファーの草分け 中平穂積さんの写真からは 熱いジャズが聴こえてくる                   KKAGから届いたDMのビル・エヴァンス この一枚の写真をDMで見て、いきなり心を鷲掴みされた。好きなジャズピアニス ト、ビル・エヴァンスだったからだけではない。彼の精神性や人生が、一瞬にして そこに立ち現れており、崇高さすら感じたからだった。この写真を撮影したのが、 中平穂積さん。日本のジャズフォトグラファーの第一人者である。 DMを送ってくださった

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オンライン・ショップセレクション ひなた農園05

だいぶ涼しくなってきました。我が家もやっと稲刈りが終わり、肩の荷が少し降りた感じです。今月はお米の話をしたいと思います。私たちの住む地域では主に3種類のお米が作られています。早く収穫できる順に「コシヒカリ」「アキサカリ」「恋の予感」。今年はこの9月に収穫期を迎える「アキサカリ」にウンカが大発生してしまいました。ウンカとは、体調5㎜ほどの稲の害虫です。 去年もウンカが大発生して西日本ではかなりの被害があったのですが、今年は去年どころではない数のウンカが発生しています。農協などに

稲木紫織のアート・コラムArts&Contemporary Vol.9

緑豊かなアール・デコ様式の東京都庭園美術館で 「生命の庭 8人の現代作家が見つけた小宇宙」展を 深呼吸しながら楽しむ 1933年に建設されたアール・デコ様式の旧朝香宮邸と美しい庭をそのままに、1983年、東京都庭園美術館としてオープンしたこの敷地内に、一歩足を踏み入れ ると、鬱蒼とした木立ちの合間に、当時の面影を残す建物が見えて来て、一瞬にして時空を超えた気分になってしまう。

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MomokaのYoga Lesson08

皆さん、こんにちは。 すっかり寒い季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 今回のビデオは、「太陽礼拝」に向けたヨガクラスです。 この太陽礼拝というのは、ヨガの起源であるインドで古くから継承されている代表的な動きの1つです。 ポーズとポーズを繋いでいきながら、1呼吸1動作で動いていくのが特徴で、現代でも多くのヨギーによって実践されています。 サンスクリット語で「スーリヤ(太陽)」「ナマスカーラ(あいさつ)」と言う名の通り、朝一番に太陽に挨拶をし、そのエネルギー

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思い出エッセイ02 絵と俳句と愛に生きたひと

死んだ後この世に何を遺したいかは、人それぞれであると思う。 私は、自分の写真、PCの中に書かれた文章、頂いた手紙類などの一切をできるだけ生きているうちに処分したいと思っているが、なかなかそれらを処分するタイミングが難しい。 最近、死んだらFacebookの投稿はどうなるのだろうか?と考えることがある。 自分の死後もFBのタイムラインに自分の投稿が残っていて、それらを読み続けられるのは嫌だ。命の終わりとともに、すべてを削除したい。 そう思って、最近Facebookの<追悼アカ

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思い出エッセイ01 H2との50年

地下鉄・東西線が開通したのは昭和39年。オリンピックの開催で東京の街が大きく変貌をとげているさなかのことだった。 翌年の春、私は念願だった早稲田大学の演劇科に合格して、毎朝、門前仲町駅から真新しい銀色の電車に乗って、わずか20分足らずで早稲田駅に着くようになった。その便利さを、まるで自分の入学を祝って貰っているかのように感じる、傲慢で手前勝手な娘だった頃だ。 地下鉄を降りて階段を上がると、目の前に「馬場下」の信号がある。 その交差点角の蕎麦屋の前を通って右手の道を行くと大学

Yumikoの映画玉手箱08 女子高校生は暗闇を目指す

私が高校に入学したのは1955年、昭和30年でした。 もう学校生徒の映画館出入りの規制はなく、自由に観に行ってよくなっていました。 日本映画の黄金時代 当時日本映画は1951年に黒澤明監督「羅生門」のヴェニス国際映画祭グランプリをはじめ溝口健二監督「西鶴一代女」、「雨月物語」、衣笠貞之助監督「地獄門」、黒澤明監督「七人の侍」、稲垣浩監督「無法松の一生」、小津安二郎監督「東京物語」などが、ヴェネチア、カンヌ、ロンドンなどの国際映画祭でグランプリや銀賞に輝き、まさに日本映画の黄

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稲木紫織のアート・コラムArts&Contemporary Vol.8

湯沢薫個展「The timeless wind blows in my mind」  開催中の森岡書店にて美しい風の中に佇む 美術家・湯沢薫さんの美術家としての活動21年目を記念する展覧会が、銀座の森岡書店にて始まった。今展は、サンフランシスコ・アート・インスティチュートで学んで以降、国内外の展覧会に参加し、写真、立体、絵画、音楽など、様々な手法で制作活動を続けてきた彼女にとっての「原点回帰」がテーマとなっている。

自分史エッセイ 「カルマと向き合うこと」

みなさんこんにちは。 先日佐渡ヶ島の稲刈りから帰り、また普段どおりの日常が戻ってきました。 そんな今日、私にとって大きなニュースが飛び込んできました。 それは2011年3月11日に発生した福島原発事故の訴訟で、ふるさとを奪われた原告団に、仙台高裁が国と東電の責任を認め、10億円あまりの賠償金を払うことにしたというニュースです。 なぜ私がこのニュースを取り上げたかというと、これは私のカルマ=宿命、そして自分史と大きく関連しているからなのです。 私の自分史は9年前の3月11日を